おやすみ、リリー

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制作 : 越前 敏弥 
  • ハーパーコリンズ・ ジャパン (2017年4月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596552051

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おやすみ、リリーの感想・レビュー・書評

  • 作者が経験した大きな喪失を思うとこの本の執筆にどれだけの痛みが伴っただろうと胸が締め付けられる思いでした。
    リリーはメスの老犬だが、人だろうと犬だろうとどんな生き物だろうと、愛する存在を失う痛みは計り知れない。
    その痛みと真っ向から向き合って、その存在が自身に与えてくれた全てに感謝する、生きることについて真剣に考えを巡らす、人生にとってこれほど価値のある時間もないのではないだろうか。
    そして一人の男性が経験したそんな時間を追体験する意味でこの本はとても意義深い。
    命に対してどれだけ自分を純化して向き合うことができるか、人はそんな局面でこそ今までの自分を試されることになると思う。
    平和ボケをしていてはダメなのだ。

  • 織り交ざった現実と空想の世界。リリーとの最後の日々。受け入れたくない現実。ずっと同じ毎日が続くと信じたい気持ち、すがりたい気持ち。やっつけて、リリーとの生活から消し去りたい「タコ」。
    空想の世界が突飛であればあるほど、リリーへの激しく深い愛情と哀しみを感じました。

    ブクログさんから本が届いた時、「老犬を、見送ると、いうこと」と帯の言葉に、最後まで読みきることができるだろうかと不安でした。最愛の猫をつい最近亡くしたからです。でもこのタイミングで「おやすみ、リリー」に出会えてよかったと、読み終えた今は思っています。

    何度も何度も頷いては、涙しました。特にニックネームのところは、たまらなかったです。私も同じことをしていたから。やだ、何!同じことしてる!って。
    大切な存在を亡くして悲しみの中にいる人にこそ、こわがらずにぜひ読んで欲しい本だと思います。

    リリーの独特の喋り方、ワンコだからなのですよね。それに気付いた時、じんわりきました。

  • だいたいにして「動物もの」と呼ばれる映画、小説は好きじゃない。「感動の!」「号泣!」と煽られるのはいやだ。
    この本も手に取るまではやや時間を要した。しかし「泣くための本じゃなかった」という声があちらでもこちらでも聴こえ、そして実際に書店で手に取ってみると装丁がなんとも美しく(栞の色がきれい)、こちらを見つめるダックスちゃんを置いて帰るわけにはいかなくなってしまった。
    読みはじめはつらい。帯にも「老犬を、見おくる、ということ」とあるとおり、犬がいる「あたりまえの日常」が終わりを告げていくのを見つめる話である。
    飼い主は独身男性で(ちなみにゲイだが、その部分は主人公が左利きだ、くらいに大したことではない)、かなりのくよくよくんだ。冷え始めた恋人との関係に悩み、どこかいつも気持ちがかみ合わない母の愛を求めている。そんな彼が、リリーのこともあって、人生に向き合いはじめていく。
    しかもそんなときに老犬を看取らねばならないのだ…
    と、暗く、暗く、落ちていきそうな物語を、老犬リリーの愛らしさが見事に救う。そう!だって!犬は!じぶんが!老犬だなんて!思わないんだもん!びょうきなんて!うそよ!(リリー風に)
    ついこの前も、認知の進む老父を見送る中島京子さんの『長いお別れ』を読んだばかりだ。そしてこの二冊の、…なんて可笑しなこと。愛ある作家が描くと、最期の時間すらもユーモアあるいとしいものになる。
    さあ泣け泣けという本は嫌いだと言っていたのに、最後はやっぱりおいおい泣いた。いままた、最後の一文を見直して…泣いた。
    でも、読んでよかった。
    それにしても、リリーのせりふはうまかった。ダックスフンドって確かにああやってしゃべる。うちのコーギーは、話し方はもっとゆっくり。ああ、犬を飼っておられない方。信じられないかもしれませんが、犬にはほんとうに「声」があるんですよ。
    装丁の工夫も見事。詳しくは言わないが、あとからはっと息を呑む仕掛けがほうぼうにある。原作者は日本のこの装丁、米国にもほしくなるんじゃないかな。

  • 犬(リリー)が言っていることを分かち書きで表現する方法は斬新だし見事だと思った。うちの犬もこんな事を言ってるんだろうなと思う事がある。将来、犬の言葉の翻訳機が出来たらこんな感じかも。
    その内容も主人公のテッドの愛情のフィルターが多分にかかっているのがとても感じられて、優しい気持ちにさせられました。

    人間関係が苦手だからこそ心をこじらせてしまったテッドは根っから優しく純粋な人なんだろうなと思いながら読みました。
    純粋でなければタコと話が出来たりしないね。

  • ブクログ様より献本企画でいただきました。
    老犬を見おくるという内容に献本企画に応募しましたが、もっと物悲しい内容かと思えば思ったより軽快な始まりでした。
    予想外だったのは主人公の性嗜好。私は平気でしたし、読んでいるうちに気にならなくなりましたが、これによって好き嫌いはあるかもしれないと思いました。ただ、その好き嫌いだけではじくには惜しい内容だと思うので、やはりあえて前面に出さずに先入観なしに読むのが良いのかもと思いました。
    主人公の飼い犬であり相棒のダックスフント・リリーとの軽妙な会話は、犬飼いなら楽しめるものであり、ある日気付いたタコに関する滑稽なほどの主人公の奮闘ぶりは身に沁みます。
    現在犬を飼っている私には、その日が来ることがとても怖いです。怖いけれど、いつかは来るのだと覚悟しながら読ませていただき、主人公とリリーのように仲良く過ごせたらなと思いました。

  • リリー、よく頑張ったね。今はもう悪いところはどこにもなくて、痛くも苦しくもなくなって元気だといいな。
    安楽死を選んだテッドを肯定も否定もしないけど、それはリリーを愛するが故に苦しんで出した結論だったのかなと思う。空の上からいつまでもテッドを見ていてあげて。いつかまた二人が会える日までおやすみ、リリー。

    人以外の生き物は一途で真っ直ぐな愛情をくれる。そして最期まで健気に生きる。愛していればいるほど会えなくなる事は怖く、苦しい。それでも遺された者の人生は続く。

  •  小説自体あまり読まないので、友人に勧められなければ読まなかったかもしれないが、作者の半自伝的な要素もあり、老犬を看取るというコンセプトに惹かれて読んでみた。
     愛犬「リリー」との会話や、主人公のセクシュアリティーの場面が出てくると、「やっぱり小説だめかも」と躊躇してしまったのだが、愛情が決して足りているとはいえない環境で幼少期を育った主人公と、見返りを求めず惜しみない愛情を持つ犬(リリー)との関係を軽快に描写しているので、読み進めていくうちに、どんどん引き込まれてしまい、リリーとの会話も違和感がなくなってきてしまった。犬(ペット)を飼った経験があるなら、この「会話」自体も、不思議ではないのかもしれない。
     リリーの最期は、愛情と友情と勇気ある主人公の気持ちに、苦手意識で読んでいた自分でも号泣してしまった。本書を読むときは、一人でこっそり読むことをオススする。

  • 主人公の男の愛犬に対する感情を様々な比喩を巧みに使って表現している。この際、現実と空想の線引きは、もう関係ない。

  • 年老いた愛犬が腫瘍ができて安楽死するまでの話。実家の腫瘍が大きくなりすぎて安楽死した犬を思い出す。
    口がきけなくて、心優しいパートナーの死は悲しい。

  • 「老犬を見おくる」という帯の言葉に身構えてページを開いたが、予想外に軽妙なやり取りから始まっていて、やだトムだったらトムハでしょ私も入れて!とすっかりテッドとリリーの長い友達のような気持ちですぐにのめり込んだ。
    そこから先も、思っていたのとは全く異なったが、ずっと素敵な物語だった。
    まさか、このお話で何度も吹き出すとは。
    天真爛漫なリリーの魅力的なこと!
    テッドの臆病さや身勝手さには我が身を思い出されて苦しくもなったが(テッドとリリーの関係に、自分と幼い娘が重なりもするので余計に)、ここまで書いてくれたからこそ力のある物語が生まれたのだと思う。
    読み終えて残ったのは、温かくて柔らかな手触りだった。

    (テッドのセクシャリティをウリに(嫌な言い方だが)しない宣伝も良かった。特殊なことではない、当然あるものとして書店に並ぶ時代にそろそろなっていいでしょ!)

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