人生は愉快だ

著者 :
  • 毎日新聞出版
3.93
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本棚登録 : 294
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620319155

作品紹介・あらすじ

昨春、この世を去った著者の最新作は、死から始まる生の考察。釈迦、ヘーゲル、一休など、古今東西の思索者たちは死をいかに考え、どのような言葉で語ったか。著者ならではの、意表をつく「人生相談」も冴え渡る。生と死の両極に奔出する言葉が語る、人生の味わい。著者が温め続けた未発表原稿、ついに刊行。

感想・レビュー・書評

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  • 池田晶子の言葉は力がある。

    読んでいくうちに、それがなぜかがわかってくる。
    考えているからだ。すなわち、哲学をしているのである。

    少し自分が恥ずかしくなる。留学で海外に来て、かなりの時間が経った。成長はしていると自覚する一方で、その成長のスピードは鈍化している気がする。英語だと、考えるのが面倒になってしまってやめてしまうことがあると気づいた。

    この本では、「自分なんてものはない」といった彼女の考えが述べられている一方、何かの雑誌の連載だったと思われる人生相談のパートでは、彼女の人間臭い一面が読み取れる。しかし、そこでも考えて行動している。そして、言葉を大切にしている。

    今のところ、最も気に入ってるのは、
    年を取ることを反価値とするのは、肉体にしか価値を置いていないから。しかし、精神の側を価値とするなら、年を取ることそれ自体が価値になる、という部分。(要約)
    今年で30になり、あぁもう30かという思いがある一方で、この歳になってから見えてくるものもたくさんある。周りに若い人が多いので、自分が「おっさん」であるような気もしてくる。でもおっさんで何が悪いのか。おっさんになることが悪いのではなく、なにもせずにおっさんになることが悪いのではないか。それなら、精神が成熟していく過程を楽しみながら、年を取っていこうではないか。

    人生というものは考え方一つで幸せになるもので、本書はそんな人生にするヒントを提供してくれる。

    全ては通読していないが、ざっくりと読んだ。私は、彼女の本は、ふとした時に開いて目に入ったところを読む。はっとする言葉が書かれている。

  • 最近電車内で読んだRICOHのCMコピー
    退屈なのは
    世の中か、
    自分か。

    プロローグで自分の側の心の構え。
    という部分を読むと、自ずと退屈なのは自分。
    ということになる。

    1章は哲学者毎に章立てされており読み易いが、
    内容は難解である。

    分かりっこない先の事を、あれこれ思い煩うから、
    人間は不幸になっている。

    2章の人生相談は非常に読み易い上、
    質問内容が身近なので興味を持って読み進められる。

    再読したい良書。

  • 池田さんの未発表原稿。第2章のQ&Aをまとめたところが面白い。ハナコ読者の質問を一刀両断にする回答が痛快。

    [private]以下 注文点
    ・「誰にとってもそうであるところの考え」は、したがって、自分一人を超えている。それが自分を超えていることを知っているから、人は自信を持てるのですよ。P.202[/private]

  • 生きるために必要なのは言葉であって金ではない(^o^)/年ばかりとっても中身は空っぽにはならない(^o^)人生に酒という友を\(^_^)/

  • 前半の哲学者たちが死について語った部分の総まとめは、正直よく分からない。
    まず哲学用語が分からないし、哲学界では常識であろうことも分からないからである。
    そんな偉大な哲学者たちを、彼女はバッサバッサと切り捨てていく(ように感じる)。分からなくてもなんとなく爽快さを感じる。
    後半は一転して、やたら分かり易い。彼女の死後に出版されたからだろうが、なんともアンバランスな編集。

    彼女の本は2冊目だが、【死】について憑り付かれた様に繰り返して書いている。
    もちろん死を考えることは【生】を考えることだから、マイナス思考どころか超プラス思考の彼女である。
    彼女のいう死は存在しないというロジックがようやく分かった気がする。
    過去も未来も無く、在るのは現在だけだというのはぼくが考えていることと一致する。

    しかしナンだなぁ~~、哲学なんて男向きの学問をこんなにも好む女性は他に居ないんじゃないだろうか。
    哲学という硬い分野を軟らかく料理したのは彼女の功績だろう。
    哲学は論理的な脳を持っていなければならないが、女性であるがゆえに感性で理解していることが見受けられて面白い。
    哲学という学問の枠を超えて、考えることの楽しさに身を任せる姿が実に好印象というか、愛らしい。

    47歳という若さで死んでしまった彼女、生の先にある世界を楽しんでいるだろうか。

  • 会社に来ているコンサルの先生がお勧めしてくれた本ですが
    私には難しくて全部は読めませんでした。

    様々な哲学者、思想者たちの「死」についての考えを、
    分かりやすく書いてくれているとは思うのですが
    それさえ理解できない。

    人生相談は痛快ですが、ブログ、バッサリ切り捨てられてるし(^^;)
    こんなレビューでごめんなさい。

  •  著者の哲学的確信が、率直に伝わってくる。人類が持った偉大な思想人を束にして、私たちに核心を提示してくれる。私は、著者から、ひょっとして哲学することは“面白い”と感じさせてくれた。もっと早く出会いたかったとは、能力のない者のぼやきでしかない。直観的な文章が多く、その思考をたどることが難しいきらいがありましたが、この文章には素直に核心に触れさせてくれる力がありました。人生相談はよくわかりませんが、諧謔と逆説のテクニックは面白く、第三部のエッセイは凄味がありました。

  • 2011.10
    人生は愉快だ
    般若心経 言葉は語らないためにこそ語っている
    名が万物の母だ 老子
    生死とはそれ自体が言葉であると知ることこそが、道を知るというそのことなのだ
    今の神秘に徹するなら時間すらが迷妄であるゆえに死と死後は問題になり得ない
    荘子 生と死の論理構造は夢と現実の論理構造に等しい
    孔子 生も死もわからないものなのだ いや、わかるとはどういうことなのかがわからないのだ わからないとわかるためには考えろ 考えながらと生きることに意を注げ

  • エピローグ―無から始まる思索 がよい。

    死は人生のどこにもない。そう認識すれば、現在しかない、すべてが現在だということに気がつくはずです。・・・しがないと分かった時、時間は流れなくなるのです。そうすると、現在しかなくなってしまう。そうなれば、過去もこの現在のあるということに気がつく。それが、年齢を重ねることの面白さでもあるのです。現在という瞬間に時間が層をなしている。
    近代以降の人間は個人というものを信じ込んでいますが、個人なんて、本当はないのです。自分がこの肉体でこの某でと思ってしまったから、人はどんどん小さくなっていった。そう思ってしまったから、自分が死んでしまうのが恐いとか、これだけが人生だという話になってしまったのです。
    しかしそうではない。「自分」とは、そんな個人に限定されるものではなく、人類や精神、宇宙とは何かという思索のなかで存在する不思議なものなのです。そういう自分を感じることを現代人はすっかり忘れている。それは非常にもったいないことだと思う。
    「さて死んだのは誰なのか」

    死んでからでも、本は出る!

  • おおまかな哲学史(というか著名な哲学者の死生観)と彼女らしさ全開の人生相談とゆるゆるとしたコラムの一粒で3度おいしい。彼女が亡くなった後も、彼女の愛犬が幸せでありますように。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。文筆家。専門用語による「哲学」ではなく、考えるとはどういうことかを日常の言葉で語る「哲学エッセイ」を確立して多くの読者を得る。とくに若い人々に、本質を考えることの切実さと面白さ、存在の謎としての生死の大切さを語り続けた。著書多数。2007年2月23日没。

「2022年 『言葉を生きる 考えるってどういうこと?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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