ニュルンベルク裁判の通訳

  • みすず書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622077763

作品紹介・あらすじ

●ニュルンベルク裁判における通訳をテーマにした唯一の本で、通訳のしくみ、通訳者の履歴、通訳史における意義が精確に述べられている。専門家向けに書かれているが、現代史、通訳問題に関心のある一般読者にも難なく読める。
●同時通訳が初めて本格的に使われた通訳史上の決定的なできごとを扱っているので、通訳・翻訳研究者や、通訳に関心のある学生の必読基本文献。もちろん現代史の重要な一冊として。
●ニュルンベルク裁判研究について、これまでとは異なる角度からの情報を提供。
●専門的内容が含まれるが、わかりやすく書かれた一般書なので、戦後史、ヨーロッパ研究、語学一般に関心のある読者も対象。
●訳者・武田珂代子氏は、立教大学異文化コミュニケーション学部教授。専攻は、翻訳通訳・異文化間コミュニケーション研究[博士]。

感想・レビュー・書評

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  • 本書の下敷きになった研究は、「同時通訳という職業の起源はなにか」という素朴な疑問への答えを求めて始まったものだ。今日、同時通訳は広く用いられ、国際的な会議や会合には当然あるものとさえ思われている。しかし驚くことに、同時通訳という職業やその技術の起源はほとんど知られていないのだ。もちろん、通訳者や翻訳者は有史以来、異なる言語を話す人どうしが接触する際には必ず存在した。それでも、一世紀ほど前までは通訳が職業とみなされることはなく、通訳に従事していたのは軍人、外交官、秘書、その他外国語の知識を有する人々だった。この状況が変化したのは、国際機関が誕生し、言語関連業務を担当する専門家の必要性が高まったためだ。本書では、通訳という職業の誕生を気づいたひとつの要素である同時通訳システムの考案に焦点を置く。話者の発言をその場で瞬時に別の言語に訳出できるようにマイクとイヤホンを接続することが可能だということを誰がいつ、どのようにして着想したのだろうか。通訳者が発言を聞きながら同時に訳すことが可能だと考えたのは誰なのだろうか。

    ニュルンベルク裁判における通訳は、同時通訳というほとんど未知の技術を多言語で実施させ、同時通訳が国際的に普及する突破口になったという点で通訳史における金字塔的出来事と言える。それにもかかわらず、ニュルンベルク裁判の通訳を主題とした研究は半世紀近く存在しなかった。本書によって同裁判の通訳の全体像が初めて明らかになり、特に同時通訳採用のいきさつ、通訳者の選抜と訓練、訳出上の問題とその対処法、また国連への同時通訳導入との関係など、通訳研究にとって極めて興味深く重要な側面に光が当てられたという点は意義深い。

  • フランチェスカ・ガイバ『ニュルンベルク裁判の通訳』みすず書房、読了。45年11月から10カ月にわたり開廷された史上最大の軍事裁判。裁判は4カ国語の同時通訳で行われた。本書は通訳者の選定と訓練から法廷での同時通訳・通訳機器の運用に至るまで克明に描かれ、通訳の意義と歴史を分析する。

    法廷で次々と明るみにされたのは人道に対する罪。通訳者の心理的負担も並大抵のものではなかったという。ニュルンベルク裁判通訳者たちは後に同時通訳者として活躍するが、同時通訳を採用しなかった東京裁判とは対照的。

    ニュルンベルク裁判は法廷通訳の原型といってよい。その歴史を学ぶことは、過去を知ることに留まらず、現代日本の法廷通訳を見直すことにもなろう。専門書ながら非常に読みやすい。 http://www.msz.co.jp/book/detail/07776.html 

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