野生の思考

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制作 : 大橋 保夫 
  • みすず書房 (1976年3月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622019725

野生の思考の感想・レビュー・書評

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  • 野生の思考とは基層、あるいは転じて表層の魔術である。それは、ブリコラージュという、蟻塚がつくられるときのようなボトムアップの編集の技法によって起動される。ただ、勘違いしてはいけないのは、これは決して単なる稚拙な混ぜ合わせによって為されるのではなく、行為者にとっては合理的な、精緻な精神的体系との相互作用を通じてもたらされるということだろうと思う。逆に、その相互作用を伴わないまがい物を、かつてミラン・クンデラはキッチュと呼んだ。

    たとえば、日本各地の神社に野生の思考が見受けられる。その位置は決して闇雲に定められたのではなく、レヴィ=ストロースが指摘するトーテミズムによる精神的体系と、災害耐性や防御性能などの要件素材の、経絡ネットワークにおける投影としてのブリコラージュの結果である。
    そして、その機構は、その地に住まう人々に大いなる意味、つまり、ある種の精神的秩序をもたらす。それはまさしく原初的活動であるブリコラージュという基層的魔術と、その投影としての表層的魔術の作用である。

    しかし、魔術の実際的作用にはその中層部分が肝要となる。たとえば、神社の構築に際する効率的方法論、活動者の効率的管理、などである。いかに活動者みなが最大限活動に喜楽し、美を作り上げられるか、には、レヴィ=ストロースの指摘するプラクシスとポイエーシスの二分化ではなく、より複合的な、西洋哲学が産み出した功利主義、心理学、行動経済学の手法が非常に有用となる。そして、今やそれは、人間のみならず、シンガーが「動物の解放」で始めたように、動物にまで適用されようとしている。

    ポストモダン以降特に、西洋は未知であった東洋哲学に傾倒し、その、ときに曖昧で柔軟な思想に魅せられてきたが、安易な合理批判に陥らずに、西洋は西洋の合理性を究明していけばよいと私は思う。
    東洋哲学に長らく存在した無我の構造を実際に理論化したのは、ハンガリー出身の心理学者ミハイ・チクセントミハイであり、それは西洋心理学の一部に取り入れられている。

    昨日の合理は今日の合理ではなく、今日の合理は明日の合理ではない。合理の定義は一刻一刻更新され続けている。だから「合理」は完全性を伴わず、必ず欠陥を孕む。
    しかし、だからといって合理の追究を止めてしまっても、不完全性が留まるだけである。合理とは、人間と人間を含む自然の幸福的繁栄に投企される限りは、差異と統合のなかで高次的な散逸構造化に寄与する。

    私にとっては今後、レヴィ=ストロースの指摘するように、歴史ではなく構造への注視によって、進歩志向の逆説的に更なる進化を遂げてほしいという儚い思いがある。物語論における歴史と進歩に耽溺すれば、我々は新たな神話の創造に躍起になる。物語は出尽くした、というか飽き始めている。そうではなく、構造の多声性に目を向け、3次元あるいは4次元的ネットワークに共時的意図的に投影するときに創発される。

    魔術はときに狂気である。野生の思考の表層的魔術による混沌のなかの特異的なミームの感染力は強烈である。そのことを、冷静を保つのであれば、野生の思考は、人類が失いかけていた生活の別次元の豊かさを取り戻させてくれるだろう。

  • レヴィ=ストロースの、超有名な一冊。人類学に興味を持ち、何冊か関連の本を読む中で、やはりストロースを避けて通れないと感じ、読んでみました。

    めちゃくちゃ難しい。まず、「トーテミズム」とかいまいちはっきり理解できない言葉が多いのと、『~性』で説明される特徴の類似と差異が掴みきれず、かなり苦戦しました。
    それでもわからないところは飛ばしながら読んでいくと、示唆に富んだ記述が多々あり、なんとなく面白いですが、名前の付け方の章などはかなり混乱しました。
    文化人類学者とは、客観と主観の間で悩む存在なんだろうと思います。差異の中に類似を、類似の中に差異を認め、そこに法則を見出す、その考察はちょっと深すぎて理解できないとこも多々ありましたが、「こんな風に考えてるんだ~」程度で緩く読むのでいいのかもしれません。

    余談ですが、本の余白のバランスが悪く、縦横比としては読みにくい印象を強く受けました。その辺の改善のためにも、早く電子化してほしいですね。

  • 文章の言い回しが難しい。何度も戻り読みしなが
    読み進めている

    100分de名著のおかげで 読み進められる。理解度2割程度かもしれないが、分類、全体、構造化、不変の本質 あたりをキーワードに 著者の主張には たどり着きたい

  • 野生の思考 レヴィ=ストロース
    「はじめての構造主義」で予習したものの、やはり歯が立たない。人類学の素養が根本的に欠如しているので、ぜんぜんイメージがわかないんだよな。なんか面白いこと言ってるっぽいのはわかるんだけど。訳者も「格別に難解」と言っているので、今回は諦めて「悲しき熱帯」とかを読んでみようか。

  • 少数民族社会のサンプルケースを比較しつつ「言葉にする」という人類の意思がどのような現れ方をしているのかに迫る一冊。

    特に興味深かったのが「危険なもの」「大切なもの」には固有名詞がつくが、それ以外の物は名前を持たないというケース。 

    思えば子どもの頃、クラッシックの音楽はバッハもモーツァルトも一緒なのに、ヘビーメタルについてはメタリカとメガデスは違う、パンテラとアンスラックスは違うんや!と息巻いてたっけ(遠い目:あまり本文とは関係ありません)

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784622019725

  • 人間には知識による構造的思考と
    体験による感覚的思考があるのだという
    つまり知識の視野の狭いディテール中心の考え方と
    心のおもむく直感を中心とする野性的な考え方の2つに分けて
    この世を観察しているのだろう

    しかしこの本の著者は初めに答えありきの構造的頭の持ち主であり
    この本も詰まる所
    その枠に隠れながらの観察でしかないように思えた

  • 読了

  • 十分理解できたとは言えないけど、凄いということは伝わってくるような本です。

    レヴィ=ストロースを読むのはこれが2作目ですが(最初に読んだのは「悲しき熱帯」)、本当の意味で頭がいい人なのだな、とただただ畏怖することしか出来ないような感覚を味わいました。

    未開で遅れていると考えられてきた民族について詳細に調査考察することによって、西洋人の彼らに対する考え方に大きな転換をもたらしたとされている本書ですが、ただ記憶力が良い、または頭の回転が速いだけの人ではこの仕事はなされなかったのではないかと思います。

    ある社会における正論に疑問を投じるのはーーそのことによって自分たちの優位性が脅かされるのなら尚更ーー困難なことだというのは想像に難くないでしょう。

    それを平然とやってのけられるのは、真に賢い人間だけだと思いますし、そこにしびれますし、憧れます。

  • これは久しぶりに素晴らしい中沢新一な予感。妻を帽子と間違えた男からのロシアの脳学者ルリアつながりでシンクロニシティな感じ。

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