戦争とプロパガンダ

  • みすず書房
3.62
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (121ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622036814

作品紹介・あらすじ

"9・11"を全体の文脈のなかにどう位置づければよいか。ニューヨーカーとして、アラブとして、知識人として、事の真相に迫った、大注目のメッセージ集。

感想・レビュー・書評

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  • 9・11前後ネットで発信したサイードからのメッセージ。わかりやすく真摯に丁寧に理性をもって述べている。当時は米国のプロパガンダに誘導されたマスコミの垂れ流しのままに一方の側面でしか事態を見られなかった自分が愚かしい。これは9・11に限らずパレスチナ問題に一貫して行ってきたアメリカの陽動作戦に他ならない。物事を片方の側面だけで捉えることは不可能で危険だ。善と悪のボーダーラインを安直にひかぬこと。対抗する相手にも寛容であること、その上で妥結策を講じることを、身の危険も顧みず声を挙げたサイードは感動的に正しい。

  • 二項対立的な世界の捉え方、原理主義テロ集団があたかもアラブ世界を代表するような言説の蔓延に警鐘を鳴らす、E•サイードの論説集。ビン•ラディンは脱宗教化した文脈で捉えられなければならない、やつはデマゴーグに過ぎない、と断言。9.11が、イスラエルの苛烈で非人道的な対パレスチナ政策の正当化に援用されていること指摘。

    世界を単純化し、根拠のない抽象化されたイメージのみでして語る〝知識人〟は、戦争屋のプロパガンダを支援する害悪でしかない。世界全体を掌握することなどできない。人道的見地からの解決を、力を合わせて苦しみながら探っていくことだけが戦争を終わらせることができる。

  •  シリーズがたしか「その3」までだったかな?、出ていると思いますが、批判もいろいろあるのかもしれませんが、「オリエンタリズム」をはじめ、「もう古い」ではないと思います。昔。昔、ですが高校生にすすめていました。
    https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202002080000/

     

  • 戦争とプロパガンダ

  • サイードが好きなので。
    サイードの分析は、ありきたりな言い方をすれば、とても鋭い。
    メインストリームからやや外れたような視点から、しかも非常に俯瞰的に捉えているような印象を受ける。
    メディアが垂れ流す一面的な情報に対し、それだけか?と問いかけるようなアプローチが必ずある。

    今、日本のマスコミは極めて単調で、安易な発信しかしない。
    サイードのようなコメンテーターがいれば、これほどまでに貧しい状況にはならなかっただろう。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:316.4||S
    資料ID:50200331

  • パレスチナについて、西洋ではない側からの視点を得られる本

    オリエンタルって東洋、アジアのことだと思っていたのだけれど、トルコあたりのことなのか。
    パレスチナ人についてはびこっている悪いイメージは、自国の努力が足りなかったのだという。
    自国の宣伝、周知をしないがために、海外から誤解され、他国が自分たちにいいように宣伝したものが信じこまれていて……という状況は、まさに日本に通じる。



    自分たちの目的とするところは…略…「共生」であるということを十分にはっきりと表明してこなかったためであると述べてきた。…略…自分たち自身の政策について検討し、さらに検討を重ね、熟考することにただちに取りかからねばならない。自分たちに期待することが、他者に期待すること以下であってはならない。わたしたちの指導者がどこへわたしたちを導こうとしているのか、またいかなる理由にもとづいてそうするのかを、すべての人々に立ち止まって考えてもらいたいものだ。懐疑的態度や再評価は必需品であって、ぜいたく品ではないのだ。

  • ひさびさにサイード!政府や世論への批判ももちろんだけど、矛先が広くて良い!テンションもちょうど良い感じがした!しかしアメリカって困った国だけど、ブッシュJr時代ってほんとに酷いもんだったなぁ・・・。

  • p.20
    いかなる神も、いかなる抽象的な理念も、無実の人間を大量に殺戮することは正当化できない。

    p.34
    わたしたちは、貧困、無知、文盲、抑圧がわたしたちの社会にはびこるようになったことに対する自分たちの責任について考えはじめなければならない。わたしたちはシオニズムや帝国主義について不満をとなえているにもかかわらず、このような弊害が自分たちの社会に根をはることを許してきたのだ。たとえば、私たちの中の何人が、宗教とは無関係な政治を率直に公然と擁護し、イスラエルや西欧におけるユダヤ教やキリスト教の世論操作を非難するときと同様の真摯で徹底した非難を、イスラーム世界における宗教の利用に対してぶつけてきただろうか?

  • 902夜

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著者プロフィール

エドワード・ワディ・サイード
(إدوارد سعيد, Edward Wadie Said)
1935年11月1日 - 2003年9月25日
エルサレム生まれのパレスティナ人で、アメリカの文芸批評家。エルサレム、カイロで幼少時を過ごし、15歳の時にアメリカに渡る。プリンストン大学を卒業後ハーバード大学に学び、コロンビア大学の英文学・比較文学教授を務めた。サイードはまた、パレスティナ民族会議のメンバーとしてアメリカにおけるスポークスマンを務め、パレスティナやイスラム問題についての提言や著作活動など重要な役割を担った。『オリエンタリズム』(平凡社)、『知識人とは何か』(平凡社)、『世界・テキスト・批評家』(法政大学出版局)、『文化と帝国主義』(全2巻、みすず書房)などの主著が邦訳されている。

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