知の広場――図書館と自由

制作 : 柳 与志夫[解説] 
  • みすず書房
3.94
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本棚登録 : 309
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622075622

作品紹介・あらすじ

自宅からインターネットで情報検索ができる時代に、そして市民の3人に1人が高齢者となる社会に向かって、町の図書館はどんな場所になれるのだろうか?司書歴30余年、数々の図書館リノベーションにたずさわってきた著者が、来館者数を大きく伸ばしたイタリアの市立「ペーザロ図書館」、ロンドンの移民地区に新設され人気を集める市立図書館「アイデア・ストア」での経験を軸に、これからの図書館が考えなくてはならないこと、実行できることを具体的に指し示す。「屋根のある広場」のような図書館には、自然と市民が集まってくる。

感想・レビュー・書評

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  • 「図書館は屋根のある広場」ーーーーー
    そうです。伊那図書館は伊那谷という「屋根のない博物館」の中にある「屋根のある広場」をめざしたい!
    地域の情報と情報、情報と人、人と人をつなぎ直すハブ、コミュニケーションの場が知の蓄積、編集、発信を通じて価値を創造する!

    大学で建築を学ぶK君が、カラフルな付箋を山ほど挟んだこの本を貸してくれた。彼は空間をデザインする。そして僕らはPublicをデザインする。

    (ひーさん)

  • ◆本書の内容はタイトルが示すとおり、図書館を「知の広場」としてとらえなおそうというものです。著者の国イタリアでは、図書館とは学生や教授といった知識人のための「お高い場所」としてとらえられてきたといいます(本書で語られるイタリアの教育問題も驚くべきものがあります)。「知の広場」とは、これを”一般市民すべて”に解放された多様性のある空間、あるいは文化交流と発信の拠点として作り替えてゆくということです。

    ◆そのために欠かせないのは、建物の外観やカウンター、警備員の配置、開館時間、これらの空間的な要素を、役所の都合ではなくその土地やその土地で暮らす市民の都合にあわせながら作ってゆくということ。さらにそのためには、綿密な事前調査が欠かせません。本書が面白いのは、その実際例がいくつも紹介されているところです。さまざまな図書館をみて、みずからもその空間設計に携わってきた著者ならではといえそうです。

    ◆ひるがえって日本の図書館を考えてみるとどうでしょうか。千代田図書館元館長による解説が参考になります。イタリアでは「お堅い場所」、日本では「無料貸本屋(大衆の場所)」と揶揄される図書館。あたらしい取り組みはあっても、図書館がもつ施設や知の価値を活用しようという意識はほとんど共有されていないといいます。

    ◆さらに個人的な感情を書いてしまいますが、いつまでもどかない学生! かたや学生が居座り、かたや小説を借りてそそくさと立ち去る利用者。貸出至上主義からいえば実績は申し分なしの日本の図書館。そんな現状で、図書館を知の広場(多様で交流のある空間)にしようという大転換を試みたのが千代田区図書館だったのではないかと思います。このように、本書で示される問題と解決案は、中身は違えどその根本に違いはないと思います。日本では、知の公共空間としての図書館をどのようにつくることができるのでしょうか。

    • もの知らずさん
      コメント下さってありがとうございます!
      (相手になんらかの通知がゆく返信機能を要望して、”はなまる”も結構ついているのですが、実装の予定は...
      コメント下さってありがとうございます!
      (相手になんらかの通知がゆく返信機能を要望して、”はなまる”も結構ついているのですが、実装の予定はないようで^^;)

      図書館って、基本的に、本を借りて返すところですものね(^^;)

      ただ、そのままでは図書館は知の広場から遠ざかってしまうということですね。ぼくの考えも、小説やタレント本などを借りるのが悪いというのでは決してなくて、借りて帰るだけではない、図書館というその場所を利用するような試みがなされるべきなのだと思います。その点、この本はとても刺激的でした! 千代田図書館も、その点で面白いのかな。行ってみたいです。

      本と人の出会い、知との出会いをもたらすという図書館の大転換、えそらさんにとっても、きっと面白い本ではないかと思います。
      2014/05/22
  • 図書館は「出会いの場」である、と漠然と思い、サードブレイスという言葉を聞きかじって、さてではうちの図書館をどうしようか、と考えていたときに出会ったのがこの本。これまで海外の図書館はアメリカの図書館について書かれたものしか読んでなくて、アメリカに比べて日本の図書館のなんと遅れていることか、と嘆いていたけれど、ヨーロッパもまた厳しい状況であることが、分析的に書かれています。自分の勉強不足を反省。この本ではしかし、そういった厳しい状況の中でもさまざまに工夫を凝らしている図書館が紹介され、勇気づけられます。また、そう思ってみると、日本の図書館にもそういった萌芽はたくさんあり、なにより自分の勤める図書館もその方向を向いているのだから、まずは数値をきちんと把握し分析して、出来ることからやればいいんだと思えました。
    実はこれを読んだのがだいぶ前なので、たくさんつけてある付箋のどこに共鳴したのか、思い出すのに一苦労。とりあえず、目についたキーワードは、協働、文化的コード(教養?)、デザイン、ベンチ、ソーシャルキャピタル。この本をもう一度読んで、自分の仕事とちゃんとリンクさせて行くといいんだろうな。そして、ブルーノ・ムナーリの名が出てきたのがとても嬉しかった。

  • 『知の広場』の著者アントネッラ・アンニョリ 来日講演のお知らせ

    『知の広場――図書館と自由』の著者アントネッラ・アンニョリ氏(元サン・ジョヴァンニ図書館長)が来日され、各地で講演会などが開かれます。
    2013年5月25日(土)には、宮城県仙台市のせんだいメディアテークで、建築家の伊東豊雄氏との対談「知の広場とみんなの家」開催(司会・通訳 多木陽介氏)。14:00‐16:00(開場13:30)、会場はせんだいメディアテーク1階オープンスクエア。定員300名(自由席)、参加無料、要事前申し込み(先着順)。お問い合わせ・申し込みは、主催の「知の広場づくり実行委員会」tinohiroba[at]gmail.comへどうぞ(メールアドレスの[at]部分を@に変えてご利用下さい)。電話でのご連絡は、みすず書房営業部内03-3814-0131へ(土日祝は休み)。

    http://www.msz.co.jp/news/event/

  • イタリアでの司書暦30年の著者が図書館リノベーションに携わってさまざまな図書館を見違えるように活性化していったその証跡。おもしろかったですよこの本。図書館の存在意義から多様性。スーパーマーケットや広場から得たそのインスピレーションで展開していく、図書館活性方法。人が座りたがるのは・・・"人の原初的な本能、つまり、仲間同士で集まりたい、できれば長い時間たっていたくない"という本能を証明している・・・という。なるほど!と感じた。だから、その本能に働きかける空間作りをすれば、人は集い、仲間が増え、コミュニティ化していくというわけだ。これを図書館活性に役立てたという。
     このような展開方法で図書館再生に取り組んだノウハウです。角度を変えて分析してみれば、予想以上に大きな展開ができることを証明している一冊ですね。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「角度を変えて分析してみれば」
      目からウロコで、階級差の「業」を感じました。そして、それを乗り越えようとするところが素晴しい!
      「角度を変えて分析してみれば」
      目からウロコで、階級差の「業」を感じました。そして、それを乗り越えようとするところが素晴しい!
      2013/04/25
  • ・図書館の専門性は何か?

  • 依岡隆児先生(総合科学部国際教養コース)ご推薦

     イタリア人の筆者が、司書を長年務め、多くの図書館のリノベーションにたずさわった豊富な経験から、これからの図書館のあり方について語っています。それは一言でいえば「屋根のある広場」です。豊かな体験を提供する場であり、安全で快適であるだけでなく、ひとがいろいろなものに出会うことができ、これといった理由がなくともやって来るような場でなければ、これからの図書館は生き残れないというのです。
     筆者はときに、スーパーマーケットから利用者ベースの姿勢を学び、多様な椅子の配置やフレキシブルな開館時間といったことにも言及します。そうして、公共図書館は「墓地」のようなイメージではなく、自由でのびのびできて、出会いと新しい体験と知が得られる場所であり、思わず立ち寄りたくなるような場にしなくてはならない、という。それはまた、文化活動が起こり、議論が生じる、わくわくする空間、つまり「知の空間」ということでもあります。
     この本からは、広場のように開かれ、自由で、人や物との出会いがある図書館になるためのヒントが得られることでしょう。ちなみに、わが附属図書館も「知の広場」というヴィジョンを掲げています。

  • 長岡絵里佳先生 おすすめ
    2【専門】010.1-K

    ★ブックリストのコメント
    これからの図書館はどうあるべきか、イタリアの図書館に関わってきた著者が具体例をもとに提案しています。地域の図書館に積極的に関わっていきたくなるような、著者の熱意と意欲が伝わる本です。

  • 図書館
    歴史

  • アーカイブ

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著者プロフィール

ボローニャ在住。1977年ヴェネツィアの地方都市スピネアに子どものための図書館を開館させ、2000年まで館長を務める。2001年には、ペーザロ市の新しい図書館〈サン・ジョヴァンニ〉の館長としてその計画・実現にたずさわる。2009年からは、図書館計画のアドバイザーとして、ボローニャ〈サラ・ボルサ〉、グッビオ〈スペレッリアーナ〉、フィレンツェ〈オブラーテ〉、ピサ、チニゼッロ・バルサモなど、数多くの図書館と協働しており、ロンドンの〈アイデア・ストア〉では子ども部門を担当した。著書に『知の広場――図書館と自由』(ラテルツァ、2009年/邦訳みすず書房、2011年)『拝啓 市長さま、こんな図書館をつくりましょう』(ビブリオグラフィカ、2011年・2014年/邦訳みすず書房、2016年)。その他、図書館専門誌『今日の図書館(Biblioteca Oggi)』をはじめ、新聞『イル・マニフェスト』『ラ・レプッブリカ』、雑誌『アルファベータ 2』『イル・ムリーノ』へも寄稿している。

「2017年 『知の広場 新装版 図書館と自由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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