ユング自伝 1―思い出・夢・思想

制作 : アニエラ・ヤッフェ 
  • みすず書房
3.89
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本棚登録 : 359
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622023296

感想・レビュー・書評

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  • 今年の探究テーマとして、ヒーローズ・ジャーニーというのがあって、その関係で、アーキタイプ、そして、アーキタイプといえばのユングがサブテーマとしてある。

    そんな感じで、これまで入門書どまりだったユング本人の本をボツボツと読んでいる。

    が、なかなか難しい。いわゆる難解というより、ユングの頭のなかにある思考プロセスをそのまま書いている感じなので、思考の前提とプロセスが違う人には、ゴチャゴチャを読み解くのが難しいという感じ。でも、そのゴチャゴチャを読み解くのが楽しいといえば楽しい。

    そういう分かりにくさはあるのだけど、ユングという人は、入門書を読んで思っていたオカルト的な人とは違って、科学的な人だったんだな〜、というのが、伝わってくる。

    みたいな話しをしていたら、「いやいや、ユングは、自伝を読まないとダメ」というご意見があり、これを読んでみました。

    で、読んでみると、いわゆるオカルト・ユングはここにあるんだな〜、という感じ。入門書などで紹介してあるオカルト的なエピソードはこの自伝が原典だったんですね。驚きのエピソードが、わりとさらっと書いてあったりして、そこにリアリティを感じた。

    この自伝は、ユングの意思で、生前は出版されなかったもの。つまり、生前に出された本は、オカルトと思われたくなくって、一生懸命、科学しようと頑張っていたものな訳ね。

    非論理的な世界をなんとか科学的に受け止めてもらうようにしたいと悪戦苦闘しているところが、ユングの本の読みにくさを増していたのだな。

    この自伝は、そういう悪戦苦闘が少なく、とても分かりやすい。オカルト的なものも含めて、ユングの全体像がみえる1冊。

    でも、ユングをはじめて読む人は、この分かりやすい1冊から始めるのではなくて、1〜2冊、ユングの本の読みにくさを体験してから、この本に進んでほしい気もしたりする。

  • えらい年月を空けての再読。なにしろユングなので所謂自伝とは趣が異なる。81歳のユングが幼年からの内的な体験を書き綴る。俯瞰する無意識下のヴィジョンが万華鏡のように鮮烈に渦巻き広がる。すごいパワーだ。客観的な筆致にありながら、若き日の苦悩、精神医学への探究心、真摯で強情な信念、貪欲な精神がひしひし伝わってくる。夢やイメージの解析も興味深い。自己のアニマとの対決の場面はアニマをまるで性悪女のように扱って笑える。フロイトへの容赦ない嘆きっぷりも…ね。もちろんオカルト現象もあり。兎に角面白くて、さあ2巻へ突入だ。

  • 色々なことに悩み塞いでいた中三の冬に
    地元の図書館でふと目に留まり読み始めたところ、
    彼の生々しい内的世界や外界との葛藤に共感し、誰にも言えないでいた孤独感を癒してもらった大切な本です。
    親や先生の存在、勉強、規則など思春期の頃の心の中は敵だらけで、未来への不安もギリギリな時期に
    この本と出会ったことは間違いなく私の中で大事な出来事だったと思います。
    彼の世界からは青い靄のような鋭い冷気を感じます。



  • みすず書房
    ユング 自伝 
    訳 河合隼雄 など

    自伝というより、宗教体験、精神医としての臨床経験、フロイト理論 を経て、自身の内的世界がどう変容し、どのように自己と向き合ってきたかを記録した本


    患者の理解者であり、宗教的であるユング理論の背景が 随所に出てくる。マンダラを通して、ユングが達した境地は、無意識が自動調節されるということか?


    序文「私の一生は、無意識の自己実現の物語である〜我々はいったい何であるか〜神話を通してのみ語ることができる〜八十三歳になって私が企てたのは、私個人の神話を物語ることである」


    名言「人間は、人間が統制することのできない〜心的過程である」




    〈その他名言〉
    精神医学では〜患者は話されていない物語をもっており、それを概して誰も知らないでいる〜治療は個人の物語をすっかり調べあげた後ではじめて始まる


    診断は患者の役に立たない〜物語だけが人間の背景と苦しみを示し、その展開でだけ医者の治療が作用しはじめる


    心理療法家は〜患者を理解せねばならないだけでなく、自分自身をも理解すべきである


    私の目標は、ものごとを成り行きにまかせようとすることである。その結果生じてきたことは、患者が自分の夢や空想を自発的に私に話してくれることになった


    私が情動をイメージに変換する〜情動の中にかくされたイメージを見出すことにより、私は内的に静められ、安心させられた

    私の内的人格の法則〜より高い理性に従い、無意識との対決における実験という奇妙な仕事をもって進んでゆく〜そこで意識して、私は自分のアカデミックな経歴をすてた

    マンダラ〜自己、すなわち人格の全体性である。それはすべてがうまくいっているときは調和的であるが、自己欺瞞に耐えることのできないものである

    マンダラは、日毎に新しく私に示された自己の状態についての暗号であった。それらの私は私の自己(私の全存在)が実際に働いているのを見た

    マンダラを描き始めてから、すべてのこと、私が従ってきたすべての道は〜中心点へと導かれていることが解った

    私は心の発達のゴールは自己である〜それは直線的な発展でなく、自己の周囲の巡行のみである〜すべてのことは中心に向けられる

    中心と自己についての自分の考えを夢によって確実にしえた。私はその本質を、私が〜ひとつのマンダラに表現した

    マンダラを自己の表現として見出す〜マンダラと中心の周りの巡行























  •  ユングのテキストは人間の可能性を示唆したものだ。それを自分自身にも敷衍(ふえん)したのは慧眼以外のなにものでもない。
    https://sessendo.blogspot.com/2021/05/1.html

  • ちょうど危険なメソッドを見た後ですし、つーことで彼が抱いてきた世の中への疑問、打ち震えた感動、夢、といったものに行き着くまでの変遷が事細かに書かれてまして、自分の足跡を辿る時、こういうふうに進めていく人もそうそういませんね、おそらく。学生時代までに生きづらさを感じ続け、ひょんなことから天職を見つけ…という流れは読み物として普遍的であるのに、自身の内的世界を見つめる様は重要な示唆に満ちていると感じさせますね。

  • ユングは、ギムナジウムでは数学が苦手だったそうで、大いに親近感。

    ただ、

    a=bで、b=cならば、a=cとする命題について、定義にしたがえば、aはbとは異なる何物かを意味し、従って別のものであり、bと等しいとはできない。cは勿論のことである。にもかかわらず、上述の等式を成立せしめるのだ。
    a=bは。私にはまっかなうそ偽りのように思えたのである。

    こんな生徒がいたら、先生はやりにくいに違いない。

    でも、自伝のなかで、

    それがどれほどのものかが八十四歳になった今、やっとわかりかけてきた。

    そうです。

    文系の自分には、これだけで、読む価値のある一冊です。

    オリヴァー・サックスの「妻を帽子とまちがえた男」と似た雰囲気。

  • BSフジ「原宿ブックカフェ」のコーナー「ブックサロン」で登場。

    ゲストの鏡リュウジさんの『人生を変えた一冊』
    「僕が10代の時に、自分が好きな占いとか魔法とかそういうものが迷信だと気がついてしまった面もあるんですよね。
    ところが、じゃあやめればいいのに、やめられない。自分の中に、2つ自分が居た気がするんですよ。非常に迷信的でマジカルな自分と
    合理的というか、お利口ぶってる自分。それがものすごい自分のなかでケンカするんですよね。で、今言った「2人の自分」っていう同じ
    テーマが、このユングの自伝に出てくるんです。ものすごい偉い学者であったユングも、同じことで悩んでいて、それで、葛藤をなんとか
    するために哲学と侵略を重ねてきた。そういうところがあったので、この本にすごく影響をうけてきたんですね。」



    原宿ブックカフェ公式サイト
    http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/index.html
    http://nestle.jp/entertain/bookcafe/teaser.php

  • 『私の一生は、無意識の自己実現の物語である。今83歳になって私が企てたのは、私個人の神話を物語ることである。物語が本当かどうかは問題ではない。私の話しているのが私の神話、私の真実であるかどうかだけが問題なのである』

    ユングの自伝は、ユングの死後、1962年に発行されました。

    この本の原題は、"Memories, Dreams, Reflections" です。
    この原題が、正確にこの本の内容を表します。
    つまりこの本は、ユングの思い出と夢と思想について書かれたものです。

    この本の前半は、ユングの人生の出来事と、見た夢、幻覚、超常現象などについて語ります。

    ユングは、霊能力を持つ家系に生まれたため、本人も一種の霊能力を持っていました。
    彼は未来を予知したり、人の人生を透視したり、霊を見たり、超常現象を起こしたりすることが出来ます。

    子供の頃からとても鮮明な幻覚や夢を見ます。彼の心理学的研究は、自分が出会う不可解な現象、幻像、体験を、どうにかして科学的に基礎づけたいという動機から始まっています。

    学生時代にはゲーテやニーチェを読み、『ファウスト』や『ツァラトゥストラ』に大きな影響を受けます。

    精神科医として独立し、統合失調症患者の妄想の研究をして名声を得ます。

    フロイトの『夢判断』を読んだ後、フロイトと会って意気投合し、フロイト共に精神分析運動の発展に尽力します。しかし、数年でフロイトとは訣別します。

    フロイトと訣別した後は、深刻的な精神的危機に陥り、精神病に近い状態に陥ります。
    世界が血の海で一杯になるという凄まじい幻覚を体験したりします。

    その中で、曼荼羅をひたすら描き続け、それが自己の全体像を表すこと、人間の目的は個性化への道であるという洞察を得ます。

    後半に入ると、グノーシス主義と錬金術の研究に没頭します。

    また、アフリカやインドを旅行し、西洋ヨーロッパ文化を、その外側から見ようとします。

    1944年には心筋梗塞で倒れ、死線をさまよいます。その最中、1500キロメートル上空まで上昇し、そこから地球を見るという体験をします。

    ユングは、死後の生命が存在し、死後の世界でも死者達はこの世のことを知りたがっていると考えます。

    この自伝は、特異な本です。内容の多くが、ユングの内的世界で起きたことによって占められています。

    ユングは、普通の人間が見ることができないものを見ることが出来る人でした。いわゆる巫女、呪術師、シャーマンという、特殊能力を持った類の人間でした。その為、一生涯にわたって、孤独な思いに悩まされました。

    ユングの心理学は、シャーマンがその内的世界を分析し、理論化した、とても特異な心理学です。

    オカルトやスピリチュアルが好きな人には、たまらない心理学者だと言えるでしょう。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(立花隆選)15
    心理学
    ユングのどんな学問的著作より面白い。

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著者プロフィール

1875-1961。1875年7月26日、スイス北部のケスヴィルにて生まれる。バーゼル大学卒業後、ブルクヘルツリ病院のブロイラーのもとで言語連想実験の研究に従事。その後、フロイトの精神分析運動に参加し、フロイトの後継者と目されるほど、その中心人物として精力的に活動した。1913年にフロイトと決別。その後は独自の心理学の構築に専心し、「コンプレクス」「元型」「集合的無意識」「無意識の補償機能」「内向/外向」「個性化」などの独創的な理論を提唱していった。1961年6月6日、死去。20世紀最大の心理学者の一人。

「2019年 『分析心理学セミナー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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