ダーウィンのジレンマを解く―新規性の進化発生理論

  • みすず書房
3.56
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622074052

作品紹介・あらすじ

ランダムな変異という材料を自然選択のふるいにかけるだけで、生物たちの見事な形態と機能が都合のいいスピードで進化できるのか?複雑で精巧な組織は、なぜ未完成の段階で淘汰されずに進化できたのか?ダーウィン進化論の最大の弱点とされてきた謎が、進化発生学という新領域で解き明かされようとしている。この新理論では、遺伝子の単なる「乗り物」にさえたとえられた生物の血肉の部分が、進化に道をつける主役に据えられる。しかも、生物の複雑さを還元主義的に解体して遺伝子に行き着くのとはまったく別の方向に、進化のメカニズムを探るべき広大な地平が開かれていることに、読者は目を瞠るだろう。本書の理論は「弱い連係」「探索的挙動」「拘束とひきかえの拘束解除」といった、生物を形づくる複雑なネットワークが生み出す性質に支えられている。複雑さそれ自体が、一見都合のいい進化に本質的な役割を果たしているのだ。本書は新しい進化観を展望する山頂へと、ふもとから一歩一歩、着実に読者を導いていく。このめざましい進化観の変革を見逃す手はない。生物系のモジュール化とパターン化の基礎となるプロセスが、進化史のなかで保存され変化しないという議論や、その拘束が表現型の拘束を解除するという見解は、生物学の幅広い領域を刺激するだろう。

感想・レビュー・書評

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  • 『新規性をどう実現するか』
    「すべての表現型の新規性は、既に存在する表現型の再編成である」

    (突然)変異と(自然)淘汰の2本柱で成り立つダーウィン進化論。インテリジェント・デザイン論者の指摘する欠点は生物の「単純化できない複雑さ」。単ダムに変異を起こしていて、時間は足りるのか、と。ランダムな変異で、翼ができるのか、と。

    本書(原著は2005出版)では、これまでの研究成果をもとに、促進的変異理論というものをとく(が、正直生物系の話題の細かいところはついていけなかった汗)。

    事実確認:
    形態/生体レベル→多様である
    細胞レベル→コアプロセスが保存されている、遺伝子数は少ない
    (このギャップをどう説明するか)

    いかのことをどういう説明なら実現できるか:
    ある面で有利な変化が、他の部分で致死的な変化となる可能性をどう減らすか
    単位遺伝子変異あたり、表現型変化量をいかに増やすか
    変異が起きた時の致死率を以下に抑え、集団内の遺伝的多様性を増やせるか(犬とかすごい種類が多いけど、混血可能)

    →促進的変異理論なら説明できる
    「弱い連係」(ファジーな連係);歯車だと、ちょっと離れたら動かなくなるが、血管みたいなのは形が変わっても柔軟に接続し直せる
    「探索的挙動」;ランダムな挙動と、正のフィードバックの組み合わせ(アリが餌を探す時のような感じ)
    「区画化」;体の部分部分のモジュール化


    コアプロセスが拘束され、それに基づいた用法に影響する調整の部分が変化することで、多様な表現型が実現する。


    この本の内容を、何かしらの事業アイデアを考えるときにどう新規性を実現するか、という問に敷衍すると、どうなるのだろう。
    区画化・コアプロセス→ビジネスモデルの枠組み(既存のものから引っ張ってくる)
    遺伝子変異→要素の変更
    多様性の確保のための致死率減少→倒産可能性を極力減らす(当たり前?)、もしくはFail Safe設計かな

  • 面白かったけど難しすぎて大筋内容わかったところでスキップしました。また気が向いたとき続きを読もうと思います。あと会社での評判も若干悪かった気がする。

  • 紹介されているひとつひとつの知見は、ここ10年くらいで徐々に明らかにされてきたことであり、そこから導き出される「進化可能性を促進する変異の優先的保存」という考え方も皆が薄々感じていたことだったんだろう。そこに、進化という出来事のグールド的な解釈とドーキンス的な解釈の両方を満たす形があるということも。本書の功績は、それをカッチリとした議論にのせ、詳細の議論に移るための土台を用意したことだろうか。

  • ランダムな変異がどうして進化につながるのか

  • 取りあえず本日読んだ本を試しに置いてみます。
    ダーウィンの進化論の問題点を「促進的変異理論」で説明しようとする。
    「進化の過程でまったく新しいもの(新規性)がどのように生じるのか。」がテーマ。
    自宅では必要に駆られて読まざるを得ない本がたくさんあるため、携帯に不便なハードカバーは読了までに時間が掛かります(^^;)

  • ランダムな変異という材料を自然選択のふるいにかけるだけで、生物たちの見事な形態と機能が都合のいいスピードで進化できるのか?複雑で精巧な組織は、なぜ未完成の段階で淘汰されずに進化できたのか?ダーウィン進化論の最大の弱点とされてきた謎が、進化発生学という新領域で解き明かされようとしている。
    この新理論では、遺伝子の単なる「乗り物」にさえたとえられた生物の血肉の部分が、進化に道をつける主役に据えられる。しかも、生物の複雑さを還元主義的に解体して遺伝子に行き着くのとはまったく別の方向に、進化のメカニズムを探るべき広大な地平が開かれていることに、読者は目を瞠るだろう

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