珍獣の医学

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594063375

作品紹介・あらすじ

獣医は医療か、ビジネスか。現役獣医師が多様化するペット医療の知られざる現場を描く。

感想・レビュー・書評

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  • エキゾチックアニマルを積極的に治療する獣医師による診療記。
    体長2cmのカエルの開腹手術とか金網から離れないアリクイとか、ちょっと奇抜な例を集めすぎじゃない?と思うくらい奇想天外な患者たち。
    野生動物を飼育することの是非やステロイドの功罪など、短く素朴な記述の中に考えさせられるトピックが多くある。
    不覚にも涙してしまったのは、長年連れ添った伴侶動物を看病しその死を受け止めようとする飼い主の姿。
    一方で、かければ確実に治癒に向かうお金や手間をかけることを渋る飼い主や、安易に安楽死を依頼する輩もいる。
    実の子にも勝る無二の愛情の対象とも飽きたら捨てることのできる所有物ともなり、また屠殺されることを前提に生まれてくる家畜ともなる動物たち。この本には、この矛盾についてのひとつの見解も提示されている。

  • 動物好きの私にはとても楽しく読めた。
    専門的すぎずおもしろく一般の人向けに書いてある。

    勉強になった。ペットを飼う資格私にはなさそうだ~

  • エキゾチックペットも診る獣医師の日々の奮闘がわかる本。症例や治療について、もちろん医学書ではないが、素人に読ませるには充分なほど細かく描写されている。また、患蓄や飼い主との間で獣医師が抱えるジレンマや、職業としてみた場合の獣医師の収入などについても、割と言葉を選ばずに書かれている。獣医師の友達ができたら、酒を酌み交わしながらこんな話を聞かせてくれるんだろうな、という気分になれる一冊である。

  • 大変、大変、大変という印象
    3年目の獣医さんが年収300万円
    ※2010年の本
    6年間大学で学び国家資格を取ってこの金額
    そりゃ臨床に進む人は減るだろう
    爬虫類の患畜の9割は亀
    骨折、断踋したほうが良いことも
    畜産と犬猫以外はエキゾチック
    料金踏み倒す飼い主もいれば
    亀が死んだら喪服で引取りに来る人も

  • 良本。学びがあった。

  • タイトルから固いイメージを受けるが、とても読み易い。少なくとも都心部では、そこいら中に見掛ける獣医医院だが、はて?そもそも何が謎なのやら?
    という所から、結構分からない事だらけだったりする。「珍獣」のペット視点での定義、人間の医療との違いや共通点、様々な例、獣医の気持ち、患畜と飼い主の様々さ・ビックリ実例、獣医さんの経済面…。筆者の姿勢が強く描かれていて好ましい。

  • 知らなかった世界。命は重い。自然は。。。

  • 動物
    ビジネス

  • 日本の動物病院のほとんどは、犬と猫を中心に診療していて、それ以外の動物(珍獣)を診てくれる病院はそう多くありません。
    獣医師の田向さんは、哺乳類から爬虫類まで、他の動物病院で断られるような動物も診察する珍獣ドクターです。レンコンを食べ過ぎた犬や甲羅が割れたカメなど実際の症例から、ペット医療の知られざる現場を伝えます。

  • 貧血のトカゲに輸血、体長2㎝のアマガエルを開腹手術、ヘビの大腸ガン摘出など、ペットとして飼育される動物は、犬や猫だけでなく、ウサギ、モルモットをはじめ、カメレオンやカメ、カエル、プレーリードッグ、サル、珍しいものではアリクイなど、さまざまな種類に及ぶ。そして、最新のペット医療では、血液検査はもちろん、CTやMRIなど人間に行うのとほとんど同じ検査や治療を動物も受けることができる。しかし、いわゆる「動物病院」は、その大多数が犬と猫を中心に診療しており、野生動物やエキゾチックペットと呼ばれるこのような変わったペットが病気になったとき、診療してくれる動物病院は少ない。
     田園調布動物病院の院長、田向健一先生は、自らが変わった動物が好きだということもあり、哺乳類から爬虫類、無脊椎動物まで、ほとんどすべてのペットの診察を行っている。「具合が悪いアリクイ」や「元気がないタランチュラ」など、初めて診察する動物が来たときに、いったいどのように診断し、治療を行うのだろうか。悪性腫瘍ができてしまったハツカネズミから、ビー玉を飲み込んだカエル、ハリネズミの爪切りなど、「珍獣」診療の、驚愕かつユーモアたっぷりな最新現場を除くことができ、命を飼うということを考えさせられた。
     この本は、主にエキゾチックアニマルや野生動物を飼うことの是非について書かれている。そもそも人は、どうして、生き物を飼うのだろう?私も以前、もとは野生動物であった、エキゾチックアニマルに分類されるシマリスを飼っていた。ペットショップで一目ぼれだった。だが、ハムスターとかウサギとかは飼っている友達はいたが、シマリスを飼っていた友達はいない。何を食べるのか、ちゃんと最後まで育てられるのか、そもそも自分に育てられるのか、飼いはじめた後に不安になった。そんなとき、手をさしのべてくれたのが獣医さんであった。動物をちゃんと、一つの命として見るということ、特殊な動物を飼う場合にはリスクがあるということを親身になって教えてくれた。その時の経験と、この本を読んでみて、改めて、当たり前だけれど、動物は物ではないし、自分が思っていることを動物が思っているわけでもない。かわいがって、愛情を注ぐというのはすごく重要で、愛情に勝るものはないが、生き物としてちゃんと見ることが、動物を飼うことの最低限の心構えだと思った。
     野生動物を飼うことに、考え方は2つあって、人間は地球の中でどういう位置づけなのかという話になる。生態系のピラミッドの中の一つと考えるか、人間は超越した存在で、自然の生態系になんか属してないと考えるか。野生動物を大切にしよう!保護しよう!と皆は言うが、保護するにもしないにも、これはあくまで人間サイドの思いに過ぎず、もし動物たちに感情があるのなら、「今さらなにを…」という気持ちに違いない。
     この本の中で田向先生は、「ペットを飼うのは人間の業にほかならない」と言っている。そう、言葉はよくないけれど、「愛でる」も「消費」の一形態。自分の気持ちや日常の隙間を埋めるため、生き物を迎えたことには代わりない。暮らし方、生活の中でのプライオリティ、病気になったときにどこまで治療をするか、野生動物で言うならば、どこまで守ってあげるのか。選択するのはすべてその動物に関わっている人間である。まじめに考えると、生き物を飼育したがりな自分が嫌いになりそうである。
     そんな悶々とした気持ちを抱えつつ『珍獣の医学』を読めたことはとても幸せだと思う。なぜ飼うのか、なぜ人間の感情や常識を投影してしまうのか。動物に対して、「可愛い」「可哀想」の線引きがすごく曖昧な自分に気づく。そして、命を飼うということに、私も田向先生も自問自答し続けていくのだと思う。

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著者プロフィール

麻布大学獣医学部卒業。田園調布動物病院院長。
獣医学博士。
犬猫から小動物、爬虫類まで診療対象としており、
特にチンチラやウサギなどの小動物の診療に詳しい。
獣医師向けの書籍、一般向けの飼育書など多数執筆。
メディアにも多数出演。

「2023年 『チンチラ 飼育バイブル 長く元気に暮らす50のポイント 新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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