東京會舘とわたし(上)旧館

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著者 : 辻村深月
  • 毎日新聞出版 (2016年7月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108216

東京會舘とわたし(上)旧館の感想・レビュー・書評

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  • 始めは淡々とゆっくり読んでいたが、「灯火管制の下で」が物凄く私の好みで東京會舘に惹きつけられた。

    親同士が決めた殆ど会った事のない相手との結婚…相手はどんな人だろうと結婚式の最中にだって考えてしまう。不安になる、逃げ出したくなる、乙女だもん。
    そんな静子の側にずっとついていてくれた遠藤さん、最後は静子の手をしっかり握って幸せまで祈ってくれた。どれだけ心強かっただろう。
    遠藤さんは職人なのだ。東京會舘で働く人たちはみんなそう。決して妥協をしない職人のこだわりが胸を打つ。

    「灯火管制の下で」の中で出てきた玉音放送についての話が興味深い。
    『しかし、それがまさか戦争の終わりを告げているとは、夢にも思わなかった。』
    戦争が終わるという事が考えられない時代。玉音放送と言えばみんな聴きながら泣き崩れるものと思っていた私には衝撃だった。
    生まれた頃から戦争が起きていて平和な暮らしを知らない人たちがいた。戦争を知らない私がその人たちの苦しみをわかってあげられるはずもなく… 。今このような作品を読める事が本当にありがたい。

  • ★4.5

    ここは夢が生まれる場所…。
    東京會舘の歴史に纏わる大正12年から昭和39年までを描いた5つの連作短編集。

    ・クライスラーの演奏会     大正12年
    ・最後のお客様         昭和15年                
    ・灯火管制の下で         昭和19年
    ・グッドモーニング、フィズ    昭和24年
    ・幸せな味の記憶        昭和39年

    皇居の隣、ちょうど二重橋の正門の真向かいに大正十一年。
    国内で初めて民間の力でなる社交場。東京會舘は創業した。
    完成してわずか10ヶ月後、関東大震災で被災。
    太平洋戦争前、大政翼賛会の本部として徴収される。
    大政翼賛会とは、近衛文麿が初代総裁を務め、東条英樹がその後を継いだ公事結社。
    戦争が終わると、今度は米軍の高級将校の宿舎兼クラブとしてGHQの接収。
    百年の歴史を持つ会館が、歴史に翻弄された過去と共に、
    その時代に会館で働いていた人の仕事に対する誇りや熱い思い。
    訪れた人の思い出…。
    會舘に対しとっても深い愛情を感じ、どの章を読んでも胸が熱くなり、心が震えました。

    各章ごとに主人公がいるのですが、その主人公が別の章で年齢を重ねて
    再登場するのは、とっても嬉しかった♪
    時を経た彼らに再会出来た喜びとともに、時間の流れや積み重ねをより深く感じる事が出来ました。

    長い歴史を持つ東京會舘。
    ここで働いていた人の一人一人に、そして訪れた人の数だけ物語があると思います。
    創業当時の写真をネットで拝見しました。
    とってもモダンで可憐で素敵な建物でした(*´∇`*)
    下巻は昭和51年から平成27年…下巻もとっても楽しみです*˙︶˙*)ノ"♡

  • 何も知らなかった。
    大正11年創業で、丸の内に建っているということは
    こんな激しい歴史の流れの中にあったということを…。

    名前だってコロコロと変わり
    その度に不安がうずまく環境の変化があったというのに
    この働く人たち、利用する人たちの溢れる會舘愛は
    どこから沸いてくるのだろう。

    東京會舘旧館時代の物語。

    いちいち驚きました。
    旧館の5編は、時代背景が全く異なるのですが
    働いている方々に流れているものは
    全く変わらないんです。

    『社交の民衆化』
    私たちに開かれた場所。

    どの話も大好きですが、
    第五章の「しあわせな味の記憶」で
    持ち帰りができるお土産お菓子の商品化で
    事業部長が語る商品化したい理由にしびれました。

    東京會舘とほとんど接点がない私が
    これぞ東京會舘!と膝を打った一冊です。

    パピヨンとガトーは新・新館が完成したら
    絶対に買いに行こうと思います。
    あ、ガトーアナナも☆

    會舘の舘の字は創業当時からのものだとばかり
    思ってました。この字にも会いに行きたいです。

    それと…話がそれますがタイムマシンがあったら
    関東大震災後の東京會館の
    改築工事をしている清水組に
    差し入れを持って、お茶を入れに行きたいです。
    惚れます。清水組の心意気も。

  • 東京會舘を舞台とした連作短編集。
    旧館の1923年~1964年までの一場面を切り取った短編5作。
    ひとつの場所を舞台にした連作短編集というと「本日は大安なり」が思い浮かぶ。そちらが大好きだったので、傑作の予感しかなかったけれど、やっぱり思った通り私的には大ヒットでした!

    以下ネタバレ大

    クライスラーの演奏会
    田舎に引っ込んでいた作家志望の青年が忸怩たる思いを抱えて聞いたクライスラーの演奏会。
    最後のお客様
    クライスラーの演奏会に出ていたボーイの青年が時を経てベテランの黒服として、戦時下で政府に徴用される最後の日。
    灯火管制の下で
    1944年。戦時中に行われた結婚式。その花嫁の式は東京會舘のスタッフたちに暖かく見守られたものだった。
    前作でちらっと出てきた美容部の3代目遠藤波津子が印象的に出てくる。また、前作の佐山も要所で登場。
    グッドモーニング、フィズ
    戦後、GHQに接収され、アメリカ軍の為の遊興場として提供されることとなった東京會舘。そこのバーで働き始めた若いボーイが今も残る「グッドモーニングフィズ」というカクテルを作るきっかけとなる話。
    しあわせな味の記憶
    製菓部部長。こわもての勝目が頼み込まれて持ち帰り用の菓子を作る話。今も名物として残るパピヨン。ガトーアナナなど。

    どのお話も秀逸で。東京會舘を愛した人たちが會舘を訪れる人のために尽力したお話。

  • 上巻は東京會舘の開館当時から東京オリンピックの年まで。
    辻村さんの思い入れも含めとても丁寧な作品だと思った。とても「東京會舘」を大事にしている。それは登場人物に凄く反映されていた。
    著名人たちが使用したと有名な東京會舘であるが支えているのは無名であるけれどその仕事にプライドを持っている人たち。
    皆輝いていた。
    作家、同僚、夫婦、キャストとゲスト若しくは會舘でただすれ違った人々。
    皆何処かで繋がっている。
    一つの物を何年も何人の手によって大事にされる。
    当たり前の様で最近はそれがなかなか難しい事になって来てるな。と思った。
    ガトーアナナ、食べてみたいな。

  • 皇居のお堀端に建つ、宴会場・レストランを舞台にした歴史物がたり。

    大政翼賛会本部が、このビルに置かれていたのは、不勉強ながらこの作品を読むまで知りませんでした。近傍の第一生命ビル・明治生命ビルが、GHQに接収されたことは知っていたんですけどね。

    実は、東京會舘は、前を通りすぎたことは何度もあるんですが、中に入った事はないんですよねぇ。この作品を読んで、いっそう興味をひかれました。

  • 旧館編。大正時代、庶民も社交を楽しめるようにと建てられた東京會舘での様々な物語。スタッフの成長や訪れる人たちの心持ちが丁寧に描かれている。戦争をくぐり抜け生き延びてきた激動の時代を、静かに見つめ続けてきた東京會舘を様々な角度から描く。特別な場所なんだなということが伝わってくるお話。行ったこともなく、この小説で初めて知った所なので、イメージが追いつかなかったのが残念だけど、誰にもこんな場所ってあるんだろうな。

  • 大正時代に、上流階級のみならず庶民の文化交流の場として建てられた東京會舘。
    その後戦争を経て、大東亜會舘と名称が変わったり、GHQの傘下に置かれたりしながらも、あくまでも訪れる客に寄り添い続ける東京會舘を舞台に、訪れる人、ここで働く人の視点から東京會舘でのエピソードが描かれる連作仕立ての小説。上巻は「旧館時代」が描かれていく。
    細やかにお客様を迎えるスタッフも、ここに憧れて足を運ぶ人も、ひとりひとりにかけがえのない想いや誇りがあり、まさに「東京會舘とわたし」というタイトルが、シンプルだけれどこれ以上ないほどにぴったり。

  • 東京會舘を舞台に時代の流れと人の思いが繋がっていく。大正から昭和の激動の時代。どうなるのか分からないけど必死に生きてく、強い思い。東京會舘を訪れたいし、出てくるパイを食べたくなる。

  • 建物に歴史あり。
    訪れる人と迎える人とどちらの目線からも愛着を感じ、そこに時代を重ねて作られた重厚さなんだな、と。
    裕福な人にも普通の人にも等しく特別な場所だからあたたかく感じられます。

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