第三の銃弾 (上) (扶桑社ミステリー)

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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594069544

感想・レビュー・書評

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  • JFKの暗殺を背景にしたストーリーだが、ハンターの名作、極大射程の続編だった。偶然に極大射程だけはつい最近読んでいたので、入りやすかった。銃に関連することから、暗殺に新たな解釈を加えている。そして最後は暗殺だけではないストーリー付きで、よく考えられている話。

  •  今になってJFK? ダラスの熱い一日の事件を今になって、さらに新たに新解釈で小説化できるものだろうか?

     そんな疑問で本書を首を捻りながら手に取る読者は多いだろう。そうした懐疑的な多くの視線を切り裂いて、スナイパー小説の第一人者である巨匠スティーブン・ハンターが、アメリカ最大の事件に対し真っ向ストレート勝負を試みた。

     その志もあっぱれだが、その切り口もこんなにも鮮やかだとは、誰に予想できたろうか。ここのところ、失礼ながら鳴かず飛ばずのボブ・リー・スワガー・シリーズで、スナイパー小説の王道から逸れたような作品を書いていたこの作家が、こんなにも原点に立ち戻って、しかもあの傑作『極大射程』の続編という形でメインストリートもど真ん中に戻ってきた快挙の一作を作り出してくれたのである。かつてのハンター・ファンが泣いて喜ぶ傑作、胸のすく快作に仕上がっている。これはことによるとハンターの代表作と呼べる新機軸となるかもしれない。

     ボブ・リー・スワガーも初老となったが、かつてのベトナムの特殊部隊兵士、銃撃のプロフェッショナルとしての勘は衰えることを知らない。今回は、まるでハンターの分身のような銃器アクション作家が、まるで『黄昏の狙撃手』そのままに車で轢き殺されるところから始まる。彼が調べていたのは、実はJFK事件の真相だった。彼の死を調査すべく依頼されたボブ・リーは、依頼以上に銃器のプロフェッショナルとしての観点から、ダラスのJFK暗殺事件の真相に多くの疑問を感じる。

     リー・ハーベイ・オズワルドの犯行説を最も疑問視させた魔法の銃弾の解析が、銃弾のブロの視点から見ると意外なものであり、オリバー・ストーンの映画とは全然別視点からハンターの作品は発射された弾丸の謎に迫る。第三の銃弾とは本作品のオリジナリティを高らかに掲げたロマンであり、タイトルである。

     その向こうに見え隠れする車椅子のスナイパー、極大射程の残党たち。そしてあのダラスではなく、現代の対決と復讐劇へと誘うプロットの見事さ。事実とフィクションによって糾われる縄のごとく、ボブ・リーの運命は、世界最大レベルの暗殺劇の中心軸へと下降してゆく。これは宿命の舞台劇でありながら、もはや歴史に対峙するプロフェッショナルたちの叙事詩そのものである。

     ここのところ隠れがちだった。そもそものハンター小説の文学性、高密度性が戻ってきた感がある。ハンターは『極大射程』の緊迫した空気を蘇らせてくれた。読後も興奮冷めやらぬ何やらほてりすら感じさせるハンター世界の新たなる地平が見えるかのようだ。しばしスワガーのサーガから足が遠のいていたかつてのファンたちに、改めて再集結を促したくなる傑作小説が、厳然とここに存在する。

  • 『ハバナの~』が今ひとつだったので歴史ものは期待していなかったのですが思いの外面白かったです。
    JFK暗殺の謎を追って殺害された作家の妻から真相を探って欲しいと依頼され、探るボブ・リーにも危険が迫り、今回はロシアまで調査に出向く内容。JFK暗殺の推理物かと思いきや『極大射程』の登場人物が登場し、アール・スワガーもので登場したフレンチー・ショートもちらりとですが名前が出てきたりして下巻が楽しみです。

  • 極大射程のボブリースワガーシリーズ最新刊。JFK暗殺の真相にせまるボブ•リー。シリーズの間は次回以降に。ちなみに20年あいてるそーです。楽しみです。2015/2 読了。

  • あの伝説のスナイパー、ボブ・リー・スワガーがJFK暗殺の謎に挑むという設定だけで胸が熱くなる。御年67歳と高齢ながらボブのアクションは健在で、銃器にこだわった謎解きも興味深い。さらには『極大射程』のアイツやアイツの影が見え隠れするときては……♪。〈下巻〉にも期待大

  • 凄い!のひと言!ボブ・リー・スワガー・シリーズの最高傑作。冒険小説、スナイパー・アクション、ミステリーの要素がふんだんに盛り込まれ、過去のシリーズを集大成したような素晴らしい作品に仕上がっている。どのくらい面白いかと言うと、横山秀夫の『64』よりも面白いと言ったら、分かり易いだろうか。久々に読むのが勿体無いと思った。

    『四十七人目の男』で、ついにボブ・リーも終わったかと思ったのだが、『黄昏の狙撃手』で復活し、『蘇るスナイパー』で文字通り完全に蘇った。その後、ボブ・リーは息子のレイ・クルーズに代を譲り、隠居するのかと思われたのだが…

    今回は66歳のボブ・リーがJFK暗殺の真相に迫るという興味深いストーリー。かつて『極大射程』で大統領暗殺犯の汚名を着せられたボブ・リーがスナイパーという視点でJFK暗殺事件の真相に迫るというのだから面白い。

    銃器やスナイパーに関する著作を書いている作家が車で轢き殺される。被害者の作家はJFK暗殺の真相の暴露本を執筆予定だった。被害者の妻に轢き逃げ事件の調査を依頼されたボブ・リー・スワガーは、事件の調査を進めるうちにJFK暗殺事件の真相に迫っていく…まさか、まさかの連続。扶桑社ミステリーが『極大射程』を復刊させた意味が理解出来た。

    蛇足であるが、自分は数年前にJFK暗殺事件の現場になったダラスのディーリー・プラザを訪ねた事がある。この作品にもテキサス教科書倉庫ビルの佇まいやホームレスが物乞いしたり、JFK暗殺事件に関する『陰謀の歴史』なるグロテスクな写真雑誌を売り付ける様子などが正確に描かれており、当時を思い出した。

著者プロフィール

Stephen Hunter
スティーヴン・ハンター

1946年ミズーリ州カンザスシティ生まれ。
68年ノースウェスタン大学卒業。
71年ボルティモア・サン紙に入社。
書評担当などを経て映画批評担当になる。
96年ワシントン・ポスト紙に転じ、
映画批評部門のチーフとなる。
2003年ピューリッツアー賞(批評部門)を受賞。

「2022年 『囚われのスナイパー(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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