許されざる者 上

著者 :
  • 毎日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620107356

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  • 日露戦争を背景とした和歌山の森宮市の人々の話。日露戦争前後の日本を知る意味では面白かったが、誰が「許されざる」なのかはよく分からなかった。

  • 『許されざる者』
    辻原登

    クマは隈、世界の涯、あるいは陰の意か。吉野は美し野。この吉野からみて、ここはそういう位置にあたる。(p9)

    ★舞台説明。世界の果ての物語ということか。

    「キリスト教って、木が一本もないさばくから生まれたんやないの? やすらぐもんが何もあらへん。そやから、もう上しかみるとことがない。上にあるのは空や。美しいのは砂漠の星空や。そしたらそこにたったひとりの神さまがおらはった。わたしは違うし。わたしのまわりには水や木、草や花や虫がいっぱいおってなし。………」(p85)

    ★多神教と一神教。この違いはこういうことだろう。

    永野夫人が、はじめて夫への隠しごとを意識した瞬間だった。奇妙なのは、それが、彼女に、予期したような罪悪感を生じさせなかったことだ。むしろ、小さなよろこびのようなものがこみ上げるのを覚えたとき、これこそが彼女を驚かせた。(p235)

    ★非常に面白い。『ボヴァリー夫人』を思い出した。

    文章というのはすばらしい。だが、兵隊にとられるということは文章の外の現実である。(p327)

    ★正に。そして我々は現実に住んでいる。
    「最後にたずねる。思い姫はおられるか? おられるなら、その名を挙げられよ。その方の名に賭けて戦うのが騎兵の本懐!」
    (p81)

    ★この場面は『ドン・キホーテ』のモチーフをつかっている………だろうか。

    ……どんな善良な人でも、心の中で起きていることには悪がまざっている。(p121)

    ★「まざっている」というのがポイントだろう。それは本人さえも気づいていない。

    「何もかも……」
    と口ごもる。夫人はさらに顔を近づけた。
    「……何もかも許す」
     夫人は耳を疑って、夫の顔をみつめた。
    さ迷っている視線が妻の目を探し当てる。二、三度、力なくうなずくと、
    「子供がいたら、よかったな……」
    (p194)

    ★文章の中で時間が動いている。そう読ませる。

    「……コドモが……」(p218)

    ★昏倒しながらもまだ思い続けている。それは夫人への思いの強さだろう。もしくは変えられない過去への呪詛か。

    ——人形の動作は、はじめはぎこちなくみえていても、太夫の語りと三味線の音色が作りだすリズムによって、生命が吹き込まれ、型にのっとって動いているにもかかわらず、ある種の存在感を獲得しはじめる。
     私たちは、それに気づくとともに、いっそう人形の所作やふるまいが予見しやすくなり、まるで我々自身の手で、人形をあやつっているかのような気持ちになる。(p352)

    ★非常に面白い文章。

    「千春ちゃん、さようなら。いつかまた……、どこかで、会えれば……」(p408)

    ★きっと、また会える。とはこの本の一つのテーマだろう。

  • 日露戦争のころの話。特に滅茶苦茶面白くはないけど、一気読みしてしまった。下巻もすぐ読みます。

  • 感想は下巻にて。

  • このあとどうなるんだろう下巻にgo

  • 続きが楽しみ

  • 2010.01.アメリカ、インドの留学から帰ってきた医師のドクトル槇は軍人で元藩主の永野の夫人に憧れている.姪の千春、甥の勉とともに森宮に住んでいる.槇らは反戦主義であるが日露戦争が勃発する.長い!

著者プロフィール

辻原登
一九四五年(昭和二〇)和歌山県生まれ。九〇年『村の名前』で第一〇三回芥川賞受賞。九九年『翔べ麒麟』で第五〇回読売文学賞、二〇〇〇年『遊動亭円木』で第三六回谷崎潤一郎賞、〇五年『枯葉の中の青い炎』で第三一回川端康成文学賞、〇六年『花はさくら木』で第三三回大佛次郎賞を受賞。その他の作品に『円朝芝居噺 夫婦幽霊』『闇の奥』『冬の旅』『籠の鸚鵡』『不意撃ち』などがある。

「2023年 『卍どもえ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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