アリアドネからの糸

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著者 : 中井久夫
  • みすず書房 (1997年8月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622046196

アリアドネからの糸の感想・レビュー・書評

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  • 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/392頁
    定価 3,456円(本体3,200円)
    ISBN 4-622-04619-9 C0095
    1997年8月8日発行

    「この本に収めたものには、硬いものも、さほどでないものもあるが、前の二冊と比べても、際立って謎ときの意味合いを含んでいるように思う。つまり私が私なりに蓄積してきた経験や知識にもとずいてよりもむしろ私の乏しい推理と構成との力を費やして、私が踏み込んだことがない迷宮に入ろうとした試みである」(あとがきより)

    『記憶の肖像』『家族の深淵』につづく中井久夫の第三エッセイ集。匂いや兆しなど、ニュアンスに対する著者のアンテナ感覚が生んだ文章は、これまで同様、多方向にわたる――いじめについて、本について、色について、記憶について、その後の阪神大震災について、PTSDについて、ヴァレリー詩の秘められた構造について、創造と癒し序説など、長短32篇と詩6篇を収録。巻末の「ロールシャッハ・カードの美学と流れ」は、ホームズ=ギンズブルグばりの推理を重ねたみごとな謎ときで、改めて著者の力量に驚かずにはいられない。その文章の一つ一つには、多層にわたる人間の可能性への思いが刻まれている。
    https://www.msz.co.jp/book/detail/04619.html


    【目次】

    I
    いじめの政治学

    II
    戦時下一小学生の読書記録/移り住んだ懐かしい町々/三幅対/医師は治療の媒介者/ロサンゼルスの美しい朝/清明寮に小豆島からオリーヴの木が来た/二度目のルミナリエ/ハードルを一つ上げる/日本の心配/感銘を受けた言葉/はじめの一冊/私の選ぶ二十世紀の本/私の「今」

    III
    赤と青と緑とヒト/症状というもの――幻聴を例として/記憶について/精神科治療環境論/喪の作業としてのPTSD/阪神・淡路大震災のわが精神医学に対する衝迫について/二年目の震災ノート/「こころにやさしい」社会

    IV
    リッツォス『反復』より/これは何という手か

    V
    「若きパルク」および『魅惑』の秘められた構造の若干について/詩を訳すまで/訳詩の生理学/脳髄の中の空中庭園――ヴァレリー「セミラミスのアリア」注釈/セミラミスのアリア/私の三冊

    VI
    「創造と癒し序説」――創作の生理学に向けて/ロールシャッハ・カードの美学と流れ

    あとがき
    初出一覧

  • 精神科医・中井久夫氏のエッセイ集。内容は冒頭の「いじめの政治学」から、自らの人生を振り返るもの、著者の専門のひとつといえるであろう「記憶」に関するもの、病院の設計、阪神大震災、詩作に関するもの、最後はロールシャッハ・カードの謎解き、と多岐に亘っています。他のエッセイ集と比べると、比較的「精神医学」テイストが薄い作品のように思われました。

    この作品は、特にどのエッセイが優れていたとか、この文章が印象に残っているとか、そういうことを言いにくい一冊です。もちろん読んでいく中でいろいろな発見があるものの、ここに注目!とは言えない。わたしは普段、本の端を追ったり、本文に線を引いたり囲ってみたりと、「本を汚す派」なのですが、この本についてはなぜかそれができません。表紙が非常に美しいことも関係しているのかもしれない。そうはいってもつまらないわけでは決してなく、繰り返し読んできた本でもあります。著者独特の文体に起因するであろう、不思議な魅力があります。

    後半の詩に関する文章は、わたしを含め一般の方は読みづらいのではないかと感じます。本書に触発されて岩波文庫の『ヴァレリー詩集』も買ってみたのですが、あまりにも晦渋で全く読めませんでした。どうにも取っ掛かりがありません。そのようなわけで、著者の作品を初めて読む、という方がいらっしゃるとしたら、本書よりもちくま学芸文庫から出版されているもののほうが入りやすいかな、とは思います。

  • とてもすべてを読むことはできなかった。訳詩の部分はとばした。でも、いじめの政治学は必読。子どもの権力社会という見方は卓越している。そのほかにも、阪神淡路大震災後の省察は今日につながる。また、病棟を作る際の計画は学校建築にも役立つ。

  • 埼玉愛犬家連続殺人事件、北九州監禁事件、尼崎事件、これらの事件を契機に関心をもち「いじめの政治学」を読むために購入。上記は極めて知的に「いじめ」という暴力の構造を解体していく名著。これから何度も読み返すだろう。

  • ダイヤモンドのようなエッセイがあるかと思えば、ただただ読むのが苦痛でしかない文章もある。いじめや文体など明晰なものから、駄文まで混ざっていて、再編集したくなる。繰り返しも多く、それだけで、寄せ集め感が出てしまっているのも惜しい。

    ・私が自分と折り合いをつけられる尺度は私が他者と折り合いをつけられる、その程度である。
    ・光賦活、アカとアオ
    ・外来でも脈拍が正常化するまでに数分間かかる。
    ・患者に選んでもらった中では、デュフィが一番
    ・体験の分かち合いは、事実、感情、事実の順番
    ・ゲーテ、一カ国語しか知らないものは一カ国語をも知らない
    ・訳詩は原詩より劇詩になる
    ・カルテ、刑事は現場を百遍踏む
    ・読み過ぎると、意味飽和が起きる。
    ・技術移転、語学力はほどほどが大事
    ・創作者の無力感
    ・文体獲得で初めて創作は癒しになる

  • 精神科医・斎藤環氏は先日ツイッターで2012年大津のいじめ騒動に言及し、“中井久夫は集団内で「いじめ」関係が成立する過程を三段階に分けた。被害者の「孤立化」「無力化」「透明化」。「透明化」に至って、いじめの存在は完全に隠蔽される。”と、中井久夫を引いた。『高校生活指導127号 いじめの政治学 特集』ともうひとつがこの本だという。
     
    日本の「いじめ」という現象は、もっと広く生じているいかにも日本らしい出来事と同じものに思われるし、最近宮台氏が代官山と浅草を例に挙げて<自治>について語っていることとも関連があるように思われる。参考になるかと。(但し大学図書館には無い)

  • p.37下町の定義が面白い。

  • 中井久夫なのでカテゴリはとりあえず心理学で。噂の「いじめの政治学」を読むために借りました。

  • 【目次】


    いじめの政治学


    戦時下の小学生の読書記録
    移り住んだ懐かしい町々
    三幅対
    意志は治療の媒介者
    ロサンゼルスの美しい朝
    清明寮に小豆島からオリーヴの木が来た
    二度目のルミナリエ
    ハードルを一つ上げる
    日本の心配
    感銘を受けた言葉
    はじめの一冊
    私の選ぶ二十世紀の本
    私の「今」


    赤と青と緑とヒト
    症状というもの──幻聴を例として
    記憶について
    精神科治癒環境論
    喪の作業としてのPTSD
    阪神・淡路大震災のわが精神医学に対する衝迫について
    二年目の震災ノート
    「こころにやさしい」社会


    リッツォス『反復』より
    これは何という手か


    「若きパルク」および『魅惑』の秘められた構造の若干について
    詩を訳すまで
    訳詩の生理学
    脳髄の中の空中庭園──ヴァレリー「セミラミスのアリア」注釈
    セミラミスのアリア
    私の三冊


    「創造と癒し序説」──創造の生理学に向けて
    ロールシャッハ・カードの美学と流れ

    あとがき
    初出一覧

    *****

  • 【目次】

    ?
    いじめの政治学

    ?
    戦時下の小学生の読書記録
    移り住んだ懐かしい町々
    三幅対
    意志は治療の媒介者
    ロサンゼルスの美しい朝
    清明寮に小豆島からオリーヴの木が来た
    二度目のルミナリエ
    ハードルを一つ上げる
    日本の心配
    感銘を受けた言葉
    はじめの一冊
    私の選ぶ二十世紀の本
    私の「今」

    ?
    赤と青と緑とヒト
    症状というもの──幻聴を例として
    記憶について
    精神科治癒環境論
    喪の作業としてのPTSD
    阪神・淡路大震災のわが精神医学に対する衝迫について
    二年目の震災ノート
    「こころにやさしい」社会

    ?
    リッツォス『反復』より
    これは何という手か

    ?
    「若きパルク」および『魅惑』の秘められた構造の若干について
    詩を訳すまで
    訳詩の生理学
    脳髄の中の空中庭園──ヴァレリー「セミラミスのアリア」注釈
    セミラミスのアリア
    私の三冊

    ?
    「創造と癒し序説」──創造の生理学に向けて
    ロールシャッハ・カードの美学と流れ

    あとがき
    初出一覧

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第三エッセイ集。匂いや兆しなど、ニュアンスに対する著者のアンテナ感覚が生んだ文章は、これまで同様、多方向にわたる-いじめについて、本について、色について、記憶について、その後の阪神大震災について、PTSDについて、ヴァレリー詩の秘められた構造について、創造と癒し序説など、長短32篇と詩6篇を収録。巻末の「ロールシャッハ・カードの美学と流れ」は、ホームズ=ギンズブルグばりの推理を重ねたみごとな謎ときである。

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