彷徨う警官

著者 :
  • 毎日新聞社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620107707

作品紹介・あらすじ

警視庁蒲田警察署刑事課強行班捜査係長・北郷雄輝は、高校時代に起きた強盗殺人事件の犯人をひとり追い続ける。事件で殺害された最愛の人の無念をはらすために…。多摩川越しにいがみ合う神奈川県警との確執、突然の公安からの圧力、事件の背後には公安が隠し続けた北朝鮮絡みの不祥事が…。法を守るべきか、恋人の無念を晴らすべきか。決断の時が迫る。実力派作家、久々の本格警察小説。

感想・レビュー・書評

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  • 2010年4月27日、殺人や強盗殺人罪の刑事訴訟改正案が衆議院において賛成多数で可決され時効は廃止された。
    これは、こうした時効の壁をめぐる警察小説である。物語の主な舞台は東京の蒲田、神奈川の横浜。
    20年前に同級生の恋人を強盗に殺害された主人公・北郷は、無念を晴らすために警察官の道を選ぶ。同級生の交友関係からあたり、事件の背後には暴力団の影、香港マフィアを介した銃器や覚せい剤の密売、ドル紙幣の偽札作り、さらに公安警察と刑事課強行犯捜査係との確執。運送会社の給料強奪強盗殺人で完全時効となってしまった事件が、洗い出していくうち、複雑に絡み合う。
    「警官は正義の守護者ではあっても、正義の執行者ではない」と彼を高く買っている人物から窘められる、揺れ動く主人公の心の葛藤が描かれていく。

    中盤くらいまでは展開が複雑でやや中弛みしてしまうけれど、後半は警察組織の闇の部分があぶりだされ、正義とは何か?と考えさせられる。ラストは手に汗握る映画のワンシーンをみてるようだ!ユーミンの♪『ひこうき雲』も切なくラストで図らずも落涙。。。

  • 2022-11ガールフレンドを失くした少年の成長物語なのか、復讐譚なのか?ちょっとその辺りが曖昧だった気がする。20年を経て、終盤の一気の解決にも無理がある。でもまあスカッとJですね。

  • 高校時代、交際中だった女性が強盗殺人事件に巻き込まれ、無惨に殺されてしまうという過去を持つ主人公の刑事。彼女の無念を晴らすために自ら刑事の道を選択し、時効を過ぎてもなお、事件の犯人を独り追い続ける。

    複雑な事件背景ながら、淡々とした文章で丁寧に解されていくので分かり易かった。最初は単独捜査だったのが、県境を越えた神奈川県警との連携、退職刑事の協力など、次第に捜査に協力する人間が増え、いつの間にか大所帯の捜査に。多少、上手くいき過ぎな感はあるけれど、その連携感が心地よく、最後まで面白く読めた。文中に何度か挿入されているユーミンの「ひこうき雲」の歌詞が効果抜群で、脳内でユーミンの声で再生され、胸がいっぱいに。歌詞とともに印象的な良作だったと思います。

  • さすがに大御所、淡々とした筆致は健在だった。船戸与一と並んで国際謀略小説の第一人者だったが、戦略シミュレーションへ行ってしまってずっと遠ざかっていたのだが、また戻ってきたのだ。
    小気味よいテンポと圧倒的な迫力は職人技だと思う。が、しかし…。
    核心的な部分で破綻があるのだ。素人の私でさえ気が付くのだから、編集者も当然気付いているはずだ。しかしこれだけの大御所には指摘できないのだろうか。ネタバレになるので内容は書かないが、大好きな作家だけにちょっと残念だ。

  • 【彷徨う警官】 森詠さん

    北郷は高校時代に恋人を殺され、犯人への復讐を誓い警官になった。
    彼が警察官になって後も捜査は進捗せず、ついには時効を迎える。
    しかし、復讐を誓い「罪」に時効は無いと考える彼は非番の時間を使い
    ただ一人捜査を続けていた。
    北郷が調べを進めていると梶原勇太という名前が浮かんできた。
    彼は手がかりの男・梶原勇太との接触を試みる。
    梶原を漫画喫茶で逮捕した同時刻、神奈川県警の捜査班が
    なだれ込んできた。運悪く、神奈川県警の打ち込みと重なって
    しまったのだ。神奈川県警に、心ならずも迷惑をかけた
    北郷は事情を説明し、以後、神奈川県警大村巡査部長の信任を得る
    コトになる。
    彼は捜査を進める内に、当時の捜査班の中で一人、捜査方針に
    異論を唱えた刑事が居たコトを知った。
    その刑事・武田は、今は退官し無職となっていたが、武田の考え方
    に着目した北郷は武田とも接触をとる。
    そして、大村・武田という協力者を得て、彼は意外な事件の核心に
    迫っていく。



    初めて読む作家さんですが、面白かったです。もう少し
    同作家さんの他の本も読んでみよう♪
    ところで、この最初に起こる事件、何か聞いたことがあるような内容。
    実際の事件をモチーフに物語を作っているのかな???

  • 高校時代、交際中だった女性が何者かに射殺される。仇をとるために警察に入り、時効となっても個人的に犯人を追って彷徨う警官――東京・蒲田を舞台にしたのが成功。脇役が個性的・魅力的に描かれていて思わず応援しながら読んだ。時効というテーマの重さを感じさせない面白さ。サスペンスドラマの原作になりそう。

  • 新宿鮫を思い出させる・・・

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著者プロフィール

森 詠 もり・えい
栃木県旧大田原町出身。那須地方に育つ。
東京外国語大学卒。主な著作に『振り返れば、風』『燃える波濤』『雨はいつまで降り続く』『夏の旅人』『冬の翼』、戦争小説『日本朝鮮戦争』、警察小説『横浜狼犬』『清算』、青春小説『オサムの朝』『少年記オサム14歳』『那珂川青春記』『日に新たなり』『はるか青春』『パートナー』等がある。
最近、歴史時代小説『七人の弁慶』や『坂東三国志』も書いている。

「2022年 『父、密命に死す 会津武士道2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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