行間力

著者 :
  • 扶桑社
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594060534

感想・レビュー・書評

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  • 日本人の美徳とされる「行間を読む」能力。
    最近では、日本語力の低下と共にこれができなくなっているという嘆き節をよく聞きます。
    確かに、欧米風のハッキリした「YES/NO」スタイルがビジネスの効率化には最適ですが、行間を読むことなくして、日本で心豊かな生活は送れないのも事実。

    目に見えない行間について、どのように書かれているのかと興味が湧きました。
    著者は国語作文教育研究所所長。まさに行間を語るにふさわしい人物です。

    「KY」(空気読めない)という言葉が出てきた頃から、行間力が低下してきたという著者。
    「間合いを測る」「行間を読む」とは正反対の意味合いになるためです。

    "「間」を読む文化がなくなったため、文字通り「間抜け」になってしまった。"という表現にくすりとしましたが、間抜けとは本当にそういった由来をもつものだとしたら、笑いごとではない事態かもしれません。

    剣道などで「間合いを詰める」と言いますが、間合いとは、刀を抜いても切っ先が届かぬ距離のことをいうと知りました。
    剣の勝負時において、目測で距離を見定める能力がないと、確実に相手にやられてしまうことから、間合いを測ることは生存能力にもつながります。
    言葉は不確定なものであり、全て事象を言葉に頼ることの怖さも、伝わってきます。

    逆にこれまでの歴史の中で、本当に言いたいことがいえた時代などほとんどなかったという著者の意見にはっとしました。
    言えないことを言うために、人は行間に真実を隠してきたもの。
    それを読む側も、言葉に直さず察するということで、なんとか潰されることなく伝えられてきたことも多いのでしょう。

    全て「可視化」できる世界は、確かにわかりやすくはありますが、「マニュアル化」は平面化につながり、「指示された通りにすればいい」「みんなと同じことをすればいい」という意識が強くなって、結果的には個人の思考力を低下させる原因になっているというのは、この国の未来にとっておそろしいことだと感じます。
    行間力を高めるための具体的な方策については明示されていませんが、人と交流し、文書に触れることで、培われるものだという著者の意見が"行間から"伝わってきました。

    人間関係では「間合い」をはかり、文学作品では「行間」を読みこむ、上品な日本の「察し」の文化を廃れさせたくはないもの。
    まずは自分の行間力を高めていきたいと思います。

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著者プロフィール

1954年 長野に生まれる。表現教育者・国語作文教育研究所所長。34年間にわたり作文・表現教育を実践。200万人を越す指導・分析を土台に、言語・表現をフィルターとした人間社会の骨格還元読解や根底洞察に向かう。大学の教授・副学長・政府関係委員など歴任。元NHKテレビラジオのコラムを担当の後、テレビキャスターを経て、評論家・寓話作家としても知られている。著作は、『壊れる子どもの事件簿』『北風は太陽に負けない』(角川書店)『「戦略」としての教育』(山手書房新社)『親のぶんまで愛してやる』(サンマーク出版)『10分作文らくらくプリント』(小学館)など100冊を超え、海外でも翻訳されている。
なお、国語作文教育研究所では、小1から中高大生、一般までを対象に、文章教室を開催。通常クラスのほか、春夏冬の集中講義、通信講座、出張講座も。

「2007年 『教育3.0 誰が教育を再生するのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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