長篠の四人 信長の難題

著者 :
  • 毎日新聞出版
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108162

作品紹介・あらすじ

武田"最強"騎馬軍団VS織田・徳川"即席"鉄砲隊。信長の無茶振りに悶絶する家康、秀吉、光秀。長篠の戦い四人の名将たちの苦闘を笑いと悲哀たっぷりに描く抱腹絶倒!戦国喜劇。

感想・レビュー・書評

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  • 徳川家康を主人公として長篠の合戦を描く歴史小説。四人は家康、織田信長、羽柴秀吉、明智光秀である。特に明智光秀の描写が注目される。多くの作品では光秀は知的で冷静なキャラクターとして描かれるが、この小説の光秀はちゃらんぽらんな性格に描かれる。

    光秀は長年牢人していた人物である。加えて「あの織田信長が異常なまでに出世させるほどに、信長と気の合う傾き者だった」(116頁)。ここから、ちゃらんぽらんとする設定にも説得力があり、光秀の人物像が深化している。

    長篠の合戦では三段撃ちがあったのか、なかったのか議論される。三段撃ちそのものは信長の独創ではないとする説もある。信長の凄さは膨大な量の弾薬を用意したことである。大量の弾薬がなければ鉄砲を撃ち続けることはできない。それを実現したことが長篠の合戦の勝因である。武田勢は鉄砲を軽視して騎馬戦に固執していた訳ではなく、鉄砲の数は武田軍も織田徳川軍も同程度であった。しかし、弾薬は豊富ではなかった。

    『長篠の四人』は長篠の合戦だけでなく、三方ヶ原の戦いなど武田との因縁を描く。三方ヶ原の合戦で家康が出撃した背景には諸説がある。
    第一に信盛ら織田勢は籠城を主張したが、武田軍の素通りに怒った家康が出陣したとする。
    第二に家康は籠城するつもりであったが、家臣達が三々五々出撃し、小競り合いが起こり、家康も出陣せざるを得なくなったとする。この説に立つと、家康が描かせた「しかみ像」は血気にはやった自分への戒めではなく、命令を聞かなかった家臣団へのあてつけと嫌がらせになる(鈴木輝一郎『長篠の四人 信長の難題』毎日新聞出版、2015年、48頁)。
    第三に武田軍は岡崎城を攻めようとし、岡崎城を守るために家康は出撃せざるを得なかったとする(NHK大河ドラマ『どうする家康』第17回「三方ヶ原合戦」)。
    第四に救援に来た信長の軍勢を救うために出陣したとする。この説では信長が大軍を率いて浜松城の後詰めに出陣したとする。信玄は直接信長の軍勢を攻撃しようとし、織田勢を救援するために家康は出陣した。信盛らは織田の本隊を救援するために家康の出陣を求め、逆に家康が出陣しなければ織田への裏切りとみなされる状況であった。家康にとっては無謀ではなく、やむにやまれない出陣となる。

  • いやーん、阿部ちゃん…じゃなくて武田信玄、もう死んでる!
     地の文中の「ものすげえ」って表現が、目立って気にかかるんだけど…。結構何度も出てきました。

  • 歴史は人が作る、こうだったのではが面白い

  • ハチャメチャだけど、人間臭くて面白い。

  • 一般的な視点とのギャップが楽しい。とくに光秀のキャラ。
    姉川と金ヶ崎も読もう。

  • 令和になって見つけた鈴木氏の書かれた面白い歴史小説の「四人シリーズ」の三冊目です。今回は、この合戦で戦闘の形を変えたともいわれるくらい有名な「長篠の戦い」」です。

    この戦いにも、あの四人(信長、家康、秀吉、光秀)が揃っていたということなのですね。光秀まで本当にいたかは置いといて、その他の三人については当事者だったので、その人たちの心境がこの小説に描かれているので、それを楽しませてもらいました。

    どの歴史小説を読んでも感じることですが、信長の下に仕えていて、その中で出世した人たち(特に秀吉、光秀と、それらに仕える重臣たち)の苦労は想像して余りありますね。家康の場合には、重臣たちが離反しないように苦労をした様子がうかがえます。徳川家康というのは、江戸幕府を開いた、その後大御所になって院政をした、というイメージが私の中で強かったのですが、若い時に苦労した家康の姿がイメージできて良かったです。

    以下は気になったポイントです。

    ・木阿弥は、筒井順慶が成長するまでの間、父の筒井順昭に化け続け、家臣団は内密に幼君順慶を補佐した。信長の上洛する2年前に、木阿弥は影武者の任を解かれて、一介の僧侶へと戻った、これが「元の木阿弥」である(p49)

    ・戦国時代、領民は外敵から守ってもらうために領主に納税している、軍事・外交・警察・治安は、政事をつかさどる者の最低限の義務である(p51)

    ・長篠の戦のころ、徳川家康の版図である、三河は35万石、遠江は36万石、信玄の概算合計76万石と同等レベル(p64)

    ・織田信長は実によく負ける、連戦連勝だったのは、尾張を家督相続し、家臣団から反乱されて尾張を統一するまで、桶狭間の戦いの後は、よく負けている(p79)

    ・美濃の国主になるのに、12年の歳月と5回敗北、勝利は2回のみ、浅井長政を相手にしたときも、勝ったのは姉川の戦い(1570)と、小谷城攻め(1573)の2回のみで、それ以外では負け続けた(p80)

    ・人間は損を嫌う、予測できるの損の倍以上の利が得られる保証がないかぎり、決断はしないもの(p99)

    ・馬一頭で運べる荷物はおよそ90キロ、一両とは本来、金額の単位ではなく、重さの単位。馬の背にくくりつけた革袋2つは、2400石分=2400両(1両=0.0375キログラム=18.75万円)は、徳川の作戦行動費用の3か月分と少しである(p104)

    ・城に備蓄している兵糧の数量が最高軍事機密である理由は、それがばれると籠城に耐えられる期間が判明してしまうから(p137)

    ・軍勢の力は数に比例し、速さの自乗に比例する、同じ速さで進むのなら7分の1でも、3倍の速さで動けば戦力は上回る、勝てるかどうかわからないときには、早く合戦場に着いた者が勝つ(p146)

    ・家康は、三方ヶ原では信玄に負けたがそれ以外ではあまり大きな敗北はないが、勝頼には負け続けている(p156)

    ・江戸の町づくりを事実上差配したのは、奈良屋・樽屋・喜多村、といった町人であった

    ・軍事、合戦という最前線の利益追求部門だけを評価し、財務・人事・総務といった間接部門の重要性を認識できなかったところが家康の弱点の一つであった(p164

    ・戦国時代は能力最優先主義に思えるが実は違う、戦国の人事は能力ではなく、家臣団の納得と調和によって行われる。信長のようなやり方は、家康にはできない(p167)

    ・この時代、所属を明示する制服が無くてもどうにかなった、軍隊といえどっも明確な階級を決めなくても、だいたい機能した。武田の赤備えが画期的なのは、それが一種の制服であった(p296)

    ・鉄砲は野戦では補助武器以上の地位を与えられなかった、真っ先に敵を倒すのが鉄砲隊なら、うち漏らしたら真っ先に逃げ出すのも鉄砲隊だから(p208)

    ・戦傷の割合は、4割は弓矢、2割は鉄砲・槍、刀剣は1割に満たない((p211)

    ・尾張は、美濃国;不破の関、伊勢国;鈴鹿の関よりも東にあるので東国とよばれるが、西国政務をつかさどる六波羅探題は尾張以西を所管としているので、西国の扱い(p251)

    ・織田の戦法は鉄砲が最新兵器、ほぼ西国式の鉄砲戦法に統一されていたので、3倍以上の反乱軍を蹴散らせた(p251)

    ・失敗はそこから教訓を得たら失敗ではない、成功はそこに安住したら成功ではない(p304)

    2019年8月3日作成

  • 2018.2.7完了
    口語調の崩した文章は親しめない。
    四人は個性がよく表現されていると思うが、どの人間も好きになれなかった。
    不愉快とまではいかないが、また読みたいとは思わない。

  • 受難の徳川家康@長篠。
    今回も信長に振り回され、光秀にイライラして、秀吉に寄生されます。ご愁傷さま。
    この苦労は後々報われますので頑張ってください。と後の歴史を知っている立場から高みの見物です。なので、後の展開を予想させる文言が出てくるとにやにやしてました。

    次の舞台は?そろそろ本能寺?武田攻めかな?

  • 四人シリーズってシリーズ物なのは終わってから知ったんだけど普通に読んでて面白かった。徳川家康の視点で長篠合戦を描いてて、織田信長、明智光秀、羽柴秀吉との関係がコミカルでところどころ笑える。合戦の描写もなかなか。

  • 前2作に比べるとイマイチ感がぬぐえないが、信長の突発さ、秀吉、光秀ののほほんさに苦労させられる家康の困り顔がすぐに浮かぶのは筆のよさ。いやぁ、面白い。

  • 20160122読了

  • 四人シリーズの最新作らしい。初めて手にしたけど。四人とは信長、家康、光秀、秀吉。新しい視点によるキャラ造形で新鮮。そも光秀は長篠には参加していないはずだもんね。家康が信長に振り回される様を軸に語られる。「信長が評価する人物、それはとんでもなく迷惑な奴」っていう光秀像にはビックリ。

  • 長篠の戦いは、徳川家康vs武田勝頼と思っていたが徳川は、織田信長との連合軍で織田家臣、秀吉、光秀が寄り添い面白い描写で戦いを描く。徳川/織田連合3万5千で武田1万5千を大きく上回る軍勢且つ、鉄砲&弾数で上回り楽勝と感じるが信玄の強さで苦汁を飲み続けた家康にとって戦いが終わる迄勝利を信じられず気がつけば完勝で終っていた。この時期、秀吉は戦い下手な田舎っぺで、三成は年配の賭け好きな無責任親父で馬鹿実直な家康との会話が面白く描かれ面白かった。

  • ご本人も後書きで書いてある通り、「歴史」小説でなく、歴史「小説」。

    長篠の戦に関わる有名な4人の武将の気持ち?や関係をコミカルに描く。信長はなんだか憎めない、自分の功績を自慢する可愛い子供みたい。秀吉は、鬱陶しいくらい暑苦しいキャラ。家康はただただ普通で、他の3人に翻弄されて、お気の毒といった感じ。面白いのが、光秀。度胸がありすぎて、大胆な振る舞いが笑える。でも、ベースラインは史実に基づいていて、光秀が戦争にも長けているから出世したって書いてあったり、信長がとりたてた位だから、光秀も傾奇者に違いないとか言われると、そうかもと思ってきてしまう。

    私の好みではないけれど、これはこれでありだなと思った。

  • 「織田の味方を一人も損ぜずに武田に勝て」
    強敵武田勝頼軍が迫るなか、信長から次々と無茶振りされる難題にふりまわされっぱなしの家康・秀吉・光秀の三人。勝頼軍一万五千が待ち構えるなか、戦国武将の意地をかけ家康が下す決死の決断――。

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著者プロフィール

1960年岐阜県生まれ。94年『めんどうみてあげるね』で日本推理作家協会賞受賞。著書に『浅井長政正伝』『信長と信忠』『お市の方』『織田信雄』等多数。主宰する小説講座からは各文学賞受賞者を多数輩出。

「2020年 『新・時代小説が書きたい!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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