夫のちんぽが入らない(扶桑社単行本版)

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594075897

感想・レビュー・書評

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  • 読ませる文章だなぁと思った。猥雑な下ネタなのにどこか神々しくもあり、言葉変だけど意志のある下ネタというか、リアリティのある下ネタというか、むしろ下ネタなんだけど下ネタじゃない単語をVLOOKで充てたいというか。

    切実な問題だなぁと思う一方、もしも普通に入っててできないかったのなら、方法がたくさんある分、もっと苦しかったんだろうな。入らないことがある種逃げ道になっていたんじゃないかなと。

    奥さんが先生ってのは、確かに身につまされる話で、うちと同じ状況。何か不審に思われてたり、言われてたりするんだろうな。こども早く欲しいな。

    子作りを日本の将来のためとまで飛躍して、かつ神格化する人が周りに多いけど、それはこどもを持ってからもしくは妊娠、してからそう言うようになったんだろうし、それってずるくないか。ボランティアに偶然出会った人が、ボランティアしない人なんてちょっと人としてどうなのかって思っちゃうみたいな?そうなってからそうあるべきだって振る舞うのはずるい。

    まあおいといて、不遇な状況にもがき苦しむ中で、自分の人生の使命を見つける、人生の意味を見つけることで幸せになれる、最近読んだ本に書いてあったテーマに関連があってタイムリーだった。

    すっと読めるわりにはテーマ濃くてコスパ高いと思う。

  • (Amazonに書いたレビューの転記)
    一見共感を拒否するような簡潔な文体で、決して長くもない文書量なのに著者の20年の懊悩がきれいに収められている。
    パンチの効いたタイトルと手頃なサイズ感で手に取ると、すっきり飲み下しやすい文章を裏切るかのように腹に残る。でも読んだことを後悔しようと思わないのは著者が他者や環境へのマイナスの感情を文章に残していないからだろう。善良な生活者としての健やかさが清々しい。
    苦役列車(西村賢太)が芥川賞ならこの作品もなにか賞に引っかからないと嘘だと思う。

  •  読んでいると苦しくなってくる。呼吸を忘れるのか、緊張して呼吸が浅くなるのか、心理的よりも身体的に影響がある。
     これがフィクションであったならば、まだ、楽なのだけれども。ノンフィクションであるということ。そして、タイトルにもある夫には伏せられているということがなんともいえない。

     この著者の次の作品を読みたい。ノンフィクションであれフィクションであれ。

    • QAZさん
      まったく同じ感覚です。本当に胸が苦しくなりました。
      最後まで救いがないし・・・。
      まったく同じ感覚です。本当に胸が苦しくなりました。
      最後まで救いがないし・・・。
      2017/09/14
    • ちょさん
      こんばんは。
      本当に読んでいて苦しくなりましたね。
      でも、それでも人は生きられるのだな、とも思いました。救いが必要なのは物語であり、現実...
      こんばんは。
      本当に読んでいて苦しくなりましたね。
      でも、それでも人は生きられるのだな、とも思いました。救いが必要なのは物語であり、現実ではないのかもしれません。だからこそ、著者のこだまさんが次に何を書くのかが気になります。読者のエゴとしてそれを読みたい。
      2017/09/14
  •  衝撃的なタイトルに惹かれて、この本を手に取った。最初はちんぽが入らない様が様々な例えで表現されてて、普通に笑っていた。
     しかし、話は段々と重い話に展開されていく。特に思い知らされたのは妊娠しないこと、子を産まないことがこれだけ世間一般では普通ではなく、他の人の承認を得辛くて、そのせいで女性は生き辛い思いを味わわなくてはならない、ということ。
     その中で子供を産まない、産めない人は当然今までものすごく悩んできて、そこに納得して肯定しつつ生きていくことにどれだけの苦労を払わないといけないか、うかがわれた。人間の幸せがどれだけ環境にノレるかにかかってるのは不憫でならない。

  • 本屋でタイトルを見かけ、ずっと気になっていた本作品。
    オーディオブックにて購入、読了。
    作者による実話に基づくエッセイ。
    圧倒的な情報量、気持ちの動きを細かく伝えられる『本』という媒体を最大限に活かした作品だと感じた。

    かなり重たい話が続くので、気持ち的に途中で読み進めるのが辛くなった時期があった…
    ただ、読み終えたときの感動は凄かった。

    夫との夫婦生活だけではなく、教師としての仕事も全く上手くいかない作者。
    実際にその経験をした作者だからこそ分かるリアリティー、気持ちの変化が圧倒的に胸に突き刺さる。

    自分もシンドイ人生を送っていると感じていたが、その悩みなどたいしたことでは無いと教えられた気分になった。
    そう、みんな何かしらの苦しみ抱いて生きているのだ。

    最終的には、他人とは違う自分なりの生き方を見つける作者。
    人生は他人と違っても良いのだと、他人からどう見られるかは関係無いのだと、自分なりの幸せを追い求めることが人生なのだと、心からそう気付かせてくれる作品だった。

    よくある一般的な自己啓発本ではなし得ない、体験した者にしか書けない圧倒的な説得力がこの本にはある。
    自分の人生が苦しいと感じたとき、人生のバイブルとしてまたこの本を読みたいと思う。

    自分はオーディオブックでこの本を読んだので、まずはこの本を買うことから始めたいと思う(笑)

  • 最初は「タイトルで読者の幅を狭めているのでは?もったいない…」と思っていましたが、読み始めてすぐ、このタイトルでしかこの本は出し得なかったと思い直しました。
    ドライかつユーモアな筆致で書かれていますが、内容はかなり壮絶。
    何が幸せか決めつけたり、自分のシアワセ論を押し付けることがどれだけ残酷か。
    こだまさんがどれだけズタズタに傷ついて、折り合いをつけていったか。
    私小説の傑作です。

    ちなみに、私の周りでは「おとちん」と略しております。どうしてもタイトルを口に出すのが憚られる方は是非そのように呼んでみてください(笑)

  • 苦しい、本当に。わかるところもわからないところもあるけど、面白いとかそういう次元で語れない。セックスってどれだけ大事か、普通ってなんなのか、絆ってなにか、そういうのが色々。ふざけて語れない、生傷から出た滲出液のような私小説。

  • 夫のちんぽが入らない。

    インパクトがまずすごい。
    この題名を見ただけで、おそらくはこういう内容の話なのかな、と誰しも考えるが、その見当は少なからずあたっているが、はずれている。

    ひとりの女性が経験した20年。
    決して短い期間ではない。
    決してたやすいものではない。

    田舎の集落から地方都市部に進学した18歳の「私」は唐突に(ほんとうに唐突に、)ひとりの男性と知り合い、恋に落ちる。
    初々しいこだまさんとのちに夫となる彼の日々が、とてもとても可愛らしい。
    そして、タイトルにもなっているある問題に直面する。

    ちんぽが入らないのだ。

    「入らない」ことから派生してゆくあらゆる問題。

    男女の関係、家庭内の問題だけにとどまらず、職場でのトラブル、親とのこじれ、体の異常、夫の不調…

    いろんなことが総動員してこだまさんを苦しめる。
    それでもひとつだけ揺るがない、夫との生活。
    夫と生きる。すべてを隠しながら、夫の秘密をこっそり確認しながら、ふたりは一緒に生きていく。

    わたしは、こだまさんの自筆のあとがきに書かれた、今際の際に家族にこの本を差し出すという決意を、いつも強い気持ちを出せないで苦しんでいたこださまんの底知れぬ強い意志を、全力で応援したい。

    もしかしたら、ご主人は知っているかもしれない。と、一読者のわたしは考える。
    ポイントカードをみて、いつ指名サービスを受けられるか把握している妻のように、密やかに更新されるブログや、東京での活動、この本が発売されるまでの、そして発売されてからの動向すべてをもしかしたら、知っているかもしれない。
    知らないでいてほしい。そしてまんがいちのときは、お互いに知っているということをずっと知らないでいてほしい。

    神様がなぜこのような試練をふたりに与えたのか、誰にもわからない。
    わからないけれど、20年。
    一緒にいることは、入るより、むつかしいかもしれない。
    ご主人がこだまさんに時々渡す言葉の端々に愛情があって、こださまんもきちんとそれを受け取っていて、ふたりの結びつき、関係性がとても素敵だとおもう。
    こんなに心の純粋な夫婦のかたちを目撃できたことを誇りにおもいます。

  • このタイトルの本に、こんなに胸を打たれるとは。
    正直言って、辛い。人と身近に接することに苦手な作者がそばにいても大丈夫なただ一人の人と出会えたというのに、身体でつながることができないなんて。
    いや、心がつながっていれば大丈夫、ともいうけれど本当にそうなのか。
    この2人がともに過ごした年月の長さが、その「大丈夫」だと言えるまでの困難さを物語っていると思う。簡単に言えるほど「大丈夫」なものならもっと早くになんらかの結論が出せていたのじゃないか。
    信頼し合い必要としあっているのに言えないことがある。一番大切な人だから一番大事なことがいえなかったりもする。そんなあれこれをようやく乗り越えたのだな、と。
    これはただ単に夫のちんぽが入らない夫婦の話、ではなく自分以外の誰かをきちんとまるごと認める、もしくは共感できなくても受け入れる、その大切さを教えてくれる一冊なのだ。

  • まず率直に、男女の愛の形は人それぞれで世間一般のいわゆる「多数派」の意見を当たり前のことのようにぶつけるものではない。と改めて思った。

    自分にとっての当たり前が目の前の他人には通用しないかもしれない。
    付き合っているからセックスする、できるのが当たり前ではない。ましてや好きな人とだけできないこともあるのだ。
    私は好きな人とのセックスが辛いという体験をしたことがない。幸せなものだと思っていた。
    そうでない人もいる。また自分の知らない世界を知ることになった作品だ。

    この本ではセックスだけでなく、主人公こだまが心に秘めた荒んだ思いがたくさん詰まっている。
    誰かに辛いと言えないこと、悩んでいると言えないこと、自分の悲しみのはけ口がないこと。
    それがどんどん自分を追い込んでしまうのだ。
    総じて悩みを打ち明ける相手がいること、時分のストレスを解放することが自分を楽にできるのだと感じた。
    寂しい、苦しい心の闇はその人の言動行動に現れる。
    まだ非行などで反抗できる人のが生きやすいのかもしれない。何も言えずに抱え込んでしまう人よりは。

    いつか自分にも起こるかもしれないこと。
    他人事ではない。
    自分の当たり前を相手に押し付けずに生きてゆきたい。

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著者プロフィール

主婦。ブログ『塩で揉む』が人気。同人誌即売会「文学フリマ」に参加し、『なし水』に寄稿した短編を加筆修正した私小説『夫のちんぽが入らない』で2017年にデビュー。翌年には2作目となる著書『ここは、おしまいの地』を上梓した。現在、『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』で連載中。

「2020年 『夫のちんぽが入らない(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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