夫のちんぽが入らない(扶桑社単行本版)

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594075897

作品紹介・あらすじ

2014年5月に開催された「文学フリマ」では、同人誌『なし水』を求める人々が異例の大行列を成し、同書は即完売。その中に収録され、大反響を呼んだのが主婦こだまの自伝『夫のちんぽが入らない』だ。

同じ大学に通う自由奔放な青年と交際を始めた18歳の「私」(こだま)。初めて体を重ねようとしたある夜、事件は起きた。彼の性器が全く入らなかったのだ。その後も二人は「入らない」一方で精神的な結びつきを強くしていき、結婚。しかし「いつか入る」という願いは叶わぬまま、「私」はさらなる悲劇の渦に飲み込まれていく……。

交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落"の半生。“衝撃の実話"が大幅加筆修正のうえ、完全版としてついに書籍化!

いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。交際期間も含めて二十余年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間に話したことはない。こんなこと軽々しく言えやしない。
何も知らない母は「結婚して何年も経つのに子供ができないのはおかしい。一度病院で診てもらいなさい。そういう夫婦は珍しくないし、恥ずかしいことじゃないんだから」と言う。けれど、私は「ちんぽが入らないのです」と嘆く夫婦をいまだかつて見たことがない。医師は私に言うのだろうか。「ちんぽが入らない? 奥さん、よくあることですよ」と。そんなことを相談するくらいなら、押し黙ったまま老いていきたい。子供もいらない。ちんぽが入らない私たちは、兄妹のように、あるいは植物のように、ひっそりと生きていくことを選んだ。(本文より抜粋)




こだま

感想・レビュー・書評

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  • まぁーーーー、夫婦関係に年季が入ったヒビ割れのあるストーリーを期待したのに。序盤で、あっ、これは逆のやつ。あったかい話になるのではと不安がよぎった。

    筋違いの落胆は、散々ちんぽが入らなかった結婚生活の中盤にさしかかりガッツポーズに変った。よーしきた。落ちろ落ちろ。

    …もう人としてゴミだなと自分を呪う。
    実際、歪みきっていても心暖まるストーリーだった。


    作者の言う、身近な人にほど大切なことが伝えられない病。それを私の妻も患っている。彼女の苦しみを、この夫のように泰然と受け止められない。私も渇いているし、悔しいし力不足を散々悔やんできた。そんなダメ夫100%目線で読んでしまい、100%ブーメランで返ってきてさらに落胆。お釣りも出ない。

    妻に入らず風俗で紛らわす夫に対し、それでも尽くす気持ちを捨てなかった作者はバリカンを持って夫の髪を刈る。

    ── 夫の頭は、カラスに食い荒らされた玉ネギのようにデコボコになった。



    笑ったー。油断した。
    ふと漫画家のカレー沢薫先生の夫が頭をよぎる。
    なんだよ。どうしてみんな笑えるんだよ。
    笑えない自分だけが置いて行かれた気分。渇き。

    私も身近な人ほど大切なことを伝えられない病人だからなのか。そうなのか?

    そうなのか…と1%くらい思った。
    デコボコ夫婦まで、いや出来た夫まであと何冊本を読めばなれるかわからない。

  • H30.11.17 読了。

    ・タイトルが気になって、手にとった本でした。内容は深いですね。チンポが入らない理由は・・・。でも、夫婦が紆余曲折しながら、よくぞ20年も連れ添ってきましたねと感服しました。こだまさんの夫がこの本を手にするのはいつのことやら。

    ・「『どん底』を持っているだけで、私は強い気持ちになれる。」
    ・「誰とも比べなくていい。張り合わなくていい。自分の好きなように生きていい。私たちには私たちの夫婦のかたちがある。」
    ・「私は目の前の人がさんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく言いたくはないのです。人に見せていない部分の、育ちや背景全部ひっくるめて、その人の現在があるのだから。それがわかっただけでも、私は生きてきた意味があったと思うのです。」

  • インパクトのあるタイトルで、読む前はほとんど下ネタの本かとおもったが、そんなことはない 夫のちんぽが入らないという悩みはそれぞれの悩みに置き換えられるし、人生はそれがすべてではなく、それ以外のところでどう前向きに生きていくか 悩み続けたからこそのこの人の言葉が、悩みを抱えている人の肩の力を無意識に抜いてくれるだろう

  • ひりひりする。
    タイトルに嘲笑い、発売当時に仲の良い先輩と「ノリで」買ったことを覚えている。

    最近、家に本を置く場所がなくなってきて、整理していたときに久しぶりに手に取った。
    「もうこんなふざけたタイトルは手放そう」と思い、最後にどんなんだっけと読み返したのがだめだった。

    ああ、ひりひりする。
    この作者の生きてきた人生。分からないようで分かる、異常なようで、誰にでもありうる普遍的な生きづらさ。「普通」という呪いにとらわれて苦しむつらさ。
    「どうしても入らない」という精神性。家族との関係。
    そして、最後の手書きの迫力。

    誰の人生もみな、「名作」になるのかもしれない。ひっそりと耐えて生きてきたこの人のように。

    読み終えた後にはやっぱり、まだ家に置いておこうと思わされた。


    (そして再読すると、あの時は知らなかった乗代雄介さんの名前があとがきに載っていて驚いた。いまや芥川賞ノミネート作家…!)

  • タイトルから色物系かと思ったが、実話であり、文学的な内容でした。
    ユーモアを交えたドラマでした。
    また、少子化問題や子供のできない方の想いが込められている作品である。


    ドラマ化決定。話題沸騰!

    “夫のちんぽが入らない"衝撃の実話――彼女の生きてきたその道が物語になる。

    2014年5月に開催された「文学フリマ」では、同人誌『なし水』を求める人々が異例の大行列を成し、同書は即完売。その中に収録され、大反響を呼んだのが主婦こだまの自 伝『夫のちんぽが入らない』だ。

    同じ大学に通う自由奔放な青年と交際を始めた18歳の「私」(こだま)。初めて体を重ねようとしたある夜、事件は起きた。彼の性器が全く入らなかったのだ。その後も二人 は「入らない」一方で精神的な結びつきを強くしていき、結婚。しかし「いつか入る」という願いは叶わぬまま、「私」はさらなる悲劇の渦に飲み込まれていく……。

    交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落"の半生。“衝撃の実話"が大幅加筆修正のうえ、 完全版としてついに書籍化!

    いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。交際期間も含めて二十余年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間 に話したことはない。こんなこと軽々しく言えやしない。
    何も知らない母は「結婚して何年も経つのに子供ができないのはおかしい。一度病院で診てもらいなさい。そういう夫婦は珍しくないし、恥ずかしいことじゃないんだから 」と言う。けれど、私は「ちんぽが入らないのです」と嘆く夫婦をいまだかつて見たことがない。医師は私に言うのだろうか。「ちんぽが入らない? 奥さん、よくあること ですよ」と。そんなことを相談するくらいなら、押し黙ったまま老いていきたい。子供もいらない。ちんぽが入らない私たちは、兄妹のように、あるいは植物のように、ひ っそりと生きていくことを選んだ。(本文より抜粋)
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  • 学校に通って卒業して就職して、結婚して子どもを持つ、いわゆる普通の暮らしが当たり前で、それができない人は「欠陥品」。そんな価値観が21世紀の現代もどこかにまだ残っているように思うことがある。石を投げられることはなくとも、道の真ん中を堂々と歩けないような、そんな感じ。だから結婚しないんじゃなくてできない、子どもを持たないんじゃなくてできない、そういう捉え方をされてしまって苦しんでいる人がたくさんいるのだと思う。

    夫のちんぽが入らない、本当に衝撃的なタイトルで、タイトルを聞いてから手に取るまでにかなり時間がかかってしまった。でも、読んでよかった。人生は人それぞれ、価値観も、身体も心も、家族のあり方も、人それぞれ。目の前の人の考え方や生き方を否定することなく最大限尊重できる人でありたい。他人に対しても、自分に対しても。

  • この感想が適切かはわからないけど、すごく良かった。なぜ適切かわからないと濁すか。それは、作者はきっと自分の人生について、夫を含めて最終的には肯定的に見ているように見えるのだが、読者である私からだと主人公だけが我慢しすぎてかわいそうだと思ってしまうから。
    教員、そして家庭生活の日々の中で唯一の捌け口だった、日記を書いていたサイト。主人公はサイトを訪れた相手の欲のままに抱かれるが、ずっと後になってから最初に会った男に指摘されるまで、実はそのサイトが出会い系だと気付かない滑稽さ。たとえ主人公がその日記に日々の苦しみを綴っていても、結局はそういうキャラ作りだと思われてしまう。これってなんて酷い話なんだろう。
    酷いのは夫もだ。入らないからって自分だけ咥えさせて顔射して寝る??夫とその後一緒にお風呂に入り、顔を洗っているとかならまだ愛があるけど、そんな性行為で主人公が得るのは虚しさだけだ。
    顔射する人間は女性の尊厳を傷つけていると思う。もっとも、主人公がそれで快感を覚える性癖なら何も問題ない。しかしどうもこだまさんの文章を読むと、そこに主人公が快感を得ている描写がないのだ。だからかわいそうという感想が浮かんでしまうのかもしれない。
    主人公がセックスで存在意義を感じるのはいい。それは勝手だ。しかしなぜ主人公に関わる全ての男、そして夫は、自分だけの欲求を押し付けばかりで、主人公と共に気持ちよくなることを考えていないのだろう。どうしてそんな男に囲まれた人生でも、主人公は肯定的に捉えられてしまうのだろう。

    ここまでが、読んで悲しくなったところ。
    「良かった」というのは、多くの女性が感じるであろう心の機微を文章にしてくれたこと。私も存在意義を感じたくて、気持ちよくないセックスをしたことだってある。そのとき感じた充実感と虚しさをここまで文章にしてくれた作品は今まであまり出会ったことがない。
    そしてその二つの感情を私が抱いていたのは若かりし頃の話だ。この主人公で言えば、処女を捨てた頃合いか。決して結婚してからではない。過去には自暴自棄なり、教員になってからも傷つき辞めた私も、今では人並みの幸せを夫と得ている。
    そう、これがすべてフィクションであるなら、私は問答無用で☆5を付けた。痒いところに手が届く最高の文学だから。ただ、実際にこの日本を生きる女性の随筆だからこそ、☆5は付けられなかった。

  • 夫婦のあれこれを楽しく買いてある本かな?と思って購入。
    ぜんぜん…重〜い気持ちになりました。

    夫婦はできればSEXやボディコミュニケーション(寄り添って眠るでも良いし手を繋いで歩くでも)がある方が仲良く暮らしていけると考える私にとって(もちろん、絶対ではないし、違っても仲の良い夫婦はたくさんいると思う)、この夫婦の、『入れる』『入らない』『他の人と』という行為に、とても気持ちが悪くなった。

    精神的な事で入らないのなら、なおのこと、違う形で寄り添える夫婦でいられなかったのか…な。

    けれど、本には表せない、私には分かり得ない、いろんなことがあるんだろうな…

  • ずっと気になっていましたが、やっと読めました。とても良かったです。最後まで読んで、タイトルにすごく納得しました。

    文章も読みやすく、前半は思わず笑ってしまうほど面白かったです。

  • すごい、すごい、すごい小説を読んでしまいました。この題名を見た時、官能小説かと思ってしまった。違います。もうこれは純文学です。学校の先生を目指し、そして先生になってからの主人公の悪戦苦闘の日々を心苦しく読んでしまいました。こだまするほど言いたい、一気読み間違い無しの鳥肌小説、題名だけで判断してはいけない大傑作でした。

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著者プロフィール

主婦。ブログ『塩で揉む』が人気。同人誌即売会「文学フリマ」に参加し、『なし水』に寄稿した短編を加筆修正した私小説『夫のちんぽが入らない』で2017年にデビュー。翌年には2作目となる著書『ここは、おしまいの地』を上梓した。現在、『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』で連載中。

「2020年 『夫のちんぽが入らない(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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