結ぼれ 新装

  • みすず書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622049111

感想・レビュー・書評

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  • 相手の心の中を勝手に感じ・悟り・慮り、そしてそれに恐れ・怯えたり、怯えないことに怯えたりを、お互い勝手にしている。
    数学の命題問題のようにややこしく、読み進めるのはなかなか大変だった(理解できたとは思っていない)けど、心の中の一瞬の渦を文章に起こしているようだったり、他者に幻想を抱き勝手に期待し(そして勝手に裏切られ)たりする様のようでもある。
    最後に当たる5章に行き着いたときに、急に仏教的・東洋的な言葉や思想が交じって興味深い。『1本の指が月を指し示す』のくだりは解説も合わせて、すごく好き。

    安谷白雲『言葉というものは、あたかも月をさす指のようなもので、指の示す方向において、みずから月を見出さなくてはならないと同じく、言葉そのものは、真の事実ではない。ただその言葉によって真の事実を悟ることが肝要である』

  • 私はこの本の感想を書こうとした。
    彼女は私がこの本の感想を書こうとしたことを知っている。
    私は彼女が私がこの本の感想を書こうとしたことを知っていることを知っている。
    彼女は私がこの本の感想を書こうとしたことを知っていることを知っていることを知らない。
    私は彼女が私がこの本の……

  • 『自分が思う相手の気持ちと、相手が思う自分の気持ちは決して一致しないものなのだ!』という事は理屈ではわかっていても、決して納得することは出来ないものです。
    相手を思うあまりに深い思考の渦に呑み込まれ、相手もまた自分のことを思ってくれるあまり、深い思考の渦に呑み込まれてしまう様子がこの『結ぼれ』には描かれています。

    人はなかなか自分の置かれている状況を客観的に把握できません。
    と同時に、理屈では理解しても、この罠から抜け出す事も出来ません。
    心の底からわき上がる感情は決してコントロールの効かないものですから、どうしようもない事なのでしょう。

    この本が理解できない人は、とても救われているでしょう。
    自分がこの本の状況と同じ思考に陥ってしまっている事に気付いてしまったら、救われる事はないでしょう。
    でも、自分の状況を客観的に理解できたとき、救いの道は開かれている様には思えます。

    思考の幅を広げ選択肢を多く設ける。

    少年時代に、僕が救われた様に、救われた人は大勢いるのではないでしょうか?

  • 「ひき裂かれた自己」「狂気と家族」につづくレインの新著。ふしぎさに充ち、魅力あふれる小さな本。これは卓抜な精神医学者レインの視野にある症例の集合ではない。これは、人間の出会いがつくる心の状況の多様なシェーマについての、一つのシナリオ、一つの短篇小説、一つの心理的寓話ともいえよう。あるいは定理集、また詩集ともいえよう。人間の心理の世界で、リンネが分類学で試みたことは、まだ実現されていない。これは、一つのデッサンであるが、正確でエレガントである。「マーヤ」の織りなす網、幻想の画布は、終りない夢の彼方へ、人を誘ってやまないだろう。

  • 言葉遊びとして詩的な文章。
    読む度に心揺さぶられるのは病んでいるから?

  • 「2011年 突撃!先生にインタビュー POP」

    http://opac.lib.tokushima-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?materialid=211000984

  • 『好き?好き?大好き?』が良かったので、ずっと神保町などいろいろなところを探しまわっていたのですが見つからず、先日ブックオフにぽろっと置いてあるのを発見し、即レジへ。

    『結ぼれ』、聞き慣れない単語ですが、調べたところ、「結ばれてほどけにくくなる」、「こころにわだかまる」などの意味があるようです。

    主としてジルとジャックの会話で話は進むのですが(それ以外のパートもある)、いずれも、例えば気付いていることを気付かれないようにしている、それに相手が気付いているかもしれないけど、私はそれを気付かないふりをする…といったように、まさに「結ぼれ」ている状況が次々と描かれる。

    日常生活でそんな場面は多々あり、「そうだよなあ」と思ったりもしたのですが、正直、何が何やら分からなくなることも多く、読んでてかなり疲れました(笑)

  • よくわからないけど、よくわかる。

  • 精神医学に「人間性」と実存を求めた求道者R.D.レイン。彼が患者との対話のなかで見つけ出した精神の迷路。人は自分を見つけるためにこんなにも複雑な回路をたどる。自分の存在を肯定するために、いくつもの筋道を用意するが、ときにその自分の迷路に迷ってしまう。そう精神が長すぎる糸のように絡まりあってほどけなくなる。まるで「結ぼれ」ているように。これは「結ぼれ」た人の精神のコメディであって、学術書ではない。ただ、感動や叙情は期待してはいけない。まじめにこんがらがっているだけである。解くのは大変だから、一回で理解できないからといって、放り投げないこと。

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