彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力

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著者 : 荻上チキ
  • 扶桑社 (2012年11月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594067342

彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力の感想・レビュー・書評

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  • 宮台真司なんかが盛り上げてしまった「性的自己決定」vs「女性に対する暴力」論からここ20年、売春に関する議論は、ひどく不毛な状況が続いてきた。「被害者」への同情論か、フェミニズムをまったく理解してない風俗ライターばっかりの中で、実態調査にもとづいて現実的提言をおこなう、たいへんにまっとうな本。はっきりいって、自分の業績のために体裁をととのえ適当な分析を披露してみせるそこらの学者の本よりは、よっぽど役に立ちます。
     出会い喫茶やテレクラを利用する100人以上の「ワリキリ」女性とのインタビュー調査からうかびあがってくるのは、貧困、精神疾患、暴力被害、自己尊重感や安定感の欠如・・・正直、読んでいて辛くなることもあった。
     しかし著者は、売春を彼女たちの「心の問題」や社会の病理に還元したり、救済されるべき被害者扱いすることを慎重に避け、かわりに、いわゆるまっとうな社会の側が彼女たちを排斥する要因と、売春の世界が彼女たちをひきこむ要因とを注意深くとりだし、かつ、そうした個々の要因のくみあわせのなかで選択をおこなう女性たちの主体性を決して軽視しない。
     売春という「社会問題」に大ナタをふるうのでなく、「n個の排除の数だけ、n個の包摂を。買春男に彼女たちを抱かせることをやめさせたいなら、社会で彼女たちを抱きしめてやれ」という提言は、まったく、ほんとに、まっとうだ。売買春を一発で解決する魔法の弾丸なんか存在しない。ていねいに、自分たちの問題としてかんがえていくしかないのだ。

  • 昔、好きだった人が簡単に自分の身体を売っていることを知って、
    その時は全く彼女の考えというものが理解できなかった。

    その人とはそれ以来疎遠になって、
    今では連絡を取り合うこともないけれど、
    未だに頭の片隅にこびり付いて離れない記憶を少しでも整理できればと思い、

    彼女のことを理解しようと思ってこの本を手に取りました。

    売春を取り巻く現状は様々だけど、
    貧困からしょうがなくという例を見る度に
    他人事とは思えず、
    何か自分の身近に起こっていることとして認識できない、
    あくまでこれは日本の何処かにいる女性の話であり、これから自分が生きていく上では出会うことや関わる事はないだろうと、
    半ば強引に目を背けました。

    今まで僕らが教わってきた道徳という絵空事のせいで、
    こんな現実も直視できない自分が不安です、、

    なんだか上手く言葉にできませんが、
    売春を知る入り口には最適だと思います。

  • 【目次】
    プロローグ 006

    1章 社会的な引力・斥力――風俗・ワリキリ・精神疾患 017
    出会い喫茶の光景 
    *まいの場合 
    *チカの場合 
    *ミイの場合 
    *ミキの場合 
    社会的な斥力 
    夜職からワリキリへ 

    2章 排除の果て、アウトサイドの包摂――虐待・ホスト・ドメスティックバイオレンス 053
    彼女たちの居場所 
    *ユズの場合 
    *ユキの場合 
    *ミアの場合 
    ただひとつの出口 
    アウトサイドの包摂 
    *もえの場合 
    売春という「自立」手段 
    *ミズキの場合 
    隣り合わせのリスク 

    3章 貧困型売春と格差型売春と――学歴、貧困、ハウジングプア 091
    疎外の連鎖、不幸の世襲 
    格差型売春 
    *ミカの場合 
    *リカの場合 
    グラデーションの狭間で 
    *クミの場合 
    *アイの場合 
    *ミサの場合 
    *マキの場合 
    *ミナの場合 
    *リナの場合 
    未来からの斥力 

    4章 母親としての重圧――離婚、中絶、シングルマザー 135
    寝かしつけた子どもの隣で 
    *リオの場合 
    離別した父親の事情
    *ユウの場合 
    *ナツキの場合 
    消極的自己肯定
    *リオの決意 

    5章 全国ワリキリ事情――車、パチンコ、買春旅行 165
    地方に生きる彼女たち 
    地域差――価格・ハメ撮り・生 
    *マキの場合 
    ワリキリ女性たちの移動手段 
    *マリンの場合 
    *ミカンの場合 
    その土地のもつ“磁力”のなかで 

    6章 3・11――地震、津波、原発事故 201
    あの日の出来事 
    「ワリキリ」のインフラへの打撃 
    変わらない質・変わった客層 
    「生きづらさ」への追いうち 
    原発事故と彼女たち 

    7章 ナナとの出会い――日記、メール、妊娠報告 233
    第一印象「得意でないタイプ」 
    優秀なアシスタントの誕生 
    「買う男性」のデータ 
    ナナの日記 
    ナナの「卒業」、そして 

    8章 買う側の論理――喫茶、サイト、利用データ 267
    男性ルームにて 
    出会い喫茶とはどういう場所か 
    出会い喫茶のシステム 
    出会い喫茶のレパートリー 
    出会い喫茶の経営努力 
    出会い系サイトの利用傾向 

    9章 出会い喫茶のルーツ――自己決定、自己責任、自由市場 297
    大阪「ツーバなんば店」を訪れる 
    捨て子、アングラ、ホームレス 
    「かわいそうな子に居場所を」 
    発案者の“魂” 
    「今よりマシ」になるために 

    エピローグ [314-322]
    「ワリキリ白書」 [323-333]

  • 「買春男に彼女たちを抱かせることをやめたいなら、
     社会で彼女たちを抱きしめてやれ」

    この言葉、震えましたね。

    近年、繁華街で見かけるようになった”出会い系喫茶”で行われている売買春行為。そこに集まる女性たちを、いい意味で淡々と追ったフィールドルポですが、荻上さんらしいバランス感覚がこの種の重い社会的問題に触れるための間口を広げてくれている印象。

    教育、社会、家族、経済構造、そして自分自身の尊厳。
    さまざまなものから排除されてきた女性たちが、最終的に金銭を求めて「アウトサイドの包摂」に頼らざるを得ない構図というのは、当然昔からあるんだろうけど、それではやはり苦しいわけで。

    この種の若い女の子たちの売春行為って、80年代以降はかなりポップに扱われることが多かったわけですけど、やっぱりリアルは違うだろうということ。勉強になりました。

  • 2012年刊。出会い系サイトから判明するデータの分析から出発し、同サイトや出会い系喫茶に集う女性に試みたインタビューを交え実情を検証。貧困、格差、社会的セーフティーネットの不在、シングルマザー、DV、児童虐待とその世代間連鎖、そしてその複合が背景にある点は、AV女優、古典的風俗系と同様か。ただ、一部に存在する、非貧困かつ格差・落差型成り上がり系女性が異質かも。自由が効く分、きちんとした自己管理が必要だから、そのような成り上がり系女性の受け皿となっているというが、自由は堕落と紙一重かも、との疑問もある。
    他方、類書には珍しく男性側の意向もわずかだが言及。また、出会い系喫茶の創発者の意思にも言及している。売春する側のリサーチは興味本位のものも含め、それなりに出ているが、買春側のそれは皆無に等しい。もう買春側のリサーチ・統計データも必要な時期に来ていると思われる。性衝動が抑制できないといったステレオタイプ的要因が、その一つだけで現状が生じているというような単純な発想では、問題の縮減・消滅には到らないだろう。

  • 荻上氏の取材力に感服

  • 著者自らが、出会い喫茶や出会い系サイトを通して、100人を超える"ワリキリ”女性への取材を基に構成されている。個人売春の実態を「統計的」と言える量まで収集・分析した筆者の取材力が凄い。しかも個々人の人格まで類推できる形で。

    本調査から浮かび上がってきたものは貧困や虐待、孤独といった世代間・個人内での”負の連鎖”だ。売春という金銭獲得手段が目的になり目的が必然になり、自分を傷つけていくスパイラルからますます抜け出せなくなってしまっている。

    「ワリキリ」とは買う側の視点であり、彼女たち側の視点では「アキラメ」や「オリアイ」と言ったほうが正しいかもしれない。インタビューで何人かが語るホストクラブに通う理由が、ホストのためではなくそこに居場所があるから、という発言は何とも物悲しく彼女たちの精神状態を端的に表しているように感じる。

    ”ワリキリ”は慢性的貧困や親の虐待など根深い社会問題を多分に含んでおり、解決まで一筋縄ではいかない問題ではあるが、本書はまず実態を知るうえでの道しるべとなりえよう。

  • ワリキリと呼ばれる売春を行う女性たちを追ったルポタージュ。知らなかった世界にいる女性たちの人生の生々しさに圧倒させられる。社会から排斥されてきてしまった女性たちに、残された選択はそう多くはなかった。

    でも今回のインタビューに答えられた人は、まだワリキリの最中で、どん底まで落ちている人たちではないのではないか。年齢がいって、もしくは精神的にやられて、もしくは病気になって、ワリキリさえできなくなった女性たちは案外と多いのではないか。今後はそういった女性たちもぜひとも追ってほしい。

    ただ、ワリキリをしている若い女性たちの問題を丁寧に浮き彫りにした素晴らしいルポだと思う。

  • これを読んでどうすればいいんだろう.自分の無力を感じる.

  • 売春が「フツー」になってきた現状に驚く。。
    そんだけ病んだ人間も多いってことっすね・・・。
    ( 一一)

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彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力の作品紹介

100人を超える"彼女たち"へのインタビューから浮き彫りになる、なかったことにされてきた不幸。

彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力のKindle版

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