さらばアホノミクス 危機の真相

著者 :
  • 毎日新聞出版
2.93
  • (0)
  • (5)
  • (5)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 66
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620323442

作品紹介・あらすじ

もはや経済政策にあらず!「強い国」の危険な正体!今、決別の時。ブレない経済学者が混迷深まるアベノミクスと世界経済を一刀両断!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 浜矩子さんの言いたいことは、「はじめに」のここでとりあえず言い尽くされているだろう。

    経済活動は人間の営みだ。経済活動に携わる生き物は人間しかいない。そのように人間の固有の経済活動が、人間を不幸にしてはいけない。
    だが、時として、経済活動は人間を不幸の淵に追い込む。それは、経済活動が均衡から逸脱した時だ。経済活動のバランスが崩れると、人間は必ず不幸になる。激烈なインフレや深いデフレがその典型だ。そのような経済活動の歪みの中で、人間は不幸のどん底に突き落とされる。下手をすれば、命さえ危うくなる。
    そのような人間たちの危機に対して、荒れ野から警告の声を上げる。それが出来ないようであれば、経済分析は経済分析であり得ない。
    だからこそ、本書の本題が「さらばアホノミクス」になっている。目下、我々の目の当たりで繰り広げられている日本の政策展開は、経済活動の均衡をどんどん突き崩す方向にばかり働いている。これは実に奇異であり、許し難いことだ。経済政策は、経済活動が均衡状態から遠ざかった時、その歪みを是正するためにある。ところが、強さと力と大きさばかりを追求する現在の政策運営は、日本の経済活動の調子を狂わせるばかりだ。このようなやり方とは、何としても、おさらばする必要がある。(4-5p)

    書き写してみてわかったのだが、浜矩子さんは文筆家ではなく、根っからの経済学者なのだ。ここまで繰り返しが多い文章をエッセイストは書かない。しかし、ここまでわかりやすい経済の「本質」を書いた文章も珍しい。

    第一章は、週刊エコノミスト編集次長を聞き手に、昨秋の情勢をぶった斬りしていて、爽快。「新三本の矢」「トリクルダウン」「金融緩和」「マイナンバー」「日銀恐慌」「中国経済」を一言二言で批判できている。正に浜矩子さんの独壇場だ。

    浜矩子さんは少し恐い見通しも述べている。このまま「アホノミス」の通貨政策と金融政策が続けばこんなことも起こりうるというのだ。
    「自国通貨の価値をどんどん下げることに情熱を燃やす中央銀行。事実上の財政破綻に陥っている政府のためにせっせと国債を買い込む中央銀行。そのような日本銀行のあり様が投資家たちの不信感に全面的に火をつけてしまえば、誰も円を買わなくなります。そうなれば、円相場は暴落、崖から転落し、あの世行きということもあり得ます。道草転じて命取り。現状の株価の乱高下(2015年7-8月)もその前兆かもしれません。まさに「日銀恐慌」前夜かもしれませんね。」(34p)

    恐いのは、現在の株価(2016年4月ー5月)もそういう程を示していることだ。あゝ恐い。そしてさらばアベノミクス!としなくてはならない。

    2016年5月22日読了

  • よく書店で見かける「アホノミクス」。最近では「ドアホノミクス」というものまで出てきている。毎年経済の悲観論を出しているのにその通りにならず、浜先生が本を出版しなかった年にリーマン・ショックが起きたと、右寄りの人に馬鹿にされることが多い。私もアホノミクスを唱える著者などくされ経済学者の戯言かと思い相手にしていなかったのだが、さすがに経済学者なので、主張している論は筋が通っている。「アホノミクス」というタイトルは目は引くが、それなりの主張をしているのに、「アホ」という単語で品位を貶めているのが残念だった。

  • 経済政策とは、第一は崩れた均衡の回復、第二の目的が弱者救済。外交安全保障政策と表裏一体のアベノミクスとは対極をなす。潜在成長率がほぼ0パーセントの時代になっても成長しようとするところに無理がある。既に十分豊かな日本が無理やり成長を目指せばゆがみが生じてしまう。日銀が買っている国債は300兆円を超え、危機的な状況。財政も国債残高は1000兆円を超え危機的な状況。経済政策を本来の目的とは違った形で濫用すれば、政治の思惑に対する経済の力学の逆襲として、最終的にはとんでもないしっぺ返しを食らうことになると警鐘を鳴らす。国民福祉最優先の矩子節が縦横無尽に炸裂。小気味よさは相変わらずだ。

  • 現在の経済政策にノーと感じるとか、なんとなく違和感を感じる方は、その原因、要因を理解するネタになります。全般的に「左」に見えないこともありませんが、今は左とか右かとかより、世の中の諸問題を根本から見直して、ほんとうに必要な政策がなにかを考えて行かないかぎり、どこの党だから間違いない、とはいえないように感じます。

    どの党よりどの党が「マシ」なことをいっているのか理解するために、薄くてすぐ読める本書のような本は役にたちます。

    ただ・・・、やや批判に偏っている印象もあります。

  • 初版は2015/11/20である。
    今手元にあるものは2015/12/15で第五刷です。
    ちょっと嬉しい。
    今のこの日本は、どうもおかしくキナ臭いなぁ
    と 思っておられる人がそう少なくないことが嬉しい。

    読みながら考える
    考えながら また 読む
    私たちの暮らしはどこかで何かとつながっている。

  • もはや経済政策にあらず! 「強い国」の危険な正体! 今、決別の時。
    アベノミクス、TPP、中国経済の減速、ギリシャ危機......。安倍首相の経済政策「アベノミクス」を「アホノミクス」と批判し続ける「ブレない経済学者」浜矩子・同志社大学大学院教授が、混迷深まる「アベノミクス」と世界経済を一刀両断! !  毎日新聞人気連載「危機の真相」の書籍化! !

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

1952年生まれ。同志社大学大学院ビジネス研究科教授。
主著=『新・国富論――グローバル経済の教科書』(文春新書、2012年)、
『老楽国家論――反アベノミクス的生き方のススメ』(新潮社、2013年)。

「2014年 『徹底解剖国家戦略特区』 で使われていた紹介文から引用しています。」

浜矩子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×