記憶と沈黙 (辺見庸コレクション 1)

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  • 毎日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620317984

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  • 入門書というにはあまりにも重厚ではあるが、まだ辺見庸にふれていないという方には、必読の書である。辺見氏が何に取り組んできたのかがよくわかる。

    辺見さんは「虹をみてから」の中で、死刑制度についてこんなふうに述べている。




    いったい、忘却する者が、記憶する者を裁くことが許されるのだろうか。あるいは、忘却する側が、記憶する側を殺すことが許されるのだろうか。
    私のようにたくさんのことを物忘れしている輩や記憶のあやふやな者どもが、ひたすら記憶し、苦しみ、悔いる者、記憶の果てしない反芻を強いられている者を罵倒することができるか。
    できはしない。してはならない。(中略)
    逆なのである。私は、むしろ、カインのように悪罵を浴びなければならない気がするのだ。
    もっぱら、忘却という、無意識の殺人に等しい罪のために。殺人が記憶殺しなら、死刑という国家的殺人もまた、組織的忘却強制装置による記憶の制圧なのである。
    忘却が記憶に勝つとは、やはり、理不尽なのだ。だが、死刑執行計画は、おそらく、まだ若い国家官僚らにより、日々練られている。じつに、無感動に。


    http://ameblo.jp/use04246/entry-10059136138.html

著者プロフィール

小説家、ジャーナリスト、詩人。元共同通信記者。宮城県石巻市出身。宮城県石巻高等学校を卒業後、早稲田大学第二文学部社会専修へ進学。同学を卒業後、共同通信社に入社し、北京、ハノイなどで特派員を務めた。北京特派員として派遣されていた1979年には『近代化を進める中国に関する報道』で新聞協会賞を受賞。1991年、外信部次長を務めながら書き上げた『自動起床装置』を発表し第105回芥川賞を受賞。

「2022年 『女声合唱とピアノのための 風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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