東京夢幻図絵―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)

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著者 : 都筑道夫
  • 扶桑社 (2008年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594057992

東京夢幻図絵―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 古本で購入。

    戦前・戦中の、主に東京で起きた事件について戦後に関係者が作家相手に語るという、独白体の「犯罪小説ふうの情話」短篇集。
    玉ノ井バラバラ殺人事件や上野動物園クロヒョウ脱走事件、東京大空襲など、実在の事件も題材になっている。

    作者が育った文京区関口の辺りを中心にした、文京区西部・新宿区東部が主な舞台。
    そこに描かれる「東京」はむせかえるほどの猥雑さに満ちた「異世界」だ。
    くりかえし描かれる縁日のギラギラとしたあやしい輝きは、今では見られない、失われた光景になった。

    戦争が大きな影を落とす時代の出来事が語られるものの、語り手の話しぶりに「時代の暗さ」は感じられない。
    それはそのまま作者のもつ戦前観・戦中観につながっているように思える。
    軍靴の音高まる中でも、人々は映画も見れば娯楽施設にも足を運んだのであって、ひたすらに耐え忍んだわけではない。あまり語られないこの時代の“明るい”側面というのは、知ると結構おもしろい。

    都筑道夫はあとがきの中で、これらの作品群の狙いを「ノスタルジア」と「風俗記録」だと言う。写真だけではわからない生活風俗を言葉で説明しようとする都筑の想いが綴られている。
    少し長いが、なかなか印象ぶかいので引用しておきたい。

    「庶民の歴史の上で、どんな些細なことでも―たとえ夜店で売っていたくだらない玩具のことでも、わからなくなっていい、というものはないはずだから」
    「過去をなおざりにすることは、同時に未来をなおざりにすることだ、と私は思う。わずか五、六十年前に出た文芸作品に、注釈が必要だなどという国が、ほかにあるだろうか」

    それぞれの短篇は、作中の年代順で収録されている。
    都筑にとってのノスタルジアで満ちた東京は、最後の短篇「東京五月大空襲」に描かれる空襲によって消滅してしまった。
    その後に“生まれた”東京は、都筑道夫の目にはどう映っただろう。戦後の東京を舞台にした作品も読んでみたい。

  •  『九段の母』が読みたくて。なにで知ったかは忘れてしまいました。多分、2ちゃんねるのまとめサイトの、後味の悪い作品とは、とか、オススメの小説家は、とか、そういったもので見つけた可能性が高いです。
     主人公は、いわゆる、名探偵コナンのような、なにか事件事故が起きたらそこに顔を突っ込んで少しヒントを与えたり考えたりする人で、なぜこの事件はこのようにして起こったのか?ということを解決していく物語です。
     短編集なので、それほど気兼ねなく読め、文章だって、長ったらしかったりぶつ切りだったりせず、肩肘張らずに読み進めていけます。

  • 謎と昭和初期の風景が数多く描かれた、男女のあれやこれやが毎回のように出てくる「情話」集。

  • 赤線が残り、夜店にガラスの知恵の輪やツェッペリン焼きが並び、近所にはお妾さんが住んでいて、靖国神社には見世物小屋が並び、玉ノ井ではバラバラ殺人事件があり、上野動物園の黒豹が逃げ、白木屋の火災がきっかけで女性がズローズを履くようになったころの東京を舞台にした艶っぽい話の連作。
    久しぶりに生の「小説」を読んだ充実感を味わえた。和装姿の女性のなんとも色っぽいことといったらもう・・・。
    時代小説からSFまで多岐にわたった器用な作家である都筑道夫。多作過ぎるためか、「大衆小説」っぽくてある意味、マニア受けしにくい作家(絶対「千夜千冊」に入らない!)だったが、最近、再評価されているらしい。物語の復権?
    小説を読むことが、趣味ではなく娯楽の1ジャンルであった時代がありました。

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