チーズとうじ虫―16世紀の一粉挽屋の世界像

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制作 : 杉山 光信 
  • みすず書房 (2003年4月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622070405

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チーズとうじ虫―16世紀の一粉挽屋の世界像の感想・レビュー・書評

  • 16世紀のイタリア、フリウリ地方にメノッキオと呼ばれた粉挽屋がいた。この粉挽屋、ただの粉挽屋ではない。文盲の多かった時代に読み書きができたという事実だけでもかなり非凡であるが、異端審問官を前に滔々と自らの宇宙生成論を開陳したというから尋常ではない。おまけにそれが誰かの借り物の思想でもなんでもなく「自分の脳味噌からひっぱりだした」独創の見解だということを再三強調している。その宇宙生成論(コスモゴニー)というのがこれまたけったいだ。「すべてがカオスである。(中略)この全体は次第に塊りになっていった。ちょうど牛乳のなかかからチーズの塊ができ、そこからうじ虫があらわれてくるように、このうじ虫のように出現してくるものが天使たちなのだ(省略)」という。

    ギンズブルグはこのひとりの粉挽屋の世界像を異端審問記録を基に精緻に分析していく。その手際の良さ、鮮やかさはさすがと思わせる。この独自の思想について、著者はまずルターの教義や再洗礼派の教義などとの類似点を指摘し、それに近づけてみては引き離し、次にはメノッキオが読んでいた書物(おもに聖書関連)の(直截的)影響を指摘しながらも、そこから再度引き離し、最後には口承によって伝えられてきた民衆的文化とこれらの書物の交点へと読者を導く。いいかえるとその世界像は口承の農民の伝統文化なのだが、書物との接触こそがメノッキオにその世界像を表現するための手段、道具を提供したという。

    神学博士である異端審問官を前にひるむどころか得々と述べ立てた、その思想のある側面(宗教・制度の相対性)はモンテーニュに通じるものがある、とも著者は指摘している。こう考えてみると、そうとう時代の先を進んでいたとしか思えない。この一粉挽屋の描いた「新世界」がどのようなものだったのか、なにやら奇妙なほどに想像力をかきたてられてしまう。

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チーズとうじ虫―16世紀の一粉挽屋の世界像の作品紹介

16世紀イタリアのフリウリ地方に住む粉挽屋。その男の名はドメニコ・スカンデッラといったが、人びとからはメノッキオと呼ばれていた。白のチョッキ、白のマント、白麻の帽子をいつも身につけ、裁判に現われるのも、この白ずくめの服装だった。彼は教皇庁に告訴されていた、その肝をつぶすような異端のコスモロジー故に。彼は説く、「私が考え信じているのは、すべてはカオスである、すなわち、土、空気、水、火、などこれらの全体はカオスである。この全体は次第に塊りになっていった。ちょうど牛乳のなかからチーズの塊ができ、そこからうじ虫があらわれてくるように、このうじ虫のように出現してくるものが天使たちなのだ…」。二度の裁判を経て、ついに焚刑にされたメノッキオ。著者は、古文書館の完全な闇のなかから、一介の粉挽屋の生きたミクロコスモスを復元することに成功した。それは農民のラディカリズムの伝統のなかに息づく古くかつ新しい世界・生き方をみごとに伝えている。

チーズとうじ虫―16世紀の一粉挽屋の世界像はこんな本です

チーズとうじ虫―16世紀の一粉挽屋の世界像の単行本

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