これが見納め―― 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景

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制作 : リチャード・ドーキンス  安原 和見 
  • みすず書房 (2011年7月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622076162

これが見納め―― 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景の感想・レビュー・書評

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  • ウィルコックス博士のヴェノモスの中で言及されていたので気になって手にとってみたら、カカポの話もあったので飛びついた。果たしてカカポのみにあらず全編非常に面白かった。前半はちょっとスロースタートだが後半はトップスピードで面白いです。もちろん肝が冷えます。"The Hitchhiker's Guide to the Galaxy"のオーサーと動物学者がBBCの番組の撮影で世界の絶滅寸前種を取材したときのダグラスがみたアウトテイクな、非常に西欧人的な視点ではあるがとてもフェア、実に率直で真面目で多くの人に読んでもらいたいと思う、良著。

  • 「銀河ヒッチハイクガイド」のダグラス・アダムスがこんな本を書いてたとは。高野秀行さんのブログで知った。さすが著者のこと、一ひねりも二ひねりもある書き方の中に、鋭い洞察があって興味深かった。

    著者はBBCの番組のレポーターとして、絶滅に瀕した生き物を見にあちこちへ出かけていく。アイアイや、コモドオオトカゲ、キタシロサイ、カカポ、ヨウスコウカワイルカなどなど。わたしが一番面白かったのは、コンゴにマウンテンゴリラを見に行った章。ヒトと祖先を同じくするゴリラは、間近で見るとやはりたたずまいが非常に「人間らしく」、どうしてもいったい何を考えているのかと思わずにはいられないのだそうだ。著者はそうした擬人化を厳しく排そうとするが、その葛藤を書いたところが面白かった。

    「ゴリラの顔を見ると『どういう生物かわかった』と思ってしまうが、じつはわかっていない。というか、安易で抗しがたい思い込みによって、理解するわずかな可能性を実際には封じているのだ」
    「そのうち、ゴリラの知性を判断しようとするとはなんと思いあがったことか、という気がしてきた。人間の知性は、どんな意味でも知性を測る基準というわけではないのに。そこで、向こうがわたしたちをどう見ているか想像しようとしたが、当然ながらそれはほとんど不可能だ。想像に基づくギャップに橋をかけようとすれば、どうしてもなんらかの仮定が必要になるが、言うまでもなくその仮定を設けるのはこちらだし、自分でも仮定していると気づかずにする仮定ぐらい、誤解を引き起こしやすいものはない」
    「わたしはまたゴリラの目を見た。知恵と知性を感じさせる目。それを見ていると、類人猿に言語を-人間の言語を教えようという試みに対する疑問がわいてくる。(中略)もともとそのなかから生まれたのでない言語で、かれらの生を語ることができるとでも思うのだろうか。ゴリラがまだ言語を獲得していないのでなく、人類がそれを失っているのではないだろうか」

    ここにあるのは、欧米流の独善主義とは無縁の考え方だ。著者は、別のところで宣教師の一団と飛行機に乗り合わせたとき、「わたしは宣教するというのが好きではない」とはっきり書いている。ここも面白いので引用しておこう。
    「わたしは神を信じていない。少なくとも、英国で英国人のために発明された神は信じていない。あれはとくに英国的なニーズを満たすためにでっちあげられたものだ。(中略)ああいうのを信じる人たちは、仲間内で信じるだけにして、発展途上国に輸出するのはやめてほしい」

    これは一面では、まさに英国流のクールで皮肉なものの見方だろうが、極東の島国人としてはやはり共感してしまう。「欧米」とつい一括りに考えがちだが、「宗教国家」アメリカとは根っこが違うと感じる。

    自然保護をやみくもに訴えるような本ではなくて、いろいろ考えさせられる。ただ、著者得意のクールでひねった書きぶりで(もちろん、笑えるところも多いが)、結局どういうことなのか、ややわかりにくい箇所が幾つかあり、そこがちょっと残念。

  •  絶滅が危惧されている動物たちを見に、SF作家と動物学者が世界各地へと旅する様子をルポした本書は、種の絶滅を追跡・検証する社会派の告発書ではなく、しばしば声を出して笑わずにはいられない、抱腹絶倒の一冊だ。絶滅寸前の動物に会うためにはトンデモない苦労があり、悲劇と喜劇は紙一重。そのことを呵呵大笑の筆致で綴った本文は、読者に笑われるのを今か今かと待っている。
     一方で、地球の生態系は人間が原因で多くの生き物を失ったが、本書では失われたものが何かをよくわかっている人たちが、被害を最小限に食い止めようと奔走している姿もコミカルに描かれる。彼らは狂信的にも見えるが、それは我々が何を失ったかを知らないだけなのかもしれない。なぜなら、著者らがカカポ(オウム目の鳥)に出会う章では、読者はクスクス笑った後に、突然熱い想いに胸を衝かれるのだ。我々は、彼らに何をしてしまったのかと。
     「彼ら(絶滅危惧種の動物たち)がいなくなったら、世界はそれだけ貧しく、暗く、寂しい場所になってしまう」。本書は、こうした危機感を広めることに、一役も二役も買うだろう。

  • 図書館で見つけた本。
    やはりシリアスな内容なのだろうか、この厚さを終始神妙な気持ちで読むことになるのだろうか、人類の罪と向き合う覚悟は自分にあるのだろうか…等、外見からの印象だとなかなか手をつけられないかもしれない。
    が、その実、これは非常に強力なDRP、『公共交通機関の中で読むな』本である。
    多くはヒトの所業のために絶滅しつつある動物についての書籍にあるまじき面白さで、息もつけないほど笑える。ほとんど不謹慎というか不道徳ですらあるだろう。ヨウスコウカワイルカの親族が本書を読んでいる私の姿を見たら悲憤慷慨、訴訟も辞さないと思う。
    コンテンツをただひたすら面白く書くということ、その圧倒的、魔術的な力と罪深さを体現している。「超面白いから」という理由であらゆる人にお薦めできる。そんな稀有なる一冊。

  • <閲覧スタッフより>
    SF作家と動物学者が絶滅危惧の動物を見に行ったルポ。1990年の刊行から読み継がれており、現在では動物たちの置かれた状況が様々に変わっていますが、2011年の初邦訳時に最新データが脚注として入れられています。ユーモアにあふれた読みやすい文章で綴られた絶滅危惧という状況にある動物たち。あなたの目にはどう映りますか?
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    所在記号:482||アタ
    資料番号:10208690
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  •  原題は「Last Chance to See」で、筆者らが絶滅危惧の生物(動物、鳥類。爬虫類)を世界中に見に行ったルポである。
     これらは行くだけでもたいへんな僻地にわずかにいるだけであり、その旅行記というか苦労記でもあるが、それをイギリス人らしいユーモラスというか皮肉というか読む分にはおもしろく描いている。実際には、ものすごくたいへんだったに違いない。
     初刊は1990年で初邦訳は2011年であるが、内容的には決して古いものではない。今なお、それらの絶滅危機は去っていないし、人生を賭けてそれらを守る人々がいるのだ。
     ニホンウナギやクロマグロなど我々にとって身近な問題でもあるのだ。もっともっと話題になって、広く読まれてほしい本である。

  • 世界一珍しくて世界一絶滅の危機に瀕している動物を見に行く旅行記。
    軽快な表現力がおかしくてつい笑ってしまう文章の数々。率直に感じたことがこちらにも素直に伝わってくる。

    すべての生き物は環境を構成する要素であり一種でも欠けると生態系のバランスが崩れてしまい、いずれは人類の生き残りに深くかかわっていくという人類中心主義での生物保護観点が私はあまり好きではないので、著者の感じ方や皮肉には好感がもてる。

    絶滅が近い動物を保護するのは当然として、人類の人口増加を食い止めなくては本当の意味で保護にならないのではないかと感じる。

  • 「銀河ヒッチハイクガイド」のダグラス・アダムスが、絶滅の危機にひんした動物を見るため、ヒッチハイクさながらに世界をかけまわる。
    動物保護、環境保全、人間の救いようのない愚かしさ、がメインテーマといえるが、大巨匠SFコメディ作家の手腕で、全く押し付けがましさがない。愉快(奇矯に近い)な仲間たちと愉快な珍道中、そして絶滅なんてこと考えたこともない勝手に生きてる絶滅しそうなどうぶつたち。全ページ、イギリス人的ユーモアににやりにやり、時に爆笑。
    新版には、作者と親交のあった「利己的な遺伝子」のリチャード・ドーキンスが序文を寄せている。これも一読の興あり。
    しかしながら、日本語で読む者にとってこの本の魅力は、安原和見さんの訳に負うところは大きい。安原和見さんは「銀河ヒッチハイクガイド」シリーズの訳も手掛けている。

  • 『銀河ヒッチハイクガイド』は1978年にイギリスBBCからラジオドラマとして放送され、その後出版されて世界中で大ヒットしたSFコメディ小説だ。そして、そのユーモアと風刺にあふれた小説の著者、ダグラス・アダムスの著作でしかも『利己的な遺伝子』のリチャード・ドーキンスが序文を書いているとなれば、読まないという選択肢はあり得ないのが本書『これが見納め』なのだ。
     ダグラス・アダムスは動物学者のマーク・カーワディンと共に、絶滅が危惧されている生きものたちに会うために様々な地を訪れる。マダガスカル島のアイアイ、コモド島のコモドオオトカゲ、ザイールのキタシロサイとマウンテンゴリラ、ニュージーランドの太っていて飛べないインコのカカポなど、当然のことながら、絶滅が危惧されている動物が生息しているのは人が訪れるのが困難な場所であることが多い。渡航先との連絡が取れなかったり行き違ったりにイライラし、腐敗した官僚達の対応に辟易し、命がけと思える小型機やヘリコプターに肝を冷やしながら現地にたどり着くと、蜘蛛の巣だらけの小屋に泊まりながら毎夜ジャングルをかき分けたり、灼熱の太陽が照りつけるサバンナで迷子になったりしながら目当ての動物を探し歩く。その様子がユーモアとウイットに富んだ表現で、数々の滑稽な逸話を挟みながら生き生きと描かれているのだから、ページを捲る毎に思わず笑ってしまう。しかし、根底にあるのはその動物を絶滅の危機に追いやった人間の愚かしさへの怒りであり、絶滅から救おうと必死で取り組んでいる人達への敬意であり、絶滅を免れるようにとの祈りである。生物種はどれもその生態系を支える存在であり、ある種が絶滅すればヒトを含む他の多くの種も多大な影響を被る。非常な速さで多くの生物種が絶滅し続けている現在、人は環境保全と生態系の維持について真剣に考えるべきだろう。マーク・カーワディンは結びの言葉で、生物種を絶滅から救うことの一番大切な理由をこう書いている「それはきわめて単純な理由-かれらがいなくなったら、世界はそれだけ貧しく、暗く、寂しい場所になってしまうからなのである」。至言である。
    本書はダグラス・アダムスがコメディ作家としての本領を発揮した大変面白い本であると同時に、環境保護活動家として絶滅危惧種の現状と保護の難しさ、大切さを訴えている本なのだ。数々の写真とともに楽しんで読みながら地球環境問題について考えて欲しい。

  • 思ったよりおかしくないがところどころクスクス笑える。「ここにチキンあり」の章がベスト。動物本はやはり学者が書いたものが、本人もおかしいので面白いと思う。

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これが見納め―― 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景の作品紹介

絶滅危惧種をとりまく状況は最初から、身もふたもなく絶望的。D・アダムスの名作ノンフィクション。序文はリチャード・ドーキンス。

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