夢見つつ深く植えよ

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制作 : May Sarton  武田 尚子 
  • みすず書房 (1996年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622045977

夢見つつ深く植えよの感想・レビュー・書評

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  • 一生持っていたい本のひとつです。
    今は分からないかもしれないけれど、でも、この本をずっと手元に置いておけば、きっと年をとっていくということは恐ろしくない気がする。

    まず、タイトルで…殺されます。
    ノックアウトです、このタイトルにまず。

    大自然とともに生きたくなり、庭いじりをしたくなり、花を大事にしたくなります。

    たとえばこんな感受性が好き。
    「冬は動物も人も、骨の髄までそぎ落とされる季節。しかし多くの動物は、冬を軽くいなすかのように冬眠する。一方われわれ人間は、高揚やうっ屈の感情の流れに、裸でさらされる」
    「彼は林で藪を切り開き、私は机に向かい、言葉のしげみを刈り込む」

    でもやはり最後のチャプターの文章、そしてタイトル由来であるサートンの詩がよいです。

    「私が植えた梅が花を咲かせるまでに五年かかった。そして、集いあう白い花をぬって、高麗うぐいすがその炎のような色を見せに戻ってきてくれるまでに、さらに五年かかった。そして私自身は、ここに植えられてからまもなく10年を迎えようとしている…」


    長いさすらいの実りを
    収穫する祝福されたひとよ
    大いなる遍歴ののちにようやく
    ふるさとへ船を向けた老ユリシーズにも似て
    智恵に熟し身丈をのばして
    夢見る想いを深く植えるために


    想いって「植える」ものなんですね…
    もう、その発想に、胸がいっぱいです。

    私も植えられた場所でせいいっぱい枝葉を伸ばしたい。

  • 「私から年齢を奪わないでください。働いて、ようやく手に入れたのですから」との印象的なフレーズ(「独り居の日記」)に誘われて読み始めた、アメリカの女流詩人メイ・サートンのエッセイである。内省的な珠玉の「独り居の日記」に先立つものである。著書は、45歳のときに、亡くなった両親から譲り受けた家具をおさめるために、森・小川に囲まれたアメリカの片田舎に田舎屋を購入した。自然に振り回されるも、花で咲き乱れる庭を作り上げ、個性的な隣人・ごく親しい友の訪れを楽しみにしつつ、創作に勤しむ十数年の日々・・・。何とも他に類がなく、深く豊穣な書物である。亡くなる82歳まで、背筋をピンと伸ばしてまっすぐに生きた著者のあり方には感銘を受ける。他のもの(「海辺の家」「回復のとき」)も読んでみようかな・・・。

  • この本を読み始めてすぐ、バージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』の世界と重なった。バートン自身がサートンと同じような体験をしたことは、『せいめいのれきし』を読んで知っていた。農業社会だったアメリカで、しだいに都市化が進み、見事に手入れされていた農場が荒れ果てていく。何世代か前の人たちが懸命に森を拓き、手塩にかけてきた農場が無惨な姿に変わっていく。バートンが描き出す長い時間の流れは、サートンの本と共通するものだと思った。
    両親がベルギーで使っていた家具に居場所を与える、広大な荒れた庭のある家を買い求めた最大の理由はこれだった。そして、ネルソンというニューハンプシャーの片田舎に移り住み、芸術的手腕で生活を切り開いている隣人たちに出会う。たとえば、庭師のパーリー・コール。ネルソン周辺の荒れた農場をそのままに捨て置けない彼は、サートンのもとを訪れ、庭の手入れを申し出る。庭を完成させていく姿勢の妥協のなさ、70をすでに越えたとは思えない働きぶりには、サートンならずともほれぼれする。
    この引っ越しは、創作活動の障害となるとなるあらゆる人間関係の枝葉を取り払い、孤独な状態に自分を追い込むことも目的にしていた。人生の半ばで挑んだ厳しい戦いの場、この古い家にはそういう意味もあったのだ。

  • -二〇歳では人は不死身だが、五〇代も半ばを過ぎると、死の予覚のために、時間がまったく異なった意味をもちはじめる-

    賢く、強い女性が自然と向き合う中で哲学する感が、アン・モロー・リンドバーグの「海からの贈り物」を思い出す。40歳になったら読んでほしい一冊。

  • まず、なまじ文系の脳味噌なんかを持っていたらこのタイトルの耽美さにうっとりすると思う。すばらしくてすばらしくて何もかもにうらぶらしさを思って嘘っぽい自分にチーズなんかをぶちまけた、そうやった年代物の篭った臭気、瘴気が鼻をつく。そして溺れる。溺れた。

  • 人生の真髄を惜しみなくさらけ出し、生きることの意味を問いかけるメイ・サートンの自伝的作品。

  • [18][08.08.05]再読。<BR>
    [06.04.08]購入につき再読。<BR>
    【私は人の死に方は、その生き方あるいは愛し方と同じほどはっきりと、その人間の本質を見せるものだと、信じるようになった。(中略)彼女は閉じていく花のように自らを内部へと包み込み「離していかせる」ために、彼女が愛したすべてのものから自分をやさしく切り離してゆき、ついには私たちには光、人間的なものを感じさせない光のように思えるまでになった。あたかも、死が連れさることのできるのは残された魂だけかのように。】 (p165 l4~9) 

  • 一軒の家に出会い、住処として我がものとするまでの軌跡。自然と自らとに対峙し、周囲に息を吹き込んでゆくサートン女史の素朴で丁寧な暮らし…まさに夢を植え込んでゆくような。

  • 「独り居の日記」の前編と見受けられる書。「独り居の日記」に描かれる、著者独特な孤独感を理解するには、ぜひ一読すべき書。

  • サートンのように小さな一軒屋に住み畑を耕し花を育てる生活、遠い夢でも心意気だけは「Plant Dreaming Deep」!

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メイ・サートンの作品

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夢見つつ深く植えよの作品紹介

片田舎に老屋を買い、ひとり住む-うぐいすに聞きほれて。家探しから個性的な隣人との出会いまで、終生のテーマとなる「孤独」と対峙した最初のエッセー。

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