子育ての倫理学: 少年犯罪の深層から考える (丸善ライブラリー 331)

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  • 丸善出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784621053317

作品紹介・あらすじ

近年とくに今までの常識では考えられなかった未成年者による殺人事件が多発している。事件の背景には、非行を招きやすい社会環境、人間関係が希薄になりがちな現状、さまざまなメディアを通じた有害情報の氾濫などが挙げられているが、少年犯罪の根本的原因は、実はそんなところにはない。では、どこにあるのか?-それは「乳幼児期の子育て」に深く関係しているのである。本書では、実際に起きた少年犯罪事件を例に挙げながらそのことを明らかにするとともに、倫理学的視点から、解決への明快な指針を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 加藤先生の(道徳)教育論。重大な少年犯罪の論評、母性剥奪の話、遺伝と環境の関係、子どもとの向き合い方、体罰正当化論、いじめの議論など。性教育の話はない。
    基本的には他者危害原則を身に付けた子どもをどう育てるかという視点が根底にあるが、徳倫理への傾斜も若干見られる(第8章のあたり)。
    3歳児神話が話題になっていた時期だが、生後48ヶ月までの母親による教育が重要だという発言が不用意に繰り返されているのがちょっと気になる。また、最後の方で母性と父性は誰が担ってもよいという発言が一度あるが、他のところでは母親、父親の役割が連呼されているのも若干時代を感じさせる(当時から指摘されていたが)。
    3歳までは甘えさせる、そこから自律・自立を育てる、10歳から15歳までは体罰OK、15歳以上は自律した個人として扱う、というような教育プログラムのようだ。
    本全体の構成はいくつかの論稿を寄せ集めたもので、どの部分を読んでもおもしろいが話が最後に向かって展開していくわけではない。また、誤字脱字だけでなく一段落に同じ文章が二度現れるなど、編集者も筆者もよく校正していないこの時期の特徴が現れている。

  • 世間に衝撃を与えた少年犯罪を例に取り上げながら、子育てのあるべきかたちについて論じている本です。

    著者は日本における応用倫理学の第一人者ですが、本書の議論は倫理学的な原則に遡って議論がなされているというよりも、子育てに関する経験則のようなやや不分明な知恵をブラッシュ・アップするかたちで結論を導こうとしているように思います。かつての著者の盟友で、「伝統」を重んじる保守思想家の西部邁ならこうした議論を展開するのでしょうが、倫理学者である著者にはちょっとそぐわない語り方のように感じてしまいました。

  • 「権利の侵害を受けたら、どんな手段でも用いて訴えることが、侵害を受けた人の義務だ。…。訴える手段のある人が訴えなかったら、訴える手段すら奪われている人々は永久に救われない。もし君たちが、権利の侵害を受けて、訴えることをあらゆる手段を通じて追求しないなら、君たちは権利の侵害を受けても訴えることのできない世界中の何億という被害者を裏切ることになる。」自分の行為全てに倫理的な意味を求められるのは、間違ってはいないが、それに耐えられる人は少ない。

  • [ 内容 ]
    近年とくに今までの常識では考えられなかった未成年者による殺人事件が多発している。事件の背景には、非行を招きやすい社会環境、人間関係が希薄になりがちな現状、さまざまなメディアを通じた有害情報の氾濫などが挙げられているが、少年犯罪の根本的原因は、実はそんなところにはない。
    では、どこにあるのか?―それは「乳幼児期の子育て」に深く関係しているのである。
    本書では、実際に起きた少年犯罪事件を例に挙げながらそのことを明らかにするとともに、倫理学的視点から、解決への明快な指針を提示する。

    [ 目次 ]
    序章 青少年問題の根の深さ
    第1章 少年Aの背景―自己危害防止の倫理学
    第2章 幼児体験と凶悪性―感情的ふれあいの倫理学
    第3章 女子高校生コンクリート詰め殺人事件―エロティシズムの倫理学
    第4章 「母親」を奪われたヒトの子ども―非行防止の倫理学
    第5章 布製の母親―応答性の倫理学
    第6章 金属バット殺人事件―対決の倫理学
    第7章 遺伝と環境と刷り込み―後天的先天性の倫理学
    第8章 自律を目標とした子育て―「ダメ」と言わない倫理学
    第9章 こころの教育は可能か―家庭で育てる倫理学
    第10章 体罰の方法―父性の倫理学
    第11章 少年法は役に立つか―更正の倫理学
    第12章 いじめから抜け出す方法―権利の倫理学

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著者プロフィール

京都退学名誉教授

「2012年 『科学・文化と貢献心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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