表象文化研究 新訂

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  • 放送大学教育振興会
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784595126031

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  • 表象をキーワードに、芸術、時代を鋭く分析していく。
    先人たちが時代の流れをとらえ、乗り越えてきた様を感じる。

    以下、試験対策用
    1.表象=一般的には再現、再現前、代行、代表、上演。意味とは異なる。フーコー「言葉と物」。バロック=ゆがんだ真珠、いびつな、異形の。人間とは本質的に表象する動物。人間は絶えず自らが住まう表象文化を更新し、創造しつづける。表象研究では、誰に、誰が、何を、どのように、どのようなコンテクストで探る。

    2.近代の乗り越えとディドロ=フーコーにあてはまらない、「石も切り刻まれれば、泣く」。全体論的一元論。『百科全書』。近代と近代以後も越えている。

    3.モデルニテ、マネ。表象から投影へ。ボードレールいわく、絶対美は存在しない。見るまなざしそのものが、主体から切り離され、その眼差しは欲望と結びつく。意味構成まで行き着かない事実性が問題になっている。印象派は、内面の印象というもう一つの表象を投影的に映し出す。マネの「フォリーベルジェールのバー」では、二重の視線が。像が対象から独立している。「投影の構造」。モデルニテでは、人間の文化における時間という次元を刷新。時間と空間が入り交じっている。一瞬に永遠がきらめく。そこに死が感知されている。映画の発明。

    4.マラルメの詩(言葉や文字において詩を問う)とソシュールの記号の知。文学とは近代が産みだしたラディカルな文化経験であり、永遠化するほど自明ではない。政治が共和国という世俗的で徹底的に無根拠な表象の制度として姿を現す。宗教とは?文学とは?活字メディアについての省察。詩は表象文化を批評するメタ言説の実践。記号の知とジャーナリズムの言葉。電話、蓄音機。シニフィアン、シニフィエ。脳のモデル。「言語は観念を表現する記号のシステム」

    5.表象の文化性。都市。ルーブル、ナショナル・ギャラリー。帝冠様式。

    6.九代目団十郎。活歴の英雄。戦争劇の失敗。「助六」は江戸という都市の表象でもある。内面の心理は表現しなかった。

    7.九代目の挫折。日清戦争。古典へ回帰。型と演出は違う。坪内逍遙=素人劇(川上音二郎の発言)、小山内薫=玄人の歌舞伎役者を使ったイプセン劇。しかし、前近代と近代の対決はなかった。両者とも歌舞伎を否定できなかった。興行的な勝利で芸術的な勝利ではなかった。

    8.デュシャン。時間を含んだキュビズム。「階段を降りる裸体№2」。運動と構成。「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」。欲望と言語。4次元空間の二次元空間への投影。演奏の次元。アイロニー。ブルトンのシュルレアリズム。レディメイドのオブジェ。便器が芸術作品。

    9.コレット。ジェンダーと身体。1906年。舞台も。虚構・現実・表象。

    10.20世紀。映像の文化。映画は人びとを束ねる。大衆の欲望をかなえる夢の工場。香港映画=山上の表象。

    11.音楽。調性の崩壊と聴衆の乖離。機能和声。主和音、属和音、下属和音。シェーンベルク。和声法、和声進行(動く)、和声連鎖(動かない)。ヴァーグナー、機能和声からはみ出したトリスタン和音。施法を使った作曲家…ラヴェル、フランク、サティ。それ以外にもドビュッシー。拡張…ブラームス、マーラー。無調音楽…ウェーベルン。シェーンベルク…十二音技法。

    12.三次元グリッド…ニューヨーク。アンディ・ウォーホル。そのまま。大量生産品。スター。ボードリヤール「物が消費されるためには物は記号にならなければならない」。文化産業。を批判…アドルノ、ホルクハイマー。時間性をそなえた商品。を批判、象徴的貧困…ベルナール・スティグレール、自己愛の契機をも喪失する危険。

    13.マクルーハン。人間拡張説、感覚比例論、メディア成層論。「メディア=メッセージ」。グローバルヴィレッジは両義的。ダイクシス=指示子いま、ここ。テレビはスタジオと視聴者のあいだのダイクシスになる。ながら視聴。エーコ:実況放送のディレクター→ネオテレビ:テレビが現実を作り出す。メディア・リテラシー。

    14.IT、電脳空間、ヴァーチャル:身体経験、感性の枠組み、知性の働きを変えた。VRは時空間を共形成。HTTPは自己組織化しているコミュニケーション空間。現在のアートは時間を作り出している。観客がアクターでもある。イメージとイメージとの関係性の二つが変化する。作品の前でなく、中にいる。ポスト・ヒューマンの条件:事物がシミュレート。感覚が合成。空間が計算論的に書き換えられる。ユビキタス(偏在する)・コンピューティング:具現化したVR。表象と素材のラディカルな変化。自然と文化の区別にも変更が。蘭のコミュニーケーション!ドーキンス:人間とはミーム(文化遺伝子)の乗り物である。アートは、テクノロジーの意味環境を発明する感性の実験。

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著者プロフィール

演劇評論家。1936年、東京生まれ。初めて歌舞伎を見たのは6歳のとき。中学生の頃から芝居を見るたびにノートをつけるようになる。古典に限らず、現代劇や舞踊についても、どこをどう見るべきなのか、積み重ねてきた方法論はとても理論的でわかりやすい。『女形の運命』で芸術選奨文部大臣新人賞、『娘道成寺』で読売文学賞、『四代目市川團十郎』で芸術選奨文部大臣賞。著書に『歌舞伎ナビ』『能ナビ』(ともにマガジンハウス)など多数。

「2020年 『文楽ナビ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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