攻撃―悪の自然誌

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622015994

感想・レビュー・書評

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  • 村上龍が、EV.Caf'e 超進化論 ( 1985年発行 )の中で、坂本龍一との対談していて、この本のことを話している。 ( テーマは快感 )

    村上  ローレンツに一番感動したのは「攻撃」何回読んでも泣きそうになってくるんだよね。結局人間というのは動物だなと思うわけでしょう。……

    、、、この一文を読んで、私はこの本を買った。
    読んでみて、何でそこまで感動なのか、わからず、村上龍の感性に、興味を持った。

    現在、ほとんど内容を、覚えておらず、あるはずの本を、見つけ出したら、再読してみたい。

  • 多くの人がそう感じると思うのだけど、
    この本のコアは第3章「悪の役割」にあると思う。

    p66から始まる敵対闘争や順位競争、そして種内淘汰についての美しく鋭い解説だけを読むために、かなり高い金額(¥4100)を払ってよかったと思った。
    (これは合理化してるんじゃなくて客観的事実っす)

    以前に『攻撃』はかくる読んではいたが、図書館でパラパラとめくっただけであってきちんと読んだことがなかった。
    やっぱりちゃんとお金払わないと読まない自分がちょっと恥ずかしい。

    得た知識は多いが特に「悪とは何か?」との問い
    これを本書では純悪とは環境の変化によって不要になった機能が、問題を起こしている(機能錯誤)という考えで説明している。

    その他3つ印象に残った箇所を挙げると、

    P122 本能について
    「その行動を本能と説明してしまっては説明になっていない」とある。デューイを引用して機能錯誤の原因を解明しようとする試みが読み応えがある。

    P232 種内攻撃について
    「種内攻撃には種を維持する機能があり、その機能は必要不可欠だが、そのような機能は群れの間の闘争によっては実現され得ない」

    P339 攻撃について
    自分の集団を保つことと、種内淘汰の関係について。
    「ゆっくりと進んでいく真価や系統発生の上に、伝統的に受け継がれた文化の構想建築がそびえ立つ」

  • 以下、抜粋メモ。

    第14章
    p361 
    攻撃性というものの性質について、わたしたちの持っている知識は、今ではまだつましいものであるけれども、それでもまったく利用価値がないとはいいきれない。知識というものは、もし何がうまくいかないかを教えてくれることができれば、それだけでも利用価値があるのである。

    「アグレディ(aggredi)」という言葉のそもそののそしてもっと広い意味は、課題や問題をとらえること、みずからを重んじることである。これがなければ下は毎日ひげをそることから、上は最も高尚な芸術的もしくは科学的創造にいたるまで、ひとりの男が朝から晩までに行う大部分の行為が姿を消すだろう。

    p371


    p374
    現代が無味乾燥で、青年が深く懐疑的であると嘆く人が多い。このふたつの現象はしかしながら、かつて人々ことに若い人々が完全にだまされた作られた理想、熱狂を解発するわなに対して反対するところの、それ自体健全な防御から発しているのだとわたしは信じるし、そうあってほしいと思っている。まさにこの無味乾燥状態を利用して、かたくなな不信につきあたったとき、数量的な証明によってあらゆる懐疑を無力化しうる科学の真理をすすめてはどうかと思う。科学は密教でもなければ魔法でもなく、簡単な方法で人に教えられるものだ。まさに無味乾燥な人たち、懐疑的な人たちこそ、証明可能な真理やこれにともなういっさいのことに対して熱狂いうるのだと思う。

  • 本書はノーベル賞学者であり「ソロモンの指輪」の著者で、動物行動学の始祖の一人であるローレンツの名著であります。ただ僕は専門外の分野であまり理解が足りないの中でも人間と動物の類似点には驚きました。

    この本は読むのが本当に大変な代物で、僕自身もやっとこさっとこ読み終えたところであります。その内容はというと、動物行動学の権威である筆者の書き表した古典ということで、僕はそっちのほうはあまり詳しくはありませんが、現在では記述や学説が古かったり、また誤りもあるそうです。ただし、筆者の持つ豊富な経験に基づく鋭い観察力や、対象となっている動物に対する深い洞察力については、やはり驚嘆するべき箇所はいくつもありました。

    その中でも印象に残っているのはオオカミのオスが犬のメスに本気で攻撃されたときに、多少咬みつかれても平気な箇所を相手に差し出して、後は好きなように相手に咬みつかせていた。という箇所で、これを人間に置き換えてみると、やきもちを焼いた彼女にポコポコと殴られても本気で男性が女性を殴り返したり蹴り飛ばしたりすることが(良識的な範囲で)まずないだろうということが連想されたり、「平和の象徴」であるはずの草食動物が時に同種を残忍な殺し方で嬲り殺しにする、という箇所もショックを受けました。

    俗に「草食系男子」と呼ばれる方は暴発したときが恐ろしいんだ、ということを世の女性は理解していただけると、幸いに思います。

  • 大学の課題図書として読み始めた
    見た目、目次からしてとっつきにくそうだが
    内容は見た目ほどは難しくない。
    もちろん私の理解はまだまだ筆者の意図ほどには及んでいない。
    なぜ動物は攻撃するのか、という一つの疑問をひたすら考えていく。

  • 生物がなぜ「攻撃」をするのかということをいくつかに分けて説明されている。衝撃的なのはカモにも同性愛というものがあり、それがとても強い繋がりであるということ。コウノトリが子供を判断するのは耳であり、耳が聞こえなくなると自分の子供でも関係なく殺してしまうこと。また、攻撃する相手が決まっている動物が何種類かいて、それらのオスはメスを攻撃しない。などといったことが書かれていた。
    最後の2章くらいは軽いまとめにもなっているそれまでの書き方とは違い著者が研究の末思ったことを書いているように思えた。二次大戦をドイツ軍内で過ごしてきたことからか戦争についても少しだけ触れられている。
    そこでは、戦闘がミサイルなどによって人の死が遠くなっていくことで、限度を忘れてしまうのではないだろうかという提示だった。本編の中にも普段攻撃をしない動物が攻撃を余儀なくされたときは捕食動物よりもえげつないものだと書かれていた。
    化学兵器や戦闘兵器が高機能になっていった現在。ローレンツが危惧したようなことになってしまったのだろうか。
    普通に読むだけでも面白い発見がある本だが、先ほど述べた最後2つの章は、それまでとは違い、堅苦しく書いていないためより印象深く読み込むことができると思う。

  •  ノーベル賞受賞者コンラート・ローレンツが様々な動物の行動から攻撃(悪)や道徳的な行動がどんなメカニズムで生じるかを説いていく。

     動物はただ闇雲に同種を攻撃するのではない。そこには様々な戦略があることをローレンツは説明していく。さらに攻撃が適切でない相手や状況では攻撃を止める行動を多くの動物が取ることもあげていく。それはまさに人間でいうところの道徳的な行動であり、笑顔を見せるなどの人間の親和的な行動も動物の攻撃を止める行動と関連しているとローレンツは説いていく。
     ある意味動物は私達が思っているより人間的であり、人間は自分で思っているより動物的であるとこの本は投げかけている。それは人間の価値を下げることを意味しない。私達はもっと謙虚に動物の行動から多くのことを学び、考えていかなければならないと感じた。

     動物行動学は文化人類学と並び人間に関わる仕事をする人が必ず学ぶ必要がある学問であると思う。

  • 自分てなんや?人間って何や?そう思う人には読んで欲しい。
    どうして人間は、同じ人間と争うことをやめないの? なんで愛おしかったあの人が、今は憎くて仕方ないの? 友情って何なの? どうすれば戦争はなくなるの? そんな疑問に、一石を投じてくれる。
    100冊に1冊、いや、それ以上の尊さを感じた良書。是非。

  • 進化とは 皆殺し兵器 造るため?  放たれた矢 爆弾の雨 / これも、読みかけで長く積読状態だった本。 ロシアのウクライナ侵攻が目前に迫った今こそ読むべき時だと思い、手に取った。

    第十四章「希望の糸」のあまりの細さに茫然。 ローレンツは、応用行動学や昇華の研究によって、人間の行動の原因を考察する目を深めることを求めている。 そして、一番確かな成果を期待できるものとして、攻撃欲を代償となる目的に向かって消散させて、カタルシスを実現することを挙げている。 なかでも、闘争が人間の文化生活の中で、儀式化され、発達したものとしてのスポーツの効用を説く。 そのほか、科学や芸術の役割を説き、笑いの活用も勧めている。

    【この書で扱うのは、攻撃性(Aggression)、すなわち動物と人間の、同じ種の仲間に対する闘争の衝動のことである。】(まえがき) 【かりにひとりの行動学者が、ある別の惑星、たとえば火星から、人間の社会的行動を望遠鏡を使って客観的に調べてみたとしよう。(略)さて、その結果、かれは人間の行動が理性とか、ましてや責任感に従っているどころか、人間の社会集団はネズミのそれとたいへんよく似た構造をもっているのだと、十分な根拠をもって結論するだろう。

    かれらはネズミ同様、閉じた同族の間では社交的に平和に暮らそうとするが、自分の党派でない仲間に対しては文字通り悪魔になるのだ。さらに、この火星の観察者が、人口の爆発的増加とか、武器の脅威の増大とか、人類が二、三の政治的陣営に分かれていることなども知ったとしたらどうだろう。かれは人類の未来を、ほとんど食糧もつきた船の上でいがみ合っているネズミの群れの行く末とさして変わらないと判断するだろう。】

    【勝ちどきがハイイロガンの社会構造に重大な影響を与える、いや社会構造を支配してしまうように、熱狂して闘争を起こそうとする衝動もまた、人類の社会的・政治的構造を広汎に決定する。人類は、互いに敵対するいくつもの党派に分離してしまっているから闘争好きで攻撃的なのではなく、それが社会的攻撃性を消散させるのに必要な刺激状況を作り出しているからこそ、党派に分裂しているのだ。】

    【だがそのほかにも、もっと大きな、そして本当の意味で人類の総力を結集すべき事業がふたつある。この事業こそは、はるかに大きな規模で、これまで無関係だったか敵どうしだった党派や諸国民を、共通の価値のためにこぞってふるいたたせるという任務をもつものである。それは芸術と科学である。(略)まさにこの任務のために、芸術はつねに非政治的でなければならない。】

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