- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622016939
感想・レビュー・書評
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だいぶ前に買っていたのだが、なんか難しそうで、積読状態だった本。
同じサイエンスものでも、早川書房から出るのとみすず書房からでるのでは、かなり敷居の高さが違いますからね。みすず書房のブックデザインって、洗練されているんだけど、よっぽど暇な時でなければ、読む気がしないデザインですよね。(つまり今はGWを家で、ゴロゴロしているところで、これくらい暇でなければ、読まなかったということ。)
さて、かんじんの内容だけど、本当に理解できたかどうかは別として、近年まれに見る「もやもやがすっきした」感が味わえるものだった。一部、難しいところもあるけど、古典物理学から始まり、熱力学を経由して複雑系科学にいたる必然性とその変化のもつ哲学的・認識論的な意味について、結構、分かりやすく、丁寧に書いてあると思う。
複雑系の本を読んでて、時々思う「あれもこれも自己組織化っていうけど、だから何なのさ?」みたいな疑問は、この本を読んでいて感じなかった。
それは、この本がまだ方法論や認識論を述べている段階であるということもあるのだろうけど、結局のところ、世界を理解することに対する人間の限界みたいなものをしっかりと認識したうえでの議論になっているためかな、と思った。
一方、こうした著者の慎重な姿勢は、「◯◯によると、△△なんだけど、知ってる?」的な「目から鱗」のネタに禁欲的なところにつながっていて、思想的には深くても、エンターテイメント性は低い。やっぱり、「みすず書房」からでるのに相応しい本といえよう。
古典物理学や西洋哲学を勉強した人が、「複雑系」や「非線形科学」を勉強し始めるのには、格好のスタートポイントだと思われる。一方、普通の読者は、いろいろ本を読んだ後に読むことによって、意味がじわりと伝わるという類いの本かな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
4410円購入2011-03-07
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対称性の破れ、で有名なプリゴジンの思想よりの本。
昔読もうとして挫折したけれど、今回はそれなりに読めた。
古典科学の「自然」「真理」からの乖離を批判していて、それまでの機械論から生気論を復活させようというイデオロギーで統一されている。また、古典と彼の「新しい」科学を分ける重要な概念としてエントロピーと(過去と未来の対称性が破れた不可逆な)時間というものがある。
少々疑問に思ったところとしては不確実性という一番重要な前提がしばしば忘れられて、確率論も結局のところ絶対的な信仰へと離散化せざるを得ないのではないか?というところ。実際現実世界では(特に科学者以外において)そのようになっている場合が多いように感じられる。
彼のいう新しさもいずれ批判されるべき古典になるのであろうと思うところであり、その対局としてどんな考えがくるのかというところは気になる。
プリゴジンの考えには納得できない部分も多すぎるため、まだまだ科学は進化するだろうなと思った。 -
水野さんからの課題図書。いつも時宜にかなっている。ちょうど時間について考えていた。それと読みながら、わたしはどうして世界や宇宙のことを考えるためによくわからない自然科学の本を読むのだろうとか考えていた。
古典物理学は可逆的であった。それは決定論的でもある。ところが現代物理学は熱力学を深めて、力学に取り込むことによって不可逆的な世界を描き出せつつあるそうだ。不可逆的な世界というのは時間が逆に流れない世界。つまり当たり前の世界である。この当たり前のことを物理学にしようとするとどうも当たり前とは思えないくらいの難しさになるようだ。化学反応なんかは時間の経過とともに進み、逆戻りはしない。こういうことのほうが実は難しいのだそうだ。なんだか、「普通」は難しい…みたいなことのようである。
プリゴジンさんはとても情熱的で進歩的だった。いい人だと思った。この本もとても感じが良かった。でも、ほんといつも思うけど世界は数学がわからないと厳密にはわからないみたい。まぁでもそんなに厳密にはわからなくても実際困らないから、まぁ…いいか…
Mahalo -
1-3 物理学
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訳がひどいが,それでも★5の評価.理解を深めるためにプリゴジンの別書籍にもあたってみたい.