国家理性=国益を追求=一元的主体としての国家 the state as an unitary actor
p34
主権の誕生: 国家権力が宗教的権威と教会からの自立を進めた絶対王政の時代において、主権概念を用いることによって世俗国家の権力を宗教的権威から擁護した。p35
主権概念は国際社会の基礎をつくるとともに、国際関係における自然状態の継続も提供していることになる。p36
その理念の極限において、リベラリズムには国家ばかりでなく国際政治という枠組み自体を相対化するようなラディカリズムが潜んでいた。p43
もっぱら国家を主体とするリアリズムだけでも、また国家ではなく市民社会を主体として国際政治を捉えようとするリベラリズムだけでも捉えることのできない微妙な均衡のなかに、現代の国際政治が位置すると考えることが出来るだろう。p45
権力構成要素(capability)
①地理:領土の大きさ、戦略的位置
②人口:戦力としての人口
③天然資源:戦争遂行のための自給能力
④経済力:経済の規模・自給と持久・工業力
⑤技術力:技術革新・兵器の性能・生産技術
⑥軍事力:規模・予算・破壊力・精密度
p51
各国の国益が互いに衝突せず、国際協力が成り立つためには、ノンゼロサム状況が存在し、しかも各国が相対利得ではなく絶対利得を目的として行動するという2つの仮定が同時に満たされなければならない。p59
ロバート・アクセルロッド「そのゲームにおける利得ばかりではなく、将来の利得の可能性を含めることによって、打開不可能に見える紛争にも打開の可能性が生まれることには留意すべきである」
→ゲームが複数回繰り返されるとき、囚人のジレンマは成り立たない? p72
最悪事態原理と自己充足予言は、国際関係の基本的なジレンマを生み出してしまう。
従属理論、「首都- 衛星理論」アンドレ・グラダー・フランクp127
16世紀にスペインが世界帝国の建設に失敗して以来、国際社会は複数の国家から形成されたが、経済的にはヨーロッパ資本主義は世界的に拡大し、世界全体を市場とする経済をつくりあげた。⇒イマニュエル・ウォーラーステインの世界システム論
世界資本主義が世界に拡大する過程で、後から世界市場に編入された諸国は世界システムの周辺(periphery)に組み込まれ、そこでの利潤は資本主義大国(中枢, center)に吸い上げられる。p128
【民主主義の外交ジレンマ】
民主主義では外交を公開し、国内政治を反映することで、世論に左右され、必ずしも合理的な外交を展開することが難しくなることがある。p153
【ナショナリズムの定義】
「民族に関わるシンボルを媒介として、政治社会の統合を目的として展開される運動あるいは体制」p159
ただ、民族観念は曖昧にならざるおえない。p160
リベラリズムは国家以外の主体を重視し、軍事問題以外の領域の重要性に注目し、国際機関の役割を強調してきたといってよい。p193
結合の多元性、争点序列の不在、軍事力の相対化という三つの特徴によって把握される複合的相互依存は、結合の一元性、争点の明確な序列、そして軍事力の一般的有効性という三つを前提とする伝統的リアリズムとはかなり対照的な構成要素を取っている。p200
ロー・ポリティクス: 国家主権との関わりが相対的に低い分野
ハイ・ポリティクス: 国家主権との関わりが極めて高い領域
政治学者スタンリー・ホフマンはヨーロッパにおいて地域統合が進んでいるのはロー・ポリティクスに集中しており、国家主権の制限を伴うハイ・ポリティクスにおける地域統合は進んでいないとして、波及理論に厳しい批判を行った。p216
国際機構は各国よりも上位の超国家的な主体ではなく、各国の利害調整の場として、その機能を期待することができる。主体から空間へという国際機構に対する視点の転換は可能である。p229
【覇権安定論】
覇権国家(hegemon)が公共財(public goods)を提供することによって国際体制は安定する。p231
国際体制は予測可能性の拡大、情報入手コストの削減、さらに国際交渉のコストの削減という具体的な利益を各国政府にもたらすことができる。p234
【埋め込まれた自由主義(embedded liberalism)】
自由主義という原則を前提とした上で、各国の貿易政策に関する裁量を保つ。
APECばかりではなく、EU・メルコスール・AFTAなどの地域機構における貿易自由化とは、WTOによって強制される前に、その地域の諸国にとって有利な条件の元で自由化を進めるという意味を持っていた。p236
イギリスのサッチャー政権、アメリカのレーガン政権に始まった新自由主義は、ヨーロッパ諸国では伝統的福祉国家政策の転換を、発展途上国では輸入代替工業化の最終的崩壊と輸出指向工業化の拡大をもたらした。p241