ネット私刑(リンチ) (扶桑社新書)

著者 :
  • 扶桑社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594072926

感想・レビュー・書評

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  • うーん。
    「私刑、ひどいよね!やめたほうがよくない!?」
    みたいな内容で、現状認識に留まるというか、具体的な解決法とか、そういうのがなくて残念。
    ネット規制の法案がどうのとか、そこまで行ってほしかった。

    あと、ネトウヨが専門なのはわかるけど、ちょっとそっちに引き寄せすぎ。
    「ネット私刑」っていうくらいなら、たとえば小保方とか野々村とか、そういう人たちもいるはずなのに。
    筆者が「ネットにあまり興味が無い」と言っているように、ちょっと、視野が狭かったのかなと。

  • 2015年の川崎中1殺害事件、2011年の大津いじめ自殺事件など、実際の事件を取り上げ、ネットでどのような動きがあったのかを取材したものがまとめられていた。

    事件が起きた時、ネットの中では被害者の情報も、加害者の情報も晒される。きちんと裏取りがされないことで、無実の人が加害者として吊し上げられ、その人の人生が損なわれることもある。

    著者は、攻撃的な言葉を書き連ねる「ネット私刑」を、「低コストで、イージーで、手間のかからない暴力」だと言う。(p151)
    確かに書き込みによる攻撃は、「指殺人」とも言われるくらい手軽だし、ほとんどが、事件について検証もないまま書き込んでいるんだろう。センセーショナルな事件だと特に、理性より感情が優先されて、ネット私刑につながりやすい。

    最後の章で、ネットのデマで殺人犯にされたスマイリーキクチさんのインタビューが載っている。
    「『たかがネットの書き込み』という態度が、ネット私刑を助長している」という指摘はなるほどと思った。ネットでの発言は、現実での発言よりも軽いと思っているからこそ、無責任にひどい言葉を吐けるのか、と。
    また、事件が起きて、加害者家族の情報が晒されることで、その親は仕事に行けなくなって、土地は売れなくなって、結果的に賠償が難しくなるという話がされていた。加害者への制裁が被害者にも不利益を与えてしまうという悪循環。

    ネット私刑の実例に対して、それがどういう罪になるのかまで書かれていたら、もっと良かったと思う。そこだけがちょっと残念だった。

  • 「黙って放置すれば、やりたい放題で、反論すればさらに中傷が増える。これがネットにおける憎悪の回路である。まさに、いじめの構図そのものだ。」

  • ネットリンチの現状のレポ。運悪く誤爆されて、ありとあらゆる情報が晒されてしまった人には救いが全くないというのは恐ろしい。すごい昔は発言するのに必ず名前と所属を名乗ったものだけど、一見匿名社会は恐ろしい。ネットリンチは日本特有の現象なのかが気になる。誰か調べてくれないかな。

  • すごく冷静にまとめてくれているのだろうけど。
    リアルすぎて、嫌悪感とか気持ち悪さとか、吐き気がしてしまう。
    現実から目を背けてはいけないということもあるが、なかなか建設的には考えにくい。
    非常に難しい問題だ。

  • 最近、ニュースサイトのコメント欄がひどすぎるので、すっかり読まなくなりました。そこに書き込めるスペースがあって、身近な誰もが憤っている事件があれば、誰でもリンチの加害者になるこわさがよくわかります。
    被害者になりたくないことはもちろんですが、たまたまむしゃくしゃしたり、酔ってしまっていたり、身内の誰かがこんなことをしたら・・・と思うととても怖くなります。
    一方で、リンチに加わることに歯止めをかける仕組みや、やったことに対してきちんと罰を与えるルールを早く作ることも必要に感じました。

  • ネット私計の凄まじい現実が書かれてある。
    ただどうすればいいのか解決策は書かれてはなかった。これから私たちが考える課題なのか。

  • 借りたもの。
    ネット私刑――「さらし」と呼ばれる行為で、悪質な事件の首謀者等として何の関係もない人間が、事実無根の誹謗中傷に晒され、傷付いている様を追ったルポ。
    これを読んだ現時点で、まだ記憶に新しい事件の例を挙げている分、肌にひしひしと感じる人間の暗い感情。罪の意識のない悪意の連鎖。

    被害者の被害状況だけでなく、それを行った人々の事例も僅かながら紹介。
    そうした行動を取る人間は、総じて考えが狭い・固定されている。
    悪意があって攻撃する人の場合、犯人は「面白半分」であること、匿名性と手軽に行えることで「罪の意識が無い」ことを、著者は取材で強く感じている。
    更に「ネトウヨ」と呼ばれる人々に限らず一般の人々でさえ、義憤に駆られ憎悪を掻き立てられ行動してしまうことを指摘していた。
    「デマ情報」に踊らされ中傷した事を被害者から告訴されても、そうした人々は大抵「デマに踊らされた自分も被害者だ」と言うそうだ。

    被害にあった場合の具体的な解決策が明示されている訳ではない。
    ただ、これ以上被害を増やさないために、ネット私刑の加害者とならないために、記者としての著者が特に訴えたいこと、「感情にかられデマ情報に惑わされないこと」を強く感じた。
    特に「ニュースソース(真偽)をはっきりさせること」の重要性を意識させる。
    同時に、怒りや憎しみでそうした判断が鈍ってしまうという人間の性を肝に銘じておかなければならない。

  •  ネット上から実生活に直結する攻撃を不特定多数に受けるネット私刑。

     本の発売のすぐ前の川崎中学生殺人事件と大津いじめ事件などのネット私刑が書かれているのだが、その有り様は本当にひどい。全く無関係の人に間違って行われる膨大な嫌がらせ。もちろん加害者本人に対してだとしても許されるものではない。
    攻撃をする人は特異な人ではなく、鬱積を抱えた老若男女。逆に個人を特定されて訴えられることだって十分にある。
    私刑をすることは加害者になることなのだ。多くの人にその重みを感じてほしい。

    ネットを使う全ての人が必ず目を通すべき一冊。

  • 最近の実例が挙げられていて、突然巻き込まれる場合や自分自身が加害者となる場合を考えさせられる感じ。
    どこから巻き込まれるかは分からないし、拡散するという形で加害者になる(自覚はなくても)場合だってある。

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著者プロフィール

1964年生まれ。産湯は伊東温泉(静岡県)。週刊誌記者を経てノンフィクションライターに。『ネットと愛国』(講談社+α文庫)で講談社ノンフィクション賞、「ルポ 外国人『隷属』労働者」(月刊「G2」記事)で大宅壮一ノンフィクション賞雑誌部門受賞。『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)、『ヘイトスピーチ』(文春新書)、『学校では教えてくれない差別と排除の話』(皓星社) 、『「右翼」の戦後史』(講談社現代新書)、 『団地と移民』(KADOKAWA)、『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日文庫)他、著書多数。
取材の合間にひとっ風呂、が基本動作。お気に入りは炭酸泉。

「2021年 『戦争とバスタオル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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