- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620108223
感想・レビュー・書評
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『辻村深月さんコンプリート大作戦#5』残り4作品です
東京會舘という場所と人の物語
直木賞・芥川賞の授賞式に使われていた場所なんですね(現在は帝国ホテル)
全然知らなかった
直木賞といえば長い間ひまわりめろんさんとは相性の悪い賞として知られてきました(知らんわ)
もちろん芥川賞作品に至ってはもう「うへ〜」だ
純文学「うへ〜」派の急先鋒と言ってもいい
だいたい純文学って何よ!って思うのさ
「一般的に純粋な芸術性を目的とする文学」とされています
だそうです
ちーっともわからん
対義語として「大衆文学」(こっちが直木賞)があるらしい
うーんでもさでもさ「坊っちゃん」とか「雪国」って大衆に向けて書かれたもの違うのかな?違うのかな〜?(なぜ2回言う)
なんていうんかな
純文学とされている作品群がだめなんじゃなくて
純文学って言葉がなんか嫌なんよな〜
ってか違うよな〜って思っちゃうんです
小説ってさ
ちょっとくらい濁ってないと面白くないじゃん(たぶんそういう意味の「純」じゃない) -
『東京會館』と聞いて私が思い出すのは、クッキーだ。私がクッキー好きなので、昔、出張のお土産によく東京會館クッキーを買ってきてくれた女性がいた。『この一袋じゃ、すぐになくなっちゃうね。』と言われ、全くその通りなので、どのように答えていいか迷ったものだ。
私自身は、パレスホテル、帝国ホテルで宿泊したことはあっても『東京會館』には、行ったことがなく、このクッキーで初めて『東京會館』を知った。なので、私には『東京會館』と言えば、お土産のクッキーであるが、馴染みのある方には沢山の想い出があるのであろう。本作を読み終え、『東京會館』がますます素敵な場所に思え、そんな所に沢山の想い出がある方が羨ましいと思った。
さて、本作、下巻は昭和後半から平成の建て替えまでの東京會館と人々の歴史が語られている。
第六章 金環のお祝い
昭和51年(1976年)1月18日:
夫を亡くしてから引きこもりがちであった茂木芽衣子が、お茶の先生が『東京會館』で開く新年のお祝いの会に参加する。金環式の日に久しぶりに訪れた『東京會館』で過去の夫との会話、想い出を巡らせる。
建て替え前の『東京會館』の想い出は、夫との想い出。建て替えによりそれが想い出で終わってしまうのではなく、新しくなった『東京會館』で、さらにその過去が色濃くなる。変わらぬサービスと新館に残された旧館の歴史によって、芽衣子の『東京會館』の記憶に新たに新館の記憶が加わり、旧と新を繋ぐ線が見えた気がした。
第七章 星と虎の夕べ
昭和52年(1977年)12月24日:
毎年恒例の越路吹雪のクリスマスディナーショー。人見知りな性格の志塚徹平が、営業事務所に移動になり、初めてのこのショーで、越路吹雪とマネージャーの岩谷時子に出会う。
芸能人は、舞台慣れしてる。それまでは、そう信じていた。越路吹雪さんは宝塚歌劇団卒業後に芸能界入りしているので、なぜ、そんなに緊張するのか不思議に感じる。が、しかし舞台が始まった時の度胸とのギャップに、さすが芸能人だと、そしてだからこそこの方は一流で、人気があったのだろうと思わずにはいられない。越路吹雪というスターの凄さを感じた。
だから越路さんのショーのお世話をすることになった志塚も私と同じことを感じたに違いない。
そして、志塚の上司・原田は、ホテルマンとしての対応は、志塚の教育なのだろう。『東京會館』のおもてなしの高さは、代々の先輩ホテルマンから後輩につながっていくのだと思えた。
第八章 あの日の一夜に寄せて
平成23年(2011年)3月11日:
婚約中に夫・三科敏美から「東京會館のクッキングスクールに通ってくれないか?」と言われて通い出した妻・文佳。東日本大震災で、東京會館で一夜を過ごした文佳が、クッキングスクールに通学していた頃を回想する。
この章で一番納得したのは、現在クッキングスクールに通う敏美の師である梅崎先生の言葉である。「自宅で料理する限りは、絶対に奥さんに迷惑をかけないこと。その覚悟がなければ、作った料理がどれだけ美味しくても、2度目からは嫌な顔をされますよ」。その言葉の具体的な梅崎流行動指針を知った時、納得し、その教えを実践した敏美に微笑んだしまった。
第九章 煉瓦の壁を背に
平成24年(2012年)7月17日:
5回目の選考にてようやく直木賞受賞となった作家・小椋真護。小椋の作家志願を反対する家族との決別。直木賞受賞を目指した道のりは遠く厳しいものであった。
直木賞受賞の記者会見で、受賞作家の背後を飾る煉瓦の壁。シルバールームのこの壁が歴代受賞作家を背景となる。
十代の小椋青年のモチベーションは、東京會館で両親と食事をした昔に見たその部屋にいる自分の姿を重ね続けたからである。きっと、そうだと思う。
受賞後の東京會館の渡邉から明かされた言葉によって、この先、小椋と両親との壁が低くなって、行き交うことができるようになることを願う。もっと遠くの未来にそのことを後悔しないように。
それにしても東京會館の「お帰りなさい」は想い出を持って會館を訪れる人には殺し文句だ。
第十章 また会う春まで
平成27年(2015年)1月31日:
上巻の第三章で登場した関谷静子の孫・中野優里の東京會館の新館の最後の日、1月31日の結婚式。この後、2019年まで建て替えのために休館となる。
太平洋戦争、第二次世界大戦、関東大震災、東日本大震災…その歴史は、平穏な歴史ではなかった。それでもその歴史に流されて時を重ねてきたのではなく、『東京會館』で働く人たちの心と建物が一つとなって『東京會館』の歴史を綴ってきたように感じる作品であった。
今はコロナ禍で東京には行けないが、落ち着いたら、『ツバキ文具店』の舞台である鎌倉と『東京會館』に行きたい。
そして、こんな風に想い出を作ることができる場所を見つけたいと思える作品であった。 -
下巻読了。
この巻は昭和51年から平成27年までの新館(2019年に再建て替えの前までの建物)を舞台にした第六章から第十章までの、五篇の物語が収録されております。
昭和五十一年。亡くなった夫と旧館での思い出を胸に、「金婚式」を1人で祝う老婦人を描いた第六章「金環のお祝い」
昭和五十二年。シャンソン歌手・越路吹雪さんのディナーショーの裏側と新人従業員とのエピソードが微笑ましい第七章「星と虎の夕べ」
平成二十三年。東日本大震災の当日。不安な夜を〈東京會舘〉で過ごす事になった女性と、クッキングスクールの思い出を描いた第八章「あの日の一夜に寄せて」
平成二十四年。上巻のプロローグに登場した作家・小椋真護の両親との確執と、直木賞受賞までの物語・・第九章「煉瓦の壁を背に」
平成二十七年。二度目の建て替え前の〈東京會舘〉“最後の日”の結婚式の様子を描く第十章「また会う春まで」
上巻よりも歴史的な説明が減ったおかげか、各章一つ一つのエピソードの“人間ドラマ度”が濃くなった印象を受けます。
どの話も心に染み入るものがありますし、何といっても登場する〈東京會舘〉のスタッフの方々が本当、神対応なんですよね。
勿論フィクションではあるのですが、巻末の「謝辞」を読むと実話のエピソードもベースになっているようですし(多分)、第八章の(東日本大震災当夜の話)冒頭のお手紙も実際に〈東京會舘〉に宛てたお手紙が元になっているとの事でしたので、その辺も素敵だなぁと思いました。
そして、個人的憶測ですが、辻村さんがこの話を描く為に〈東京會舘〉を題材にしたのでは?と思わせるのが第九章。
この作家の小椋さんて、辻村さんがモデルでしょ?と思っちゃいますよね~(まぁ、ご両親との確執部分はわかりませんが)。
直木賞の受賞連絡を待っている様子とかもリアルでしたし、万年筆のエピソードは上巻のプロローグと繋がって、胸にグッときました。
そして、第十章の、最後の結婚式の話も、上巻に登場した女性との繋がりには心温まるものがありました。
ということで、〈東京會舘〉という建物を愛する人達の物語を堪能させて頂きました。
因みに〈東京會舘〉は2019年(平成三十一年&令和元年)に二度目の建て替えをしたので、現在あるのは“新・新館”といったところでしょうか。
この作品を読んで、今度東京に行ったら〈東京會舘〉を是非訪れてみたいなぁと思いました。
勿論、お土産のクッキーも買わなきゃですね~。 -
東京會舘を中心に激動の時代と。
そこに携わる人達を描いた物語の後編。
新館は昭和後期から平成後期。
平成は東日本大震災の出来事も綴られているので、より物語の入り込む事が出来ました。
そこにある人間模様。そして最終章はあの家族が。
総じて心温まる作品でした。 -
──歴史や伝統は確かに抽象的だが、きちんと目に見える。
──それは、スタッフの在り方だ。彼らの所作を通じ、この場所に受け継がれてきたものがちゃんと見える。
変わらずにはいられない、しかし受け継がれていく。というお話。
東京會舘の長い歴史を、時代時代で通り過ぎていく人々のお話を横糸に、受け継がれていく伝統を縦糸にした、一本筋の通った物語でした。
長い時間を紡いで、登場人物たちが順に交代していく物語、好きです。そういうお話で過去の話で語られた人々が後の話に出てくるの、すごく好きです。その集大成のような最終話。様々な人生の断片が込められた建物と、それが壊されてまた新しくなって、また歴史が続いていく。
これで辻村深月四作目、ハケンアニメ、ツナグ、鏡の孤城それぞれ良かったけど、この作品はさらに良かったな…。
下巻は旧館から新館への建て替え後、二度目の建て替えをする直前までのお話。サブタイトルが「新館」なのはまさにそのままだ。
昭和51年、亡き夫との旧館の思い出を胸に、二人で迎えられなかった金婚式のお祝いにと、新館のレストランでひとり食事をする女性の話。『金環のお祝い』
昭和52年、超人気のシャンソン歌手、越路吹雪(実在!)のディナーショーを担当することになった営業員志塚の話。「決して、お客様やサービスの仕事に"慣れる"ことはやめよう」と言う心がけで何十年も仕事するという誠実さ。『星と虎の夕べ』
平成23年3月11日、震災の日に會舘に身を寄せた女性が、若い頃に通った會舘のクッキングスクールの思い出を振り返る話。『あの日の一夜に寄せて』
平成24年、直木賞作家となった男性が、會舘での贈呈式に臨んで過去を振り返る話。『煉瓦の壁を背に』。平成24年の直木賞作家というと…辻村深月さんですね。
平成27年、新館最後の営業日に結婚式をする新婦と、東京會舘を舞台に小説を書こうとしている作家と、旧館で(上巻で)結婚式をした女性の話。『また会う春まで』 -
東京會舘とわたし
正にタイトルそのままの、東京會舘に特別な想いのある登場人物たちと共に描かれている「東京會舘」。その「東京會舘」という1つの歴史が、登場人物たちの、色んな思いで繋がれている、読んでいて1つの歴史を体験できた、とても素敵で素晴らしい作品でした!
連作短編集のようですが、上巻から通して1つの作品で、それぞれの章で登場する人物が、その後の章でも登場し、繋がっていて、歴史を深く感じます。
コロナが終息し、東京を訪れる事があれば、「東京會舘」に是非立ち寄ってみたいと思いました。
今でも受け継がれている、ガトークッキー、マロンシャンテリーを、この作品を思い出しながら、東京會舘の歴史と共に味わいたいなって思います。 -
真のホスピタリティとは何か...。東京會舘にかかわる人々の思いを紡いだ下巻は、冒頭から打ちのめされる。このやり口はズルいぞ! 泣いてまうやん!
越路吹雪さんのエピソードも素敵だ。「そうやって緊張できるのも、才能のうちなんですよ」
第9章で若干黒黒となるも、結びがよく穏やかに本書を閉じる。 -
下巻の方も面白かった。
上巻と同じコンセプトで、東京會舘にまつわるショートショートです。
ただ、上巻より作者が思い入れがありそうな感じの書き方だった感じがします。
私が読み込めてないのかもしれないけど。 -
読んでみて、全然庶民向けの場として造られたとは思えない雰囲気が漂ってはいるが、今回の建て替えが終わったら、ミーハーだけど名物の一皿やケーキを食べに行ってみようと思う。
そして、一度も見たことがないのだから懐かしい〜!などと思うわけではないけれど、ここで書かれている旧館や新館の雰囲気が新新館でも継承されているのかもちょっと見てみたい。
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