大脱出――健康、お金、格差の起原

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622078708

作品紹介・あらすじ

現在の富裕国はどのように短命かつ疾病に満ちた環境から「大脱出」を果たしたのだろうか? その一方で、なぜ今でも取り残された国々があるのだろう? 豊富なデータによって、今日の世界における格差の原因を丹念に分析。経済学の最前線を走り続けてきた著者がウイット溢れる文章でおくる〈健康と富の経済学〉。

感想・レビュー・書評

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  • 15/10/13 WBS

    きょう発表されたノーベル経済学賞。アメリカ・プリンストン大学のアンガス・ディートン氏に決まりました。ディートン氏は公共経済学の研究で知られ、「消費と貧困 福祉の分析」が受賞対象となりました。ディートン氏の研究で有名なのは、収入と幸福感の関係を解き明かしたことです。年収に合わせ幸福感は上がりますが、年収7万5,000ドル(約900万円)を超えると幸福の感じ方が鈍くなるといいます。アメリカでは決済サービスの会社のCEOが、この研究をもとに自身の年収を100万ドルから7万ドルに引き下げ、従業員の年収を同じ7万ドルに引き上げたことで知られています。ディートン氏の著作は、日本でも今年、翻訳出版され、話題を呼びました。ディートン氏の理論は日本経済にも影響を与えるのでしょうか?

  • ノーベル経済学賞受賞のアンガスディートンによる著作。所得の成長が健康改善の主たる要因ではなく、制度の違いや知識の差が重要。富裕国では障害が減っているし、知能指数は時代とともに上昇している。平均身長も世界の大半の地域で高くなってきた。貧困国にトリクルダウンさせていく上での課題は何か。

    アンガスディートンは、開発援助は害を及ぼしうると主張。開発援助を受けた被援助国の政府は、自国民よりも援助国に対する説明責任を重んじ、政府と市民との間の社会契約関係が弱まり、公的制度の強化や持続可能な発展に必要な改革を行うインセンティブが低下。大体、政府が機能不全であれば資金援助した所で権力に資金を与えて強化する事で、それが必ずしも分配され、国民のためになるという保証がない。

    心血管疾患に関しては利尿薬が重要なイノベーションとなった。利尿薬は効果的な降圧剤でもある。心臓病の主なリスク要因である高い血圧を下げる作用があると言うことだ。

    事実、興味深いのは、冷戦以降援助が削減されてからアフリカは経済成長しており民主主義の割合も大きく増加している。援助によって民主主義が阻害されていたと考えられると言うことだ。

    他方、海外援助は貧困国で何百人もの命を救ってきた。抗生物質やワクチンにより乳幼児死亡率を引き下げた。天然痘は撲滅されたしポリオに対しても同様の努力が実を結びつつある。

    アンガスディートンをネットで検索すると、富裕国における絶望死を語っていた。所得や制度、知識や格差に対する認知という意味で深く考えさせられる一冊だ。

  •  世界全体では貧困や健康は改善している。生活水準や健康状態はこの100年で劇的に改善してきた。お金については富裕国はますます豊かになり、一方、貧困国は、中国とインド以外は目立った改善が見られず、富裕国との差が広がっている。しかし、富裕国でさえ発展の速度が停滞している。
     富裕国の貧困国に対する支援は、富裕国の思惑により、必ずしも効率的かつ効果的な支援となっていない。
     著者は多くの文献を引き丁寧に説明している。経済学に限らず国際関係学に興味がある人にも読んでもらいたい。

  • 平均寿命は乳児死亡率によって大きく左右される
    女性の方が寿命が長いのは喫煙率の影響も大きい
    アメリカの父子の収入の相関係数は0.5でOECD加盟国の中では最も高い

    援助によって国民の合意を得ずに統治を行うことが可能となっている
    援助をアフリカ以外の場所でアフリカのために有効に使うのは難しくない 医療、農業における進歩など マラリアなど

  • ディートンがノーベル経済学賞という記事を読み、すぐに図書館に予約。
    売れてないらしく、いつもいく地域の図書館には無かった。
    別の県の図書館から取り寄せてもらった。

    なんでだろう?文章が読みにくい。

    ディートンの父は貧しい炭鉱の生まれ。勉強して測量技術を学び、土木技師の資格を取り、給水技師の職に就く。
    ススと煤煙の惨めなエディンバラから、緑溢れる森と清流の田舎への引越しは、それだけで十分、大脱出だった。
    p.8
    父は努力してディートンを名門パブリックスクールへ入れ、ディートンはケンブリッジ大学で数学を学び、アメリカのプリンストン大学で教えた。
    ディートンの12人の従兄弟たちの中で大学まで行ったのは、ディートンと妹だけ。
    それより前の世代で大学へ行ったものはいない。
    p.9
    つまり、ディートンの家族は、イギリスの階級社会の中で、貧しい労働者階級だったのだが、父親が一生懸命勉強して、子供にも、最良の教育を受けさせたことによって、労働者階級から大脱出できた、というわけだ。

    アマルティア・センから、幸福をいかに測定するかを学んだそうだ。p.12

    格差と発展は切り離せない。

    最初に禁煙したのは裕福なホワイトカラーたちだった。

    中国とインドの急成長によって何億人もの人が大脱出を果たし、世界は以前よりも少しだけ平等になった。p.59

    所得と幸福感の結びつきの薄さはアメリカにも見られる。
    年間約70,000ドルを過ぎると、それ以上収入が増えても幸福感は改善されない。p.67

  • マルジナリアだらけの本を買ってしまったが、それでも読んで良かったです。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00253846

  • 作成中

  • ノーベル経済学賞をとったアンガス・ディートンの新著Deaths of Despairがとてもバランスの取れた良い分析の本だったので、読んでみたが、新著ほどの感銘は受けなかった。援助の弊害を強調し、一部その対案も示され、また援助や健康についての新しい視点も勉強できたが、あまり建設的な議論には思えなかった。

  • 資料ID:81500929
    請求記号:331.87||D
    配置場所:工枚特集①
    (※配置場所は、レビュー投稿時のものです。)

    ☆特集展示「SDGs特集」☆
    SDGsを特別なものとしてではなく「自分ごと」として捉え、それぞれの活動、生活の中に浸透できるようSDGsを理解し社会課題に関心を持つことを目的としています。

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著者プロフィール

プリンストン大学経済学・国際問題名誉教授。南カリフォルニア大学経済学学長教授。専門は、貧困、不平等、医療、経済開発。イギリス生まれ。米英の市民権を持つ。ケンブリッジ大学とブリストル大学で教鞭を執ったのち、プリンストン大学に移籍。2009年にはアメリカ経済学会の会長を務める。2015年に、「消費、貧困、福祉に関する分析(analysis of consumption, poverty, and welfare)」で、ノーベル経済学賞を受賞。

「2021年 『絶望死のアメリカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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