野生のオーケストラが聴こえる―― サウンドスケープ生態学と音楽の起源

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622077947

作品紹介・あらすじ

「自然界の音楽とはどんなものか、クラウスの仕事が教えてくれる」(ピート・シーガー)
 著者のクラウスは過去40年間に世界中の自然環境を訪ね、刻々と失われ続ける貴重な野生の音を録音収集してきた。本書では、生物と環境が生みだす多彩で生命力に満ちた音響の意味を、音の風景全体(サウンドスケープ)に注目する独自の手法で解き明かす。著者自身の感動がすべてのページから伝わってくるみずみずしい筆致に、本を開いた瞬間から引き込まれる。環境音についての私たちの認識を一変させる書。

感想・レビュー・書評

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  • 目標9.産業と技術革新の基礎をつくろう
    お薦め図書
    https://library.shobi-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&materialid=01066816

  • 【由来】
    ・最初はダイヤモンド?honzでも。

    【期待したもの】
    ・面白いサウンド・アーカイブ構築のヒントがあるかも。

    【要約】
    ・生物や非生物が織りなす音像は、音楽的であり、その場所の生態系についての多くを示す。ここで「音楽的」というのは、そもそも人類が音楽を獲得したのは自然のサウンドスケープからという意味と、サウンドスケープの構成がオーケストラと似通っているからという意味の、2つの側面からである。

    【ノート】
    ・世界はこんなに面白い音で満ちている、という博物的な内容を期待して読み始めたのだが、そうではなかった。確かに面白い音源の紹介はされているのだが(Webとの連動もあって興味深く聞ける)、本書の主眼は、生物による音場(バイオフォニー)と非生物による音場(ジオフォニー)によって構成されるサウンドスケープが音楽的であるということ。

    ・自然によるサウンドスケープにどのような音楽性を認めるかというのは興味深いトピックだが、その音楽性の分析・評価が主眼というわけでもなかった。人類がバイオフォニーやジオフォニーから音楽を獲得したという仮説が人類学的な事例と共に紹介されているが、それも完全な証明には至っていない。色々と輪郭がボヤけている印象を拭いきれないが、かなり新鮮には感じた。

    ・録音した音を周波数域で分析し、その豊かさによって土地の多様性を把握することができるというのが、多様性保全の観点から興味深いアプローチだった。まさに土地の声紋となるわけだ。人間が介入して環境汚染や生態系の破壊が行われた後に、音像の豊かさが明らかに減少していることを示す具体的なデータも提示されており、音像によって、写真以上にごまかしのきかないスナップショットを記録できるというのは、一度どこかで試してみたい手法だ。さらに、チェルノブイリでは、事故直後と現在とでは明らかにバイオフォニーの豊かさが復元しているという事例紹介もあった。これって「地球にとって人類こそが癌」ということでしょうか、東方不敗先生!?しかし「人類もまた地球の一部」だよね、ドモン・カッシュ!

    ・生き物たちが自分たちの周波数域にはまり込んでいくという「ニッチ理論」というのがある。それぞれの生き物は、それぞれの理由で、音によってそれぞれの周波数域を探って入り込んでいき、占有している。直感的に分かりやすい内容だが、実際に生き物がそうやっているかどうかについては、これもまた完全な証明が成されたわけではない。しかし、説得力のある説だと感じた。

    ・バイオフォニーとジオフォニーによって構成されている音の世界は、人間による音(アンソロフォニー)の介入によって均衡を崩してしまう。思った以上に繊細であり、その繊細さというのが、単なるロマンチシズムではなく、生物種間の捕食行為に関連するから彼らにとってはなかなかにシビアな領域なのだという説明も腑に落ちる。ただ、バイオフォニーとジオフォニーに対するアンソロフォニーの位置付けが排斥的に過ぎる印象を受けた。両者が融合するとさらに面白いのではないかと思うのだが。

  • 人間がまったく足を踏み入れることのない世界――アフリカの山奥、アラスカの針葉樹林、南米の熱帯雨林の奥深く。そこではどんな音=サウンドスケープが紡ぎ出されているのか。あるいは人間の活動の影響を受けてサウンドスケープはどのように変化するのか。そういったことをフィールドワークを重ねつつ研究を続けている学者が書いた本。
    著者はクラシック音楽の素養を持ちつつ、若い時期に(誰にでもあるように)ギターに目覚め、シンセサイザーを活用し、有名な映画音楽を作り出した音楽家で、あるとき、自然が奏でる音楽の豊かさ素晴らしさに気づき、その道の探求に人生を捧げることになったという。
    「バイオフォニ―」と著者が呼ぶ自然の音が奏でるオーケストラは、言葉をたどるだけでも十分に素晴らしさが伝わるが、ありがたいことに、ウェブサイトと連動して、これまで著者が録りためた貴重な音源を聞くことができる。
    数々のフィールドワークを通じ、人間の音楽は自然が奏でるオーケストラの模倣から始まったという考察がなされ、続いて人間がもたらす異物としての音(アンソロフォニ―)がどれほどバイオフォニ―を損なうか、それはつまり自然環境の大いなる破壊にほからなないという、人間社会の在りかたに対する警告がなされる。
    目に見えるものだけが自然の美しさではない。耳や全身で感じることのできる音の風景もまた生き物にとっては重要な情報であり、調和のとれた美であることを教えてるくれる書物だ。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784622077947

  • 半年くらいかけて、やっと読み終わった。ネットとかちょっとやりすぎて疲れた時に、最初は読みたいと思わないけど、いざこの本を読むと自然の中で音に耳をすましてる自分が想像できてストレスが解消された。自分の街は、半分は結構な田舎なので、野生動物はいないと思うけど、川の音や、自然の静かな場所は探したらあると思うので、自分の隠れスポットを見つけたいと思う。

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