- Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622071648
感想・レビュー・書評
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哀しく美しい物語。
老人リンさん、太った中年男バルクさん。
言葉が全く通じない2人が心を通わせていく。
その過程がじんわりと心に沁みる。
紛争によって故郷の地を破壊され、知らない土地に移らざるを得ない状況にあるリンさんのような人が、今まさに世界に大勢いることを思うと悲しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
難民の問題もあるがそんなことより言葉も通じないおじいさんと大男の間に繋がった奇跡のような友情の美しさに言葉を失う。リンさんの小さな子が本当はなんであったのか最後に分かるが、彼女はリンさんの失われた家族であり後にした故郷であったのだ。そして心優しいバルクさん、あなたがいてくれて良かった。
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戦争で国を追われて、外国へ孫と来たリンさんと、その外国に住んでいて妻を亡くした男との、友情の話。言葉も通じず、国籍も歳も違う二人の、静かで優しい時間が描かれている。
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わかりやすい簡単な言葉で書かれた短く美しい物語のなかに、戦争の悲惨さ、人生の残酷さ、人と通じ合うことの希望や幸福、いろんなものがちりばめられている。
リンさんが故郷の夢のなかでバルクさんと語り合う場面がとても好き。美しい情景と溢れんばかりの幸福感と、不思議な泉の話がしても印象的。 -
戦禍の故国を遠く離れて、異国の港町に難民としてたどり着いた老人リンさんは、鞄一つをもち、生後まもない赤ん坊を抱いていた。
…現代世界のいたるところで起きているに違いない悲劇をバックにして、言語を越えたコミュニケーションと、友情と共感のドラマは、胸を締め
付けるラストまで、一切の無駄を削ぎ落とした筆致で進んでゆく。
『灰色の魂』の作者が、多くの読者の期待にこたえて放つ傑作中篇 -
言葉が通じ合わなくても心が通じ合う2人の姿に泣いた。