ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く (Mainichi Business Books)

著者 :
  • 毎日新聞社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620530246

感想・レビュー・書評

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  • ギリシャ危機の真実を、学者から庶民まで、複数のギリシャ人に取材しながら、これまでの歴史の経緯を踏まえて、簡潔に記した良書。

    段落も多く、さらっと読めてしまう本ですが、引用をたくさんしたくなるほどの充実した中身で、ギリシャ危機の真相を知りたい人には必須の書だと思います。

    中でも興味深いのは、ギリシャは、各種統計に関する国家としてのガバナンスがほとんど働いていないこと。つまり、ギリシャから出てくる統計数字は、全く当てにならないということ。

    ウソの数字を作って、EUにも加盟してしまったほどの国です。つまり見た目真っ当な先進国に見えるギリシャも、中味は発展途上国と大して変わらない、悪い意味でのいい加減な国。

    私の思う先進国と発展途上国に違いは、第一に衣食足りているかどうか、そして第二に国家・民間の双方とも、その社会においてガバナンスが真っ当に働いているかどうか、だと思う。

    闇経済がはびこる、統計数字は信用できない、コネ社会、賄賂社会で、個人の能力・実績とその報酬・対価が比例していない、といった状況の国家は、ガバナンスが働いていない、つまり、先進国ではないということ。

    ギリシャはそんな国で、やはりEUに加盟させること自体、時期尚早だったと思わざるを得ません。

  • kindleで読んだ。現地取材で現場の声が伝わってくるルポ。

  • 今巷で話題のヨーロッパ債務危機問題の中心国、ギリシャでの危機についてルポです。

    日本や米国、更にはドイツやフランスといった外側からみたギリシャ危機ではなく、ギリシャ現地から見て感じてそして考えたレポートでした。

    過剰な公務員、過剰な国の借金、過剰な年金支給、更には世襲政治がもたらす弊害等、様々な問題を浮き彫りにしてくれていて、興味深く読めましたし、ギリシャ人気質なんかにも触れられていて、思わず笑ってしまうような話もありました。

    先日紹介した「ソブリン・クライシス」に比べるとかなりカジュアルな感じですし、分量も新書で140ページ程しかないので、2、3時間もあれば読み切れる手軽さ。

    ギリシャ危機についての良い入門書ではないかと思いました。

  • ギリシャ危機は歴史的なものと国民性だったのか。
    というのがよくわかる。

  • 新聞の特集の連載を読んでいる気になるが、非常にわかりやすい。

    ギリシャに関する事実はもっと細かいところまで書き込んでくれてよかったと思う。ちょっと薄すぎて、踏み込み不足のまま終わってしまった感がある。

    でもこの本がすばらしいのは、日本を含む他の文化との比較していく中で時々出てくる、ちょっと斬新な視点。

    p50「歴史を、あるいは過去を語るのに10年では短すぎる。しかし20年、あるいは30年となると、世代にもよるが、否が応でも時代の流れを感じる長さだろう」

    p58「グローバリズムでどこも似たような暮らしぶりをしているように見えても、(日本とギリシャでは)70年代をどう生きたか、抱える歴史が違うのだ」

    P122「ギリシャは400年にわたる支配をなかったこととみなし、それ以前の先住民文化にばかり目を向けられる。そして、ギリシャ人もそれで良しとしてきた」

著者プロフィール

藤原章生(ふじわら・あきお)1961年、福島県いわき市生まれ、東京育ち。北海道大工学部卒後、エンジニアを経て89年より毎日新聞記者として長野、南アフリカ、メキシコ、イタリア、福島、東京に駐在。地誌、戦場、人物ルポルタージュ、世相、時代論を得意とする。本書で2005年、開高健ノンフィクション賞受賞。主著に「ガルシア=マルケスに葬られた女」「ギリシャ危機の真実」「資本主義の『終わりの始まり』」「湯川博士、原爆投下を知っていたのですか」。

「2020年 『新版 絵はがきにされた少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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