- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784594073626
感想・レビュー・書評
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立川談春さん
学生時代、ぼくはずいぶん談志さんの落語やラジオを聴いていた。どんな問題があろうとも明るく前向きに語ることがとても気持ちが良かった。談志さんのラジオは、ぼくの応援歌だった。
お前に嫉妬とは何かを教えてやる
己が努力、行動を起こさずに対象となる人間の弱味を口であげつらって、自分のレベルまで下げる行為、これを嫉妬と云うんだ。一緒になって同意してくれる仲間がいれば更に自分は安定する。本来なら相手に並び、抜くための行動、生活を送ればそれで解決するんだ。しかし人間はなかなかそれができない。嫉妬している方が楽だからな。芸人なんぞそういう輩の固まりみたいなもんだ。だがそんなことで状況は何も変わらない。よく覚えとけ。現実は正解なんだ。時代が悪いの、世の中がおかしいと云ったところで仕方ない。現実は事実だ。そして現状を理解、分析してみろ。そこにはきっと、何故そうなったかという原因があるんだ。現状を認識して把握したら処理すりゃいいんだ。その行動を起こせない奴を俺の基準で馬鹿と云う
ぼくは、100万部の人間になるぞー
子供たちに愛を伝える小説を書くんだ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
きちんと落語を聞いたことがない。
当然、落語に関する知識なんてまったくない。
かろうじて2、3の落語の演目名を知っているだけだ。
落語の中身がどんな内容か、いったいどんな話なのか、聞けば何となくは思い出すだろうけれどほぼわからない。
落語をまったく知らないまま、果たしてこの本を楽しめるだろうか。
不安に思いながら読み始めた。
面白い!!
文句なく面白かった!!
結局、最後まで一気に読んでしまった。
立川談志に対してあまり良いイメージを持っていなかった。
たまに見かけた談志は、強い口調、切って捨てるように言い放つ暴言、いつでも相手を見下したような言い方、喧嘩腰の態度。
どれも苦手なものばかりで、談志が出演している番組はまともに見たことがない。
いつ亡くなったのかさえ知らない。
出演者の中に談志がいると違う番組に変えてしまっていたからだ。
この本を読んで思った。
もしも一度でも談志の落語を聞く機会があったとしたら・・・。
少しは違うイメージを持つことが出来たのかもしれない、と。
思わず笑ってしまう場面がある。
切なくてグッと胸にくる場面もある。
「赤めだか」と読むと、著者である談春が世渡り上手な人間ではないことがわかる。
それでも落語を愛する心が、師匠である談志への強く深い思いが、尊敬が、伝わってくる。
ドラマ化されると知って読んだ本だった。
けれど、読んで良かったと素直に思えた1冊となった。 -
談志師匠の優しさが書かれてとてもよかったです。
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立川流の濃さが談春視点で描かれている。エッセイではなく、小説の形で読みたかった。
でも、面白い。 -
お前に嫉妬とは何かを教えてやる。
己が努力、行動を起こさずに対象となる人間の弱味を口であげつらって、自分のレベルまで下げる行為、これを嫉妬と云うんです。 -
ジーンときた。
何箇所か涙を誘われた。 -
立川談春(1966年~)は、高校を中退して17歳で7代目(自称5代目)立川談志に入門、1988年に二ツ目、1997年に真打に昇進した、落語立川流所属の落語家。
本書は、文芸評論家の福田和也氏の勧めにより、季刊文芸誌「エンタクシー」に2005~07年に連載されたエッセイ「談春のセイシュン」を改題の上、2008年に出版されたもの(2015年文庫化)で、講談社エッセイ賞(2008年)を受賞した。また、2015年にはTBSテレビでドラマも放映された(談春役は二宮和也)。
私は、ノンフィクションやエッセイを好んで読み、今般、過去に評判になった本で未読のもの(各種のノンフィクション賞やエッセイ賞の受賞作を含む)を、新古書店でまとめて入手して読んでおり、本書はその中の一冊である。
本書は、著者が、高校を中退し、新聞配達所で働きながら、斡旋された下宿から家元(談志)宅に通う修業時代、築地の魚河岸に修業に出されたときの経験、兄弟弟子の談々(故・朝寝坊のらく)、関西(故・立川文都)、志らく等との付き合い、高田文夫との交流、二ツ目昇進試験とお披露目会、志らくとの昇進に関わる相克、人間国宝・桂米朝と柳家小さんの稽古、国立演芸場で開かれた「真打トライアル」の舞台裏等が、談志の様々なエピソードとともに綴られており、落語に特段の関心があるわけではなく、落語(家)の世界についての知識もなかった私にとっても、実に面白く、あっという間に読み切った。
その面白さの理由はいくつかあると思われるが、一つは、落語(家)の世界が、武道や茶道と似た所謂「道」の世界であり(この事実には少々驚いた)、そうした理不尽さをも持つ厳しい世界で著者が味わった苦悩や葛藤が赤裸々に描かれており、知らず知らずのうちに引き込まれてしまうのである。
そして、もう一つは、著者が過去を振り返り、当時の感情を率直に綴るとともに、連載執筆時には自らが40歳前後になり、談志の弟子に対する気持ちにも想像が及ぶ、重層的な記述になっていることだろう。
立川談春の半生記にして、(厳しい)落語家の世界を描いた、ときに笑い、ときに泣けるエッセイ集である。
(2022年12月了)