福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと

著者 :
  • みすず書房
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本棚登録 : 296
感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (114ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622076445

作品紹介・あらすじ

一刻もはやく原発依存社会から脱却すべきである-原発ファシズムの全貌を追い、容認は子孫への犯罪であると説いた『磁力と重力の発見』の著者、書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 福島の原発の災害をどうして招くことになったのか、その淵源を原子力爆弾の開発、さらには産業革命以前にまでさかのぼるなどさすがの一言につきる。ただここで書かれていることに賛成もするのだが、原子力推進派にはなかなか届かない言説になっている。
    これは山本氏に限らず反原発、脱検発の言い分が原発推進者にとどかないのと同じなのである。
    だからと言ってこの本の価値が減じることはない。この本の言い分が届かないという現状から出発しないと何もかわらないことが本当に日本人が考えるべきことなのである。
    産業界が力をもちすぎたことが 一つの悪夢の始まりだが、産業界に距離をおくひとに産業界の歯車をとめる力は生まれない。
    省エネを叫んでも、エネルギー消費社会の舞台からそでに身をひくだけで
    舞台ではあいかわらず乱痴気騒ぎ。
    そして客席からいかにやじっても舞台は舞台ですすむ。
    論理的か、実証的な、説得的かも関係がない。

    放射性廃棄物の廃棄場所も、原発作業者の疾病も、福島の人の移住も関心のない人にはぜひ読んでほしい。

    難しいことを優しく書いているので 読みとばし危険です。

  •  原発反対を主張している。さらっと読んでしまったので、もう一度ゆっくり読みなおしたい。

  • 原発による放射性物質の汚染は、子孫に対する犯罪だとする著者の意見は、納得できるものでした。

    原発はクリーンであると教科書的に習ってきたけれど、それは誤りでした。

    原発それ自体はクリーンだとしても、その前後はクリーンではないということもあります。
    原発の原料調達から汚染は始まり、数万年後まで放射線は出続けるということです。

    数万年後は、人類が存在しているかもわからず、存在していても言語や絵が伝わるかわかりません。
    立看板や警句は意味をなさない可能性があります。

    数万年という単位は、人類の管理不能な単位であるということかもしれません。

  • 山本義隆 「福島の原発事故をめぐって」 将来に負の遺産を残さないために脱原発を行うべしの論調。

    著者の主張「原発周辺の住民に対して、原発という未完成技術の発展のために捨石になれという権利は誰にもない」


    著者の主張に同意するが、これまでの原子力政策を否定し、脱原発を実現すると、安全保障や外交面で問題(核について 日本の国際的発言力が低下して 核なき世界が遠のくこと)もありそう。


    原子力問題は 経済産業だけでなく 外交、安保、環境、憲法解釈など、それぞれの意見を知りたい。メディア、選挙、国会で争点化してくれないだろうか。


    これまでの原子力政策
    *原子力技術は 産業利用のみでなく、軍事利用も選択肢
    *どちらを利用するかは政策による
    *核兵器を持つことができなくても、原子力技術を持つことで、潜在的に 核兵器を保有していることになり、核についての国際的な発言力を維持できる



  • YouTubeで公演の動画など見かけるが、若者に負の遺産を残していることを相当気にされている様子。

  • 原子力発電
    東日本大震災

  • ボリュームはあまりないし、内容も悪くはないのだけれど、ちょっと退屈だったかなぁ。期待が大きすぎたかも。

  • 山本義隆氏の本を読みたかった。
    探してみると、本書が見つかった。
    薄い本である。しかも原発に関する書である。
    今まで私なりに原発や核兵器に関して、本を読んできた。
    氏の原発に対する考え方を知りたかった。浪人生時代を思い出し、あらためて生徒になった。
    先生の言葉を聴き逃すまいと、一文一文ゆっくり読んだ。原発は外交カードであったことを知り、目から鱗が落ちた。先生の知識量に圧倒された。また、先生の正義感と誠実さと優しさも感じられて嬉しかった。
    先生は20年前と少しも変わっていなかった。
    柔らかい表情の奥に光る野武士のような目の輝きを思い出した。

  • 原子力を巡る産官学の癒着、原発導入までの経緯など、今では人口に膾炙されているものも多いが、この本が書かれたの2011年8月で、311から半年たらずのこと。
    冷静な筆致で科学的、社会的な原発の問題点を指摘する。
    100ページに満たない本であるが、濃密であった。
    イデオロギーを排して読みたい。

  • 略歴には載ってないが,著者は東大全共闘の元議長。当然原発を批判する。まず原発導入の経緯を概観。岸信介をはじめとする戦後日本の支配層が,潜在的核兵器保有国となり国際的発言力を高めるという倒錯した論理で推進したと総括し,糾弾。
    著者は物理学をやっていて,科学史に関する著書もある。近代社会の最大の発明は科学技術,というのが持論らしく,その科学技術は核エネルギーの解放をもって破綻へ突き進んでいると論じる。科学技術とは,単に科学と技術ではなくて,科学理論という客観的法則の生産実践への意識的適用としての技術。
    技術は当初理論に先駆けて発達してきたが,原子力に至って完全に逆転。原爆は百パーセント学者の頭脳のみから導き出され,原発はその副産物として得られた。ここにはじめて科学理論に領導された純粋な科学技術が生まれたことになる。
    しかしその科学技術の成立には巨大な権力が必要不可欠だった。人間に許された限界を超えた暴走が,怪物的権力によって引き起こされてしまった。福島の惨状も,政官財一体となった権力が何の掣肘も受けずに突っ走った結果。そして本書は次の一文で結ばれる。
    「こうなった以上は、世界中がフクシマの教訓を共有すべく、事故の経過と責任を包み隠さず明らかにし、そのうえで、率先して脱原発社会、脱原爆社会を宣言し、そのモデルを世界に示すべきであろう。」
    権力というものがなくなると,確かに原発なんかの大規模な科学技術は不可能になるんだろうが…。

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著者プロフィール

山本義隆(やまもと・よしたか)
1941年、大阪府生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。科学史家、駿台予備学校物理科講師。元東大闘争全学共闘会議代表。

「2022年 『演習詳解 力学 [第2版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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