ゾリ

  • みすず書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622074151

作品紹介・あらすじ

1930年代、ナチスの影におおわれたスロヴァキアでファシストに家族を惨殺され、祖父とともに辛くも生き延びたジプシーの少女ゾリ。音楽を生業とする仲間との旅暮らしのなかで、歌にのせる言葉を紡ぎ出す楽しさを知った彼女は、ジプシーの掟で禁忌とされる読み書きをひそかに習い、天賦の詩の才能を開花させていく。そして戦後、社会主義政権下のブラチスラヴァで、ゾリは、革命詩人ストラーンスキーとイギリス人の翻訳家スワンに見いだされ、「完璧なプロレタリア詩人」として一躍文壇の寵児となる。詩を愛し、言葉の力が世界を変えると純粋に信じていた彼ら。しかし50年代のチェコスロヴァキアに訪れた政治的変化は一人ひとりの運命を狂わせていく-。激しく揺れ動く東西ヨーロッパの戦後史を生きた、ひとりの女の人生をあざやかに描く長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 【書評】コラム・マッキャン:ゾリ【ブックレビューサイト・ブックジャパン】
    http://bookjapan.jp/search/review/200901/houjo_kazuhiro_01/review.html

    東京創元社|Webミステリーズ!(桜庭一樹)
    http://www.tsogen.co.jp/web_m/sakuraba0812_3.html

    ゾリ | みすず書房
    https://www.msz.co.jp/book/detail/07415/

  • 2017/10/30読了。
    もっと歴史的背景を学んだ上で読めば良かったのかも。
    世界史の苦手な私にはそれはそれは長い物語でした。
    ジプシー迫害の事実すら知らなかったのだから。

  •  録音された自分の声。文章にされた自分の考え。
     それらを聞き直したり読み直したりすると、いつまでたっても、もどかしさや違和感が消えないことが誰にでもあると思う。こんな声だっけ?こういうこと言いたかったんだっけ?みたいな気持ちの悪さ。そしてこれが他人に色々なかたちで伝わっているんだろうなという不安感。
     録音や文章という記録形態が、テレビやラジオや本やネットなどメディア形態が、どこかしら自分の気持ちとそぐわないような感じ。自分の気持ちをそれらの形態に無理やり押し込めたような窮屈な感覚というのは、日常生活の慣れと共に消えていくものだと思うけど、そういう窮屈な感覚を逃れるために、ひたすら自由を求めて動き続ける人もいる。その先に本当に自由があるかどうかはわからないのだけど。
     読み書きができるということ、それらが流通するということは、自分の考えや思いを伝えるのに便利なものだけど、その便利さ故に誤解や行き違いを生むこともある。便利さと引き換えに失う自由だってあるはず。自由に声を出し、それを耳にして自由に解釈して隣人へと声をかけていくこと。
     ロマ(ジプシー)は読み書きを拒否し記録も残さない、口述のみで伝承していく文化を持つという。それは定住を拒み移動を続けていく彼らの生活様式と表裏一体なのだと思う。
     私は人並みに読み書きもするし、各種メディアで情報を発信したり受信したり生活に慣れてしまってるわけだが、そういう記録や伝達の形態に知らず知らずのうちに縛られて、自由を失っているのではないだろうか。

     時代に翻弄されながらも、今に至るまで生き続けてきた、ロマである主人公。
     抑圧された時もあれば、保護すべき文化として独立性を尊重された時もある。彼女が蔑まれ、あるいは讃えられながら生きることができたのは、彼女自身読み書きができ、書物や朗読会などのメディアのおかげでもある。人生のなかで辛い時期や良い時期を過ごしながら。
     しかし、彼女にとって大切なのは定住を拒み自由であること。もはやロマの文化に埋もれるのでもなければ、既存の文化人的役割を演じることでもない。過去を記した読み書きの記録などどうでもいい。何物からも遠く離れた、彼女が自分の足で歩き、自分の手で掴んだ自由。それに気付いたラストシーンが印象的。


     

  • たまたま書店で表紙の写真に目がとまる。通り過ぎたがやはり気になるので書名「ゾリ」を手帖にメモ。図書館で検索するとあったので借りることにする。で、写真の説明を読んで納得をする。
    「プラハ侵攻」のジョセフ・クーデルカの作品だった。
    東欧のロマを撮り続け、「ジプシー旅の終わり」では受賞しているとのこと。家馬車の写真が本の内容を表している。

  • 図書館の司書をしていたという作者が膨大な資料を読み抜き、徹底した取材を行い完成した本書。
    ジプシーとして生きる少女の伝統との葛藤や、報われない天才的な才能への不安が描かれている。
    文字を書く事が許されなかったゾリの詩作は悲壮感に満ちていて、痛切に美しい。

  • 今年読んだ本で一番の衝撃。
    非ロマの人間が描いたとは信じられない、
    匂いや音、痛みまで伝わってくるようなヴィヴィッドな表現。
    「チホノロエヤ」(ちっちゃなお月様)という言葉が今でも頭の中に残る。
    コラム・マッキャンの本は他にも読んでみたい。

    戦争や主義に翻弄されるゾリやロマの人々の生き方を通じて、
    過酷な環境でも自らのスタイルを貫き続けるひとの強さを思った。
    そして、沢山の人々の暮らしを滅茶苦茶にしたシステムの力を実感した。

    遠い国の、よく分からない存在であるロマを
    少しでも体感できる本であるように思う。

  • 最初とてもぶ厚い本に読むのをためらいましたが。。^^友人に薦められ読み始めました。
    ゾリとは主人公であるジプシーの1人の女性の生涯を描いたストーリーで、当初これらについては何の知識もない私でしたが、まるで映画を観ているようにドンドン本の中へ引き込まれていきました。


    *著者のコラム・マッキャンさんは、以前私の住む町にいたそうで、英語教師をする傍らずっと本を書き続けていたそうです。

  • 受難のロマ人(ジプシー)女性の生涯

  • ロマの女性詩人(歌い手)の一生を書いた小説。
    ロマへの差別、第二次大戦、ナチズム、社会主義を経て、たくましく生きる女性の姿が感動的でした。


  • "ジプシー知識人"ゾリ。5つの言語を操り詩と歌で歴史を紡ぐ。政府は出版を悪用しジプシーは"移動の自由"を奪われゾリを追放する。国境を幾つも越え孤高で慎ましく壮絶に生きる姿勢と価値の差異を刻む。やはりスワンか。結末の爽快さに震えた。
    #読了 2023.9.28


    コラム・マッキャンは小説の種に史実を植える。だから半ば研究者になる。多くの人々の証言や遺る書物でかき集め構築する。一見小説なのだが読み手にとっては知識にない事実をイメージしなければならない。謙虚にこの本に取り組まざるを得ない。ジプシーの存在が疎外されていたから価値を認められていなかったところから、マッキャンは価値を存在意義を定義づける。したがって読み手は更にイメージし読み耽って脳に植え付けなけれないけない。そんな気にさせる。なんて生真面目な作家だろうか。お陰で眠りについている間も私はこの本の中に入りぶつぶつと呟きながら物語の続きを考え込んでいた。ほとんど眠られず今朝は頭が朦朧としている。困った読書のはまり方だ。この苦しみを面白さに早く変えておくれと思いつつ読み終わってしまうことが逃れる唯一の術だと思う。恐らく既にスワンがしでかすのだろう。スワンという名はやはりわくわくさせられるのは私だけだろうか。 2023.9.27

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