カフカ、映画に行く

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制作 : Hanns Zischler  瀬川 裕司 
  • みすず書房 (1998年8月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622047070

カフカ、映画に行くの感想・レビュー・書評

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  • カフカの手紙は良かった。

  • フランツ・カフカとキネマトグラフの、ちょっといい関係。

     主人公が朝起きたら毒虫にかわっていた『変身』。無限に近く円運動を繰り返す未完の大作『城』『審判』。何だか重苦しい作品が目立ってしまうフランツ・カフカだが、いつもいつも陰気なものを書く男だったと結論づけるのはよそうと考え始めた。
     私が好きなのは『放浪者(アメリカ)』の明るい筆致だ。カフカの描く影もいいけれど、明るさにより一層惹かれるものがある。
    『カフカ、映画に行く』によると、彼は出歩くのが好きな男だったという。散歩の習慣があり、映画館に出かけ、鉄道に興味を示し、外国旅行を愛した。ちなみに、カフカが生きた時代には、映画はキネマトグラフの名で親しまれていた。いい響き。無声映画というところも素敵。
    「テクノロジーに強い関心を持つ好奇心旺盛な若者」であったと、訳者は述べる。カフカ像にかかっていた煤をはらわれたようで、ほっとする。

     人の動作を丹念に追いかけて書き込むカフカの小説には、どこか映画的なところがある。漠然と映画的だというだけでは満足しなかったのがツィシュラーだ。いつ、どこで、どの作品を観たか、探偵みたいに追跡調査していくのがスリリング。
    『白い奴隷女』『ニック・ヴィンテールとモナリザの盗難』『シオンへの帰還』と、具体的なタイトルが挙がる。その中でも、どういった映画がカフカの創作に影響を与えたか、ツィシュラーは冷静に見極めたがる。具体的にしないと気がすまない性格なのかも。

     映画のスチル写真やフィルムの断片など、集められた証拠資料がにぎやかにはさまれる。カフカは、写真一枚とってもつくづくと眺め入った人。
     熱っぽい調子で映画について書き残している。映像がもたらした刺激を、衝撃を。日記に、手紙に。めんめんと綴られた文章は、血が通っているように時折熱い。受け取った人もきっと丁寧に扱い、文字にのり写ったカフカの激情をしっかと受け止めたのだろう。いい時代。

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