笹の舟で海をわたる

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著者 : 角田光代
  • 毎日新聞社 (2014年9月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108070

笹の舟で海をわたるの感想・レビュー・書評

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  • 私の乏しい文章力でどこまで伝えられるか分からないけれど、すごかった。
    最近の角田さんの作品はどんどん凄みが増していると思うけれど、今回もとにかくすごいのだ。のっけからぞわぞわする。
    主人公が初老の女性と言う時点で今までにない設定。
    主人公が角田さんより年上の設定って初めてじゃないかな。

    疎開先で知り合った左織と風美子。
    そもそも左織は風美子のことを全く覚えていなかった。
    だが大人になった二人が再会してから風美子は大きく左織の人生に関わっていくことになる。

    女同士の関係性を描かせたら角田さんの右に出る人はいないと思う。
    保守的な主婦の佐織に対して華やかな料理研究家の風美子。
    自分の人生をどう生きるかという点でも全く考え方の違う二人が、血のつながりを超えて共に生きていく姿はなんとなく分かる。
    お互いがお互いを必要としていて離れられない感覚。

    でも今回はこれだけでは終わらない。
    一冊の中に色んな事が凝縮していて、よくもまあこれだけ緻密に破綻なくかけるなぁ。
    戦争を忘れてしまうことの懸念、夫婦のありよう、親子の関係性。
    特に子育ての難しさというのか、切なさっていうか。
    もし私に子供がいなかったら絶対に風美子の生き方に共感して肩を持つと思うのだが、実際子を持つと左織の気持ちが痛いほどわかる。
    「私のなかの彼女」では毒親を持った娘の立場から親子関係を描いていたとしたら、今回は親目線で描かれているといったところか。

    それにしても角田さんは台詞が巧い。いちいち刺さってくる。
    心理描写も情景描写もちろん巧いんだけど、台詞の巧さがきわだってる。
    特に今回は子供たちの台詞を読みながらまるで私が言われているような気分になりちょっと疲れた。

    一人の女性の半生を描いてはいるがいたって平凡で特に大きな事件があるわけではない。だからこそその平凡な人生に共感してしまうのだ。
    最後に左織が初めて自分の人生を自分で生きようとする姿に胸を打たれる。
    光のあたる道を歩く風美子が主人公ではなく、地味な左織が主人公。
    この辺りがやはり角田さんらしい。
    作品に共通する核となる部分は変わらないけれど凄味が増しています。
    一読に値する作品です。是非。

  • 小学生のころ、同じ場所に疎開をしていた
    左織と風美子のその後の話。

    不思議な縁で結ばれた左織と風美子。
    性格も容姿も正反対の二人。
    誰かの庇護の下、生きていく左織。
    自分で切り開き、生き抜く術を見つけていく風美子。

    お互いに羨望や嫉妬、猜疑心など
    女性特有の勝ち負け基準など
    本当に表現が上手いなあと、
    いつもの角田さんを堪能していたのですが。

    左織の成長や子育てと一緒になぞられていく昭和。
    いろいろが全く一緒ではないのですが、
    いつしか左織は私の母、百々子は私と同化していき…。

    母と娘の確執というのは、
    時代背景もかなりの影響を及ぼしているのではと。

    何事も自分で決断できない母。
    本人の性格だとばかり思ってましたが、
    もしかしたら、押し付けられ従って生きるのが
    当たり前の時代だったからこそなのかもしれないと。
    角田さんに教えてもらい、
    ちょっと母を知ることができた一冊です。

    そんな左織が家族が巣立ち、夫が先立ち
    色々考えて思い理解し、決断して自分で決めたこと。
    すごいことなんじゃないかと感動しました。

    人間は何時でも、本人が気が付きさえすれば
    意思を持って漕ぎ出せるようになれるんだと
    勇気が湧いてきました。

    それと私も、意地悪な人、ズルい人などいつか天罰が…
    と、ついついその後を見張ってしまってます。

    でも結局そういうひとはラッキーなままで
    いい人は苦労が多い人生のような気が…。
    角田さん、もしや読者である私の心を透視してる??
    ってこの作品でもゾクリとしました。

    10年ごとに、読み返したい本です。
    ひとりになった時、私は一体どう感じるのだろう…。

  • 終戦から10年後、銀座で偶然に再会した佐織と風見子。風見子は、戦時疎開していたときに出会っていたというが、佐織には思い出せなかった。ともかくそれをきっかけに二人は縁を持ち付き合うようになり、以降数十年の時を経てもつづくものとなってゆく。けれどその濃い縁は…彼女の存在は、ときに佐織を苛んでもいた。

    …対照的な女性ふたりの数十年にわたる半生を描いた物語は、さりげない時代背景の移ろいとともに、緩やかに丁寧に、人生の悲喜を描いていきます。

    絵に描いたような幸福はないけれど、どん底の不幸もない。けれど常に戦時中の出来事の不安と、風見子という特異な存在が傍にいることのコンプレックスが、佐織を惑わせる。誰よりも親しい存在が、ときにとても疎ましく恐ろしくもなる。その複雑な心情が差し迫り、じわじわと静かな迫力を感じさせてきます。人が生きるということ、生きつづけるということ、その過程のあらゆることの積み重ねの尊さ、辛さが染みわたってきます。

    じっくりと描かれた佐織の半生は、他人の架空のものであるはずなのに、確かな質量を感じさせてきて、彼女に同調した感情すら感じました。

    そして、幸せとはなんだろうか、などというふわふわした問いをふと、感じもしました。それほど寄る辺ない思いにさせる人生は、まさに水面にたゆたう笹の舟のようだと改めて思いもしました。

    また、佐織と娘の確執の生々しさ、風見子との葛藤、などの同性だからこその感情のせめぎ合いがまたじっくりと読まされるもので、重くはあれども、とても読み応えのある物語でした。

  • ちょっと直木賞受賞作「対岸の彼女」を思い出しました。

    本作品、好き嫌いが分かれるでしょうね。
    でも好き嫌いうんぬん前にまずこれを読んで思うことは「角田さんは凄みを増してきたなあ」ということです。
    すごい作家さんだなぁ、と一作ごとに感心させられるのですがこういうところに足を踏み入れたかという感慨があります。

    主人公の左織さん嫌ですね~。でもそのぐじゃぐじゃのところわかる気持ちもあります。
    風美子さんかっこいいですね~。でもそのかっこよさが疑惑を呼んで鼻につくところもあります。
    読むほうは多分どっちかに肩入れしてしまいながら読むことになるでしょうが、どっちの女の辛さもこだわりもとてもリアルに感じさせられて、楽しい話ではないのにぐいぐい読まされてしまいます。

    葬式の場面がたくさん出てきますが、葬儀の場で交わされる会話や人との出逢いや関わりが結構大きなポイントになっている感じがしますね。
    すごく考えて緻密に組み立てて書かれた話なのではなのではないでしょうか。

    日本の文学史に名を残す現代の作家さんの一人と思いますが、どこまで行かれるのか見続けて行きたい作家さんですね。

  • 「激動の戦後を生き抜いたすべての日本人に贈る感動大作!」とあるが、戦争を体験していない世代にとっても心にズンと響く物語。近年のカクタさんの長編はどうなってしまったのかと思うほどすごい。その卓越した筆力にはただただ圧倒されるばかり。

    「『本の雑誌』が選ぶ 2014年ベスト10(ノンジャンル)の第1位 獲得」だそう。

  • 今の70代以上は、激動を生きたのだな、生き延びたのだな、と改めて思う。

    「アベック」など当時に忠実な用語を注意深く用いている地の文なのに、「事務所を立ち上げた」「映りこんでいる」「完食」など、これは昭和には使ってなかったよね今の言葉だよねという用語が混ざっていて気になる。もったいない。

    戦前〜戦中の普通の暮らしが中島京子「ちいさいおうち」とするならば、戦中〜戦後のアンサーの1つがこれ、とも言えるのでは。また、時代や戦争に翻弄されるしかなかった女性たちという意味では、「屋根裏の仏さま」も思い出した。

    途中何度も、なんて愚かなのかと思ったり、そんなことしちゃ子どもに嫌がられるに決まってるじゃないと思ったり、主人公にイライラしたが、最後まで読むと、ああこれは肯定なんだ、讃歌なんだ、と気づく。

  • 純粋な親切か。それとも、遠大な復讐か。干渉と依存がスリリングにもつれ合う、対照的な義姉妹の半世紀。
    つらかった疎開生活を、風美子は人生の起爆剤に変えたけど、左織にとっては呪縛以外の何ものでもなかった。そのギャップが恐ろしい。同じ場所で同じ時間を過ごしても、必ずしも同じ思い出にならない。人の記憶はなんて残酷なんだろう。
    新しいものも、いつか古びる時がくる。彼女たちが歩んだ戦後に、時の流れの無常を感じた。

  • 疎開先で知り合い、大人になって再会し義姉妹となった左織と風美子の物語です。左織の視点で物語は進みます。

    最初のシーンから、左織の風美子に対する、訝しむような信用しきれないような思いが感じられます。その一方で、左織の古臭い常識に縛られた、時に異常とも思われる行動に疑問を覚えたりもしました。家族への過度な干渉も、周囲の目を気にしすぎるところも。左織の娘百々子は私と同年代のようで、母親や常識に反発するシーンには感情移入してしまいました。

    左織の人生を思い通りにさせてくれなかった「敵」の正体は、風美子と本音でぶつかった後に明かされます。著者の人物の描き方が細やかで、あらゆる世代の女性の感情がリアルに感じられました。とても読みごたえがありました。

  • 戦時中に疎開先で出会った二人の少女がその後、歳を取るまでを凝縮したストーリー。
    時代背景が時代背景でさほど興味持てず。
    なかなかページが進まなかった。
    でも角田さんの描写は好き。

    もう少しミステリー的な要素がラストにあるのかと思いつつ読んでたけどそれはなく。
    だけどいろいろと思う事があった作品でした。
    奥が深い。

  • 角田さんはどうしてこんな小説が書けるんだろう。
    心がぎゅーっと絞られるように辛く泣いて泣いて、でも最後には救ってくれる。

    私も忘れられない記憶があって、でも忘れていることの方が多くて、その空白の時間に自分が何かひどいことをしたんじゃないかと怖くてたまらなくなることがある。
    親や友達に好かれたい褒められたいと思い行動するのは、その不安とバランスをとろうとしているのかな。

    角田さんの本を読むと、本の感想じゃなくなって人生を振り返ってしまう。
    それにしても、ここ何年か、作風変わってきたよなあ。前から好きだったけど、最近のは特に好き。

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笹の舟で海をわたるの作品紹介

疎開先が一緒だった縁で義姉妹になった主婦の左織と料理家の風美子。人生が思い通りに進まないのはこの女のせい? 著者が挑む、戦後昭和を生き抜いた女たちの物語。

笹の舟で海をわたるの文庫

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