全体主義の起原 3 ――全体主義

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  • みすず書房 (1974年12月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622020202

全体主義の起原 3 ――全体主義の感想・レビュー・書評

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  • 最初に読みたいなと思ってから、多分、四半世紀ぶり、何度か、読みかけては、第1巻の最初の方で挫折を繰り返したが、今回は、ついに読了した。

    う〜ん、感無量だな〜。

    第1巻は、「反ユダヤ主義」を分析し、第2巻は、「帝国主義」。ここまでで、概ね、全体主義の「起源」に関する議論は終了。

    第3巻は「起源」というより、具体的に、「全体主義」が、初期の段階からだんだん最終形態に発達していくプロセスを辿りつつ、「全体主義は何なのか」ということを取り扱っている感じ。

    「全体主義」は、「反ユダヤ主義」と「帝国主義」を起源としつつも、そこにはない要素があるというか、歴史的にも類を見ないものとなっているのだと。

    アーレントは、独裁的な政治支配や反対者への残虐な処罰、征服者による民族絶滅的な暴力などは昔から存在したが、「全体主義」は、それらとは異なるものであると主張する。

    政治的・経済的な合理性を超えて、「絶滅収容所」=「死体製造工場」に必然的に突き進む「全体主義」が、どう通常の独裁体制と異なるのかという分析は、相当の迫力と説得力がある。

    そのポイントは、
    ・全体主義が「強制収容所送り」を本格化するのは、体制に対して反対する人が実質的にいなくなった後になってからである
    ・戦時中、人的・物的資源をより戦争に投入すべきときに、「収容所」の運営に精鋭部隊を投入し、戦争に役立ちそうなものを強制労働で作らせるわけでもなく、ただただ、絶滅というミッションに向けての労働をさせている
    ということ。

    どうして、そんなことになったのかは、実際に本書を読んでほしい。

    ヤスパースは、序文で、「全体主義の起源」は、最初に第3巻を読んでから、1巻から順番に読むといいという親切なアドバイスがしているのだが、それを無視して、1巻から順番に読み進めて、最後に「秘密警察」と「強制収容所」のところにたどり着くと、改めて、人間というものが潜在的に持つ「悪」に慄然としてしまう。

    とはいえ、ヤスパースのアドバイスの意味もよくわかる。アーレントは、「全体主義」をかなり限定的に定義していて、例えば、イタリアのファシズムは全体主義ではない。その辺の理解が最初にあった上で、第1巻から読むと確かに読みやすくなるだろうなと思う。

    アーレントが「全体主義」と定義するのは、ナティズムとスターリニズム。

    (51年初版の時点で、スタリニズムとナティズムを同列に論じるのは、慧眼としか言いようがない。この本が、それなりに話題になったのは、冷戦下という状況で、スターリニズムとナチズムが一緒なのは、アメリカ的には良いアイディアだったからだろうなと思う。とはいえ、こんな難解な本が理解できた人が当時どれだけいたか怪しい。。。)

    全体主義は特殊とはいえ、人間は「全体主義」に陥ってしまう危険を常に持っている。

    アーレントは、68年英語版の緒言で、中国について言及していて、そこに全体主義の可能性を見ているようだ。(情報量の少なさから、判断は慎重だが。。。)

    やはり、「全体主義の起源」を読まずして、アーレントは語れないな〜、と改めて思う。

    難解ではあるが、解説書で読むのとは、かなり違う、濃密な読書体験だと思う。

    安易に、この本を今の世界情勢に当てはめるのは、アーレントの意図とは違うと思うので、控えたいが、現代の古典として、いろいろな刺激や視点を与えてくると思う。

  • 反ユダヤ主義という私たちにはなじみにくい第1巻から始まったこの『全体主義の起原』、2巻で俄然おもしろくなり、この最終巻に至っては圧倒的な筆致による全体主義究明が最高にスリリングだった。やはりこれは素晴らしい名著である。
    アーレントはまず、ドイツ国民はヒトラーによる巧妙なプロパガンダによって騙されたに過ぎない、という俗説を徹底的に覆す。大半のドイツ国民は能動的にヒトラー政権を支持したのであり、最高で80%もの支持率がそこに集まったのだ。カール・ヤスパースが語ったように、その政権の犯罪性は、まさに全国民にも責任があったのである。なぜドイツ国民がそうなってしまったか、という経緯については本シリーズ第1巻から追跡された様々な事象の絡まりがそう結実したのだ、としか言いようがない(まさに「複雑系」である)。
    けれども最も重要な点は、民衆の「根無し草」化だとアーレントは強調している。
    ひとつには階級社会の崩壊。資本主義経済への不信、民主主義への失望。そうした過程を経て「アトム化」し、他者とのつながりを喪失してしまった大衆の「根無し草」性は、とりあえずしがみつくための「強力さ」の魅力を求めた。それは複雑な世界を説明するための物語であり、その頑固な首尾一貫性であり、極限まで徹底された虚構である。
    このときの民衆の各人の心性には、「徳としてではなく感情としての没我」(P20)が見られる。この没我によって、虚構のイデオロギーへの同一化が可能になるわけだ。
    ナチス・ドイツとスターリン統治下のソ連をアーレントは「全体主義」と規定し、その組織や諸機能を克明に描写しており、興味深い。彼女によるとイタリア・ファシズムも「ただの軍事独裁政権」のようなものであって、それは「全体主義」にまでは完熟していないという点で、新奇なものではない。全く言及されない日本の軍事主義体制も、その範疇に入るのだろう。
    アーレントによると全体主義体制は「構造」を持たない。全体主義とはひたすらに「運動」であって、それゆえに組織構造も絶えず更新されなければならない。ここでアーレントはベルクソンから「動くもの」という概念を借りてきている。
    この「動くもの」はある種の心理状態(根無し草)を浸食し、増殖し、あからさまなヘイトから殺意、そしてむしろ機械的で冷徹な殺人オートメーションへと突き進む。
    収容所におけるナチスの残虐な殺戮行為に触れる際、アーレントが「パブロフの犬」を引き合いに出すあたりが興味深い(P231付近)。
    鈴の音に条件付けられてえさを食うパブロフの犬はもはや「普通の動物ではなく、本性をねじまげられた動物」である。収容所でユダヤ人らはそのように扱われ、まずは個性も志向性も理性も奪われて、「動物ですらないものに変える恐るべき実験」の対象になってしまうのだ。
    こうした残虐性を、残虐行為としてではなく機械的な冷徹さとして完遂する道が、全体主義という「動くもの」によってもたらされた。
    いまの安倍自民政権は戦前に回帰しようとしている、とよく言われているようだが、私にはむしろ、日本の戦前よりは「ナチス的なるもの」に近づいているように見える。そして「日本」なる不純な概念をめざして不気味な「動くもの」が、我が国の一般市民のあいだにも広がってきている。その動きは90年代から既にあった。
    私たち自身が、他者や社会とのつながりを喪失し孤立した、「根無し草」に他ならないのだ。

  • さすがに全3巻を通読することはかなわなかったが、第3巻のみを読んだだけでも、「全体主義」というものが従来抱いていた自分のイメージ(暴制、圧制、独裁制)とだいぶん違っているということがよくわかった。その根拠がいかなるところから来るのかということについての理解はもちろん不十分であるが、ところどころ自分なりに理解できるところはあったと思う。
    このような時代だからこそ、全体主義についての理解を深めておくことは必要なことと思う。

  • ナツィのドイツも、スターリンのロシアも、戦時体制と戦後体制という相違点はあるものの、反ユダヤキャンペーンを利用したという意味では双方の全体主義思想に違いがあったとは思えない。しかも両者ともこの世を去った今、そこに言及する重要性はあまりないように思われる。むしろ、両者の特質にハマらず、独自の全体主義思想を構築し、今なお跋扈し続ける中国の方がどれだけ世界にとって脅威であることか。しかもこの国は国家元首が交代しても盤石な思想とイデオロギーで固められている。だからこそ今、ハンナ・アーレントの研究が見直されており、新しい全体主義研究が求められる。

  • 最終巻
    最後までやや冗長の感は否めないけど、エピローグはさすがです

  • 第三部「全体主義」の主要部分は、1968年版から追加された「イデオロギーとテロル」だと思います。イデオロギーには、凡庸な人を自覚ないまま恐るべき犯罪の加担者とする力があります。ですが、アーレントはイデオロギーだけでは弱いと思ったのでしょう。『全体主義の起原』初版が出版された時期、アメリカではマッカーシズムが吹き荒れていました。アメリカにおける反共イデオロギーと、フランス革命時のテルールに相通ずるものがあるとアーレントは考えていたのではという仮説を立てていますが、とにかくドイツ語を何とかしないと……

  • 目次

    諸 言

    第1章 階級社会の崩壊
       1 大衆
       2 モッブとエリオットの一時的同盟
    第2章 全体主義運動
       1 全体主義のプロパガンダ
       2 全体主義組織
    第3章 全体的支配
       1 国家機構
       2 秘密警察の役割
       3 強制収容所
    第4章 イデオロギーとテロル
    エピローグ

    訳者あとがき
          

  • 2巻の続き

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