コトラー ソーシャル・マーケティング 貧困に克つ7つの視点と10の戦略的取組み

  • 丸善
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784621082003

作品紹介・あらすじ

環境と並ぶ世界の課題「貧困」に対する戦略的マーケティングのマインド・セットを具体例をもって本書が示す。

感想・レビュー・書評

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  • 10.07.04読了
    箕面図書館
    読書時間2.5H
    評価○

    貧困の削減のため、その背景にあるもの、失業の蔓延や医療が受けられず健康不良、犯罪や戦争、男女不平等、家族(人口)計画の欠如などを防ぎ、貧困の再循環を断ち切るためには、マーケティング的な取り組みなくして効果を上げる事はできない。

    いわゆる、営利マーケティングとほとんど同じ考え方、やり方が適用でき、それこそが成果を上げるために絶対必要というのが本書の主張。

    なるほど、と思わされた部分が多く貧困撲滅への取り組みなくして未来なしとも思わされた。

    目次にそって、気づきとポイントを。

    第1部 貧困問題とその幅広い解決を理解する
    1章 なぜ貧困は皆を傷つけるのか
    ・世界の人口の1/6が1日1$以下の収入で、1/3が2$以下。
    14億人が1.25$/日以下で、16億人が2$/日以下で生活 相対貧困(平均国民所得の一定割合以下のレベル)は約10億人として40億人が貧困者
    ・貧困の原因(貧困との相関事項)
    内戦、不幸の種となる天然資源、陸地に囲まれた国々、不適切なガバナンス

    2章 一般的な解決の試み
    ・貧困の存在→経済成長、所得・富の再配分、大規模な対外援助、人口抑制のどれかで解決つすると皆されてきたが、多面的なアプローチが必要→マーケティング的なマインドせっと、原理、ツールが貧困削減プログラムの計画実行において役立つであろう

    3章 ソーシャル・マーケティング・ソリューション
    <ソーシャルマーケティングと営利マーケティング>(違い)
    ・ 行動を売ること⇔商品サービスの販売
    ・対象者の現在の行動や関連する便益をと競争⇔他社の製品サービスとの位置づけ
    ・目的個人・グループ・社会の福祉⇔株主の利益
    (類似点)
    ・顧客思考が決定的に重要
    ・交換原理が基本にある
    ・プロセスを通じてマーケティングリサーチが活用される
    ・受けては細分化される
    ・4つのP(製品、価格、物流、宣伝)
    ・結果は測定されて改善のために活用

    第2部 マーケティングの眺望と解決の適用
    4章 貧困の市場の階層—ケース:ウガンダとタイにおけるHIV
    ・私たちの取り組みにとって想定される市場セグメントは誰か?市場の細分化
    ・マクロセグメンテーションでは期待はずれとなる事も多い

    5章 ターゲットとする市場の優先順位の評価と選択—ケース:アメリカにおけるホームレス
    ・第1にあるいは最も焦点を当てるのは誰か?
    ・セグメントをわけ戦略を立てる
    ・インドネシアの貧困マップ

    6章 望ましい行為の決定の変化—ケース:パキスタンとルーマニアにおける家族の計画

    7章 障壁と恩恵の理解と変化の競争—ケース:マラウィにおける食料生産品の改善
    ・競合に打ち勝つために4つのどれか
    1.望ましい行動の便益を増大 2.望ましい行動の費用を低減 3.競合する行動の便益を低減 4.競合する行動の費用を増大

    8章 発展途上の望ましい位置づけと戦略的な市場の融合—ケース:アフリカにおけるマラリア予防
    ・ポジショニング→4Pの分析


    第3部 完全なアプローチの確保
    9章 発展途上の社会市場計画—ケース:ペルー
    における結核の制圧
    ・背景目的焦点→SWOT分析→マーケティング→ポジショニングの表明→価格・流通戦略→プロモーション

    10章 貧困の減少のための公共の領域の役目—ケース:ニューヨーク市における経済機会の改善
    ・中国は貧困削減に最も成功したケース
    1990→2000の10年で1ドル未満の貧困層を33%→16%に 政府の役割
    ・すべての政府は貧困撲滅プログラムを作り上げなければならない。


    11章 貧困の減少のための非営利領域の役目—ケース:中央アメリカにおける緊急および災害計画
    ・NPOは政府や企業では取り組めないような隙間を埋められる多様性と広範さがある。

    12章 貧困の減少のための民間の領域の役目—ケース:セルビアとハンガリーにおける教育の改善
    ・企業が貧困を減らすための役割は増加している。貧困層のための食品、製品、サービスのコストを下げる。

    13章 労働の共有のための3領域の取得—ケース:西アフリカにおける河川失明症との闘い
    ・政府、企業、NPOのパートナーシップ。
    共通の目標への合意、役割と責任の明確化、総合尊重・理解、交渉と妥協、開かれたコミュニケーション、アカウンタビリティの仕組み、成果の測定と公表。

  • 邦訳の題名だと内容が分かりにくいので原題をまず・・・
    「Up and Out of Poverty -The Social Marketing Solution-」

    原題にもある通り、近年注目を浴びている世界の中で「貧困」という問題をどのように解決していくのか?という課題を取り扱った本です。マーケティング的な視点から、貧困解決のためのプロジェクトを成功させるにはどうあるべきか?を具体的な事例をとりつつ分析をしています。

    最近興味があるのでBOP関連の本を読んでいますが、具体的ないろいろな事例が見れて非常に参考になります。また、意外と通常のビジネスとしても取り組んでいけるのでは?との希望が持てたりもします。むしろ、日本のビジネスのようにサービス業的な嗜好品・趣味的なことで付加価値をつけて利益を確保!的な色合いではなく、もともとのビジネスというか「商売」としてはじまったころの顧客の課題を解決して幸せになってもらったうえでお金をいただき、その解決策やサービスを継続させる、そのことで社会全体の生活や人生の質が上がっていく、という原点回帰的な色合いが強いプロジェクトも行われているんだなぁ・・・といままでの貧困解決=寄付といったイメージからは大きくかけ離れていて勉強になりました!

  • 貧困、およびその解決策をマーケティング手法で再考した良書。
    貧困の解決には「自立」を促すことが重要である。頼りっぱなし、という状況を作っては負のループに陥ってしまう。そのためにも、マーケティングの考え方を用いることが重要。

  • 東2法経図・6F指定 368.2A/Ko93s/Makita

  • マーケティングが「誰かに望ましい行動をとってもらうための戦略術」(「戦略」術って何?と自分突っ込み)として、それを「ほっとけない世界の貧困」に使うための考え方と事例がたくさん。

    (ソーシャルメディア・マーケティングではなく、ソーシャル・マーケティング。関係性メディアでのマーケティングと社会問題に対するマーケティングは違う。)

    ひとことに貧困といったって、毎日1ドル以下で暮らしている「グローバル貧困」と、世帯所得がその国の全国平均未満の「相対的貧困」ではニーズも「望ましい行動」の定義も、「望ましい行動」をとってもらうためのアプローチも違う。この区分けも目的がなにかによってもかわってくる。有効なアプローチ方法も違う。

    これは商業的な見込み顧客とリピーターの違いと同じ。

    マラリヤの防止に、先進国の寄付による蚊帳の無料配布がよさそうに見えて、実は、現地の蚊帳販売業者が廃業に追い込まれる可能性もある。

    蚊帳をもらう側も、ただでもらうより自分のお金で買った方がちゃんと使用する、というデータもあったり。

    その地域の誰に、どういうアプローチで、どういう行動を期待するか、ということが考えられていないと、一向に貧困はなくならず、誰かの自己満足の寄付を食いつぶすばかり。

    目的や焦点、状況分析から入って、目標、ゴール、戦略、計画、予算といった一連の流れがまとまって書いてあるのでかなり実践的。

    調べてみると、「ソーシャル・マーケティング」というのはそう新しい考え方でもなくて、60年代ごろには大企業的商品売りつけマーケティングの反動として、社会的全体の利益向上にマーケティングを生かそうという意味が生まれていたらしい。

    そう思いながら見ると、話題の男女共同参画政策の失敗の十年なんて、本気で男女平等実現するには戦略が甘かったんだろうなと思う。

    日本国内の貧困や格差についてだって、食糧自給率アップのためのキャンペーンだって、都市部とそれ以外では当然「誰に何をどうしてもらう」と効果的で、そのためにどういうアプローチを仕掛けるか?は違ってくるはず。

    後半、貧困を解決していくのには、これからは行政セクターだけでも、非営利セクターだけでも、民間企業セクターだけでもだめで、その三者の連携が大事、とあるのだけど、載っているのはNot To DO集。日本政府のNGOに対するダメな対応の例が載ってたりして面白い。

  • 貧困に対するマーケティングの論文ってとこ。期待して読んだだけに、対して得るものがなかったのが残念。

  • 貧困等、世界的課題に対して
    いかにマーケティング理論を活用するか。
    多くの具体事例を挟みながら
    解説している本。


    第Ⅰ部 貧困問題とその幅広い解決策を理解する
    第Ⅱ部 ソーシャル・マーケティングの視点と解決策を応用する
    第Ⅲ部 統合型アプローチを確立する

  • マーケティングの大家、コトラー先生の著作。商業的なマーケティングを用いて、非商業的である貧困を解決アプローチを試みる。

    コトラー氏は古くから「ソーシャル・マーケティング」を掲げており、豊富な知識と経験に基づいた学術的かつ実務的手法が記されている。

    が、多少意見に偏りがあり、なにより日本語訳がちょっとイタダケないので、結果3点。

  • マーケティングを貧困問題に活用しようという本。

    開発プロジェクトのパフォーマンスを高めるうえでこの視点はホントにいいと思います。

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