あなたが消えた夜に

著者 :
  • 毎日新聞出版
3.34
  • (34)
  • (136)
  • (165)
  • (50)
  • (10)
本棚登録 : 1198
感想 : 159
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108179

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最初は、ただ「フードの男」が起こした殺人事件を解決していくだけかと思ったら、それは虚像でしかなく、多数の人間の思惑が混じり合っていたとは。

    個人的にはとても読み応えがあった。

  • 一方の集団は損得野郎。プラグマティックに、冷徹に、システムへ媚びへつらう利己野郎。とすればもう一方はイノセント、正義、損得を顧みず利他的であるはず。
    この作品は定石であるはずのこの構図を完全に否定する。驚いた。
    登場人物はことごとくどこかしら壊れている。まるで壊れていることが人間としての最低条件かのようだ。
    正義を貫くためには精神が壊れていくのはわかる。しかしそうではなく、精神があらかじめ損なわれて傷ついていないと正義は成しえないという前提にまで持っていく。
    あくまでも虚構としてのカリカチュアであるが、果たして現実とどれだけ乖離しているかを考えると空恐ろしくなる。
    愛や正義や自由や平等をうたっていくには壊れるしかない、もしくはすでに壊れているのかもしれない。
    女刑事に救いと曖昧さを残すべきだったのではないか。魅力的な不思議ちゃんとして、どうみても、どこかおかしいのだが、過去は明らかにせずにすべきではなかったか。
    そうすればこの女刑事は「神」を纏うことができたかもしれない。救いを担えたかもしれない。パフェ好きの神なんて今時じゃないか。

  • 警察小説だろうが、ミステリーだろうが、純文学だろうか
    中村文則さんの小説は特別、
    人間の悪、恥、悲しさ、苦しさが、ずんずん胸にくる
    罪を犯した人間、踏みとどまる人間の心の叫び、闇を
    感じて、身震いする。凄まじい。
    何かに感染したように、夢中になって読み進めてしまう
    今回は、最後の最後に少し気持ちが救われたのが不思議な気持ち
    警察官のコンビの不思議で異常なやりとりも面白いという
    ただただ救われない小説ではないのよね、中村文則作品は
    決して読後感がよくはないけど、また読みたいと思うのは
    人にはいえない裏の顔は誰にだったあるんだなとか
    ちょっと共感しちゃうところもあるからなのかな

  • 面白かった。「教団X」と「私の消滅」の間の作品で、3部作とあとがきにあったので借りてみた。内容はつながってないけど、虐待、神、洗脳、狂気がテーマだと思う。狂った人が大勢出てきた。性的虐待がどれだけ人を壊すか。性的に限らないだろうけど。ほんと子どもは親を選べない。登場人物が多く、途中ごっちゃになった。中島と小橋の刑事コンビのおかしさをもっと掘り下げなくていいのか。あっちこっちいき過ぎのようにも思う。人を殺すというのはやっぱ狂うというか、飛び越えないと無理だよな。

  • 推理小説、ミステリーとして魅力的な設定で、よくできていると思います。特殊能力に頼っているところが不評なのかな?

  • 約1年近く積読になってました。じっくり時間掛けてようやく読み終えました。第1章・第2章と事件を追う刑事ミステリーな展開で話が進んでいき、第3章でがらっと物語が異なる角度から照らされたように中村さんらしさが色濃く感じられる展開になってそこから第1章・第2章と物語ががっちり繋がっていく流れに引き込まれて一気に最後読み終えました。生きにくい世の中でも最後の終わり方に光を感じられました。タイトルの意味がすとんと胸に落ちた瞬間涙が出そうになりました。

  • 圧倒的すぎる。あまりにも圧倒的な中村文則の小説世界に酔いしれた。完璧といえる作品ではないとは思うが、完璧がなんぼのもんじゃい!と言っている作品であると思う。とにかく小説として面白い。ちょっと浮いた感もあるが、中島刑事と小橋さんの怪しくもユーモラスな会話も微笑ましいし、次第に立ち現れる、迷宮へ堕ちていくような謎の数々、からの、圧倒的なモノローグで語られていく解答編への構成が憎らしいほどうまかった。しかも、これほどまでにダークな世界観にも関わらず、ラストでは泣いてしまうという。。。
    これまで僕が読んだ中村作品では、心の深淵をかなり深いところまで覗き込みながらも、最後の最後で浮上してしまっていた感覚があったが、この作品は違う。深く深く、深淵の底に辿りついている。そこから見える景色が語られている。人の心の深淵は、こんなにも暗く、そして冷たい。
    しかし、いや、だからこそ。
    そうでないものに敏感になるのだろうな。
    僕にとっての「あなた」とは誰だろう。

  • 彼の文章には重力がある。深い底へと引きずる力。[去年の冬に君と別れ]では不十分だったものが完成しつつあると思った。
    前半は刑事目線の事件を追う展開、後半は思いもよらない犯人の独白。ドフトエフスキーをまともに読んでこなかったことを悔いた。

  • 「掏摸 」を読んだとき、著者の才能を見せ付けられたと感じたが、この作品はさらにパワーアップしたようだ。どこかドストエフスキーの「罪と罰」を彷彿させるものがある。しかし世界観は著者独自のものだと思う。警察小説の形は取っているが、決してそれだけで終わらない、人間の本質に迫ろうとする姿勢が読む者を惹きつける。

  • 狂気を書かせたらこの人は世界一なんじゃないかと思った。帯に書いてあった通り、「圧倒的人間ドラマ」と言うのがしっくりくる。
    読めば読むほど事件は深く入り組んでいて、全く真相がつかめなかった。

著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中村文則の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×