- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622072317
感想・レビュー・書評
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まずタイトルに関わらず、簡便にユダヤ通史がまとめて述べられている。これには生活文化なども含まれており、より「ユダヤ人」とは何かを理解する助けとなる。
そして当然のことながら、第二次大戦期遥か以前から始まっていたポグロムについてもきちんと捕らえられている。
中心テーマである1918年以降のユダヤ人についてはさらに加速度がつくように描かれる。ポーランドはもちろん、オーストリア、ドイツ、ソ連などで盛り上がる反ユダヤ主義も現れる。また同期のユダヤ人サイドとしてのシオニズムや同化主義など、彼らの中でも様々な相克があった事も示される。そのような背景から現れたのがAdolf Hitlerであった。
ナチの政権奪取から、現実政策としての反ユダヤ政策が徐々に整備され、またこれと並行して反共政策とも呼応しながら進められていく。これはユダヤ人こそ共産主義を始めかつ世界に広めようとする原動力であるという「陰謀論」を狂信していたことによる。
また二次大戦前の動きとして、ポーランドでもユダヤ人を厄介者扱いし、ナチドイツとの間でも押し付け合いなど様々なやりとりが行われていたし、あいも変わらずポグロムも起きていた。この点については秩序を重んじるドイツの方が暴徒的ポグロムは少なく、ドイツの方が暮らしやすいと考えたユダヤ人も少なくない。
そうして第二次大戦となり、ポーランドは瞬く間に占領される。それもよりにもよって東からのソ連と共謀して。
以降のユダヤ人、ポーランド人の苦闘についてはいろいろ知られていることもあろうからここでは省こう。
最後に戦後。ナチから解放されたユダヤ人とポーランド人のその後が描かれる。そこに見られるのはあんな経験をくぐり抜けながらもなお残る強烈なまでの反ユダヤ主義。ユダヤ人が収容所にいる間の家に住み着き、ポグロムをまた起こす。さらにはソ連を誘導しポーランドを占領させた原動力はユダヤ人とまで言う。アウシュビッツで殺戮されたのはポーランド人ばかりだとも。
共産党統治に変わっても安住はできない地だった。そうしてほとんどのユダヤ人が改めてポーランドの地を脱し、ほとんどがイスラエルと米国に向かうのであった。
ユダヤ人虐殺などなかったと主張する連中、ユダヤ陰謀論をもてはやす輩はキチンとした歴史を学ぶことからやり直すべきである。陰謀論を信奉することはヒトラーのような輩に付け込ませる隙を与えるだけのことだと。
※ポグロム
ユダヤ人に対する暴力的暴動行為詳細をみるコメント0件をすべて表示