手紙

著者 :
  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620106670

感想・レビュー・書評

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  • 東野圭吾の世界に踏み入れた最初の作品、先日のTVドラマを観て再度 読んでみたけど やっぱり書物に勝るものは無いと再認識しました。半ば過ぎまでは こんなに緩いカンジだったかなぁ?などと感じながら読み進みましたけど、いやいや終盤にかけての盛り上がりは そうそう こうだった!と蘇って来ました❗

  • 遠い親戚なら、知らんぷりで我関せずでもいられるのかも知れないが、実の兄が、自分の為に起こした、しかも殺人であるならば、それからの人生がどのようなものになるのかは、想像に難くない。

    本人の心の中でさえ、嵐が吹き荒れているのに、周りの対応がまた、人生を生きづらくさせてゆく。殺人にどんな理由があろうと、殺人は殺人であり、近しくなればその理由も知る事が出来るだろうが、少し近しい程度では、その心中まで考える余裕もないし、考える必要も感じず、ただ距離をとって近づかないようにする事が、一番楽な方法なのかもしれない。
    ただそれは、差別にほかならない。
    差別のない世の中は美しいだろうか。差別のない世の中になる事は可能だろうか。自分が差別している事に気づかなければ、差別などなくならないのではないだろうか。きっと気付かずに差別している人がたくさんいるから、差別はなくならないのではないだろうか。

    弟の為に殺人を犯した兄への気持ちが変化してゆくのはしょうがない。塀の中にいる兄には、弟の状況は想像するしか出来ないものであるから、弟が苦労しているかも知れないという事は想像できたとしても、その辛さを実際に知る事はできない。たった一人の肉親とのつながりは手紙しかない訳で、兄にとって手紙を書き続ける事が塀の中で十数年を過ごすためのモチベーションになっていたのかもしれない。弟がその手紙で苦しめられていることなど想像もせずに。

    運が悪かっただけなのかもしれないが、運が悪かったというそれだけで、人は良いのに苦労ばかりしているような人はいる。どういう生き方が正しいのかなんてことは、死ぬ時になっても分からないのかもしれない。

    兄が出所した後、この兄弟に何か変化は起きるのか、何も変わらないのか、どんな人生になってゆくのか、知りたい気がする。

  • とっても切ないお話だった。
    兄弟の絆、きっても切れない血縁関係に翻弄させられる
    そんな姿を思い浮かべては、涙がながれた。
    本人がこんなにも頑張っていても、不条理にも夢が壊されていく。
    こちらまで、苦しく、い居た堪れない思いでいながら 次へ次へとあっと 言う間に読了していた。
    社会とはそうしたものなのだ。・・と色々考えさせられた一冊でもあった。
    ただ、白石由美子さんの存在が唯一救いに思えた。

  • 弟の進学資金のために強盗殺人を犯した兄。
    他界した両親のかわりになろうと懸命に働いたが、身体を壊してしまい、盗みに入ることしか兄には思いつかなかった。

    兄の事件により、大学進学をあきらめ就職した弟。
    生活がうまくいきそうになるたびに足を引っ張るのは兄が犯罪者であるという事実。
    弟はバイト先で、バンドで、恋愛で、就職先で、”身内が強盗殺人犯だから”つらい思いをし続ける。

    刑務所から届く兄からの手紙の、のんきな言葉に弟は苛立つ。
    弟には支えてくれるひとも、つらくあたるひとも、距離を置くひともいた。
    彼はそれらを受け入れ、努力し、自力で大学まで卒業する。

    月日が経ち、”強盗殺人犯が身内にいる”という迫害は自分の娘にまで襲いかかる。そして弟は兄と縁を切ることを決心する。

    被害者の家で弟が読んだ手紙。兄の想い。

    --------------------------------------------

    加害者の身内に罪はあるのか。法的に見ても罪はもちろんない。
    しかし、そこにあるのは絶対的な差別と迫害。

    作中で書かれているように、
    罪を犯すということは自分だけじゃなくて、身内まで巻き込んで社会的に死ぬということ。
    自殺ではなく、身内を巻き込んだ無理心中。

    負の連鎖は続く。
    罪を償うとはどういうことなのか。
    悲劇を背負い続ける苦しみ。自分の家族に悲劇を背負わせる悲しみ。

    それが想像できたら罪を犯さないんだろうけど。イマジン。

  • やっぱり東野圭吾はすごい、と思わせられる一冊。
    ページをめくる手が止まらず、心に訴えてくる内容。

  • 映画を先に見ました

    読みながら、何度も泣きました

  • 事件の加害者家族の立場について考えさせられる作品。
    自分の犯した罪でもないのに、差別を受けて、当たり前の生活を送る権利を失ってしまった直貴は社会の理不尽さを痛烈に感じている。
    剛志の犯行動機が同情するものだったので、物語後半まで、なおさら直貴の境遇がかわいそうに思えます。

    平野の「差別は当然」「今受けている苦難もひっくるめて兄の犯した罪」という言葉は、とても重たく衝撃的で、罪を償うとは何かという事について考えさせられます。

    重大な犯罪が起きると、テレビのニュースやワイドショーでは、マスコミが加害者の身内を追い回してインタビューをしたり、両親が泣きながら謝罪したりしている光景を見ます。
    犯罪を犯した本人でもないのにあんな目に遭うなんて…と思う自分もいましたが、この本を読んで少し考えが変わりました。というか、もう少し大きな視野で捉えられるようになりました。

    自分だけの問題ではなく、家族や大切な人の人生まで狂わせる、これ以上ない苦難を与え続けるという事が多少なりと頭をよぎれば、それが犯罪の抑止力になるのかもしれません。

  • 主人公の気持ちが痛いほどわかる。兄貴の思いも痛いほど感じる。被害者の気持ちは当然だし、冷たくする世間の態度も、理不尽ながら他人事とは思えない。どこにも板挟みになりながら、読み進む。作者には、きれい事をきれい事に終わらせない筆力があって、犯罪加害者の罪をこれでもかと描いていく。いろんな立場の人に読んで欲しい本。

  • 家族の絆というものについて考えさせられた。
    仲間ってすごく大切。かなりの衝撃を受けた。

  • 中盤までは不満だった。淡々としており、主人公の身に降りかかる出来事も、状況設定からしてある程度予測できる。「つまらない」とは言わないが、物足りなさは否めない。
    絶縁の意思を手紙にすることは帯にそう書いてある。最初からわかっていたのに。なのに、実際のシーンではかなりの衝撃を受ける。
    果たして、直貴の決断は正しかったのだろうか。「正しくない」と口にするにはあまりにおこがましい、悲しい結末である。

著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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