21世紀の資本

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制作 : 山形浩生  守岡桜  森本正史 
  • みすず書房 (2014年12月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (728ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622078760

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21世紀の資本の感想・レビュー・書評

  • r > g
    資本の収益率 > 経済成長率

    20カ国以上の所得と富の分配をめぐる世界的な動学を研究し、過去15年にわたり30人以上と集めた歴史的データを活用。

    <以下引用>--------------------------

    資本収益率が長期的に成長率を大きく上回っていれば、富の分配で格差が増大するリスクは大いに高まる。

    この根本的な不等式を
               r>g
    と書こう。

    rは資本の平均年間収益率で、利潤、配当、利子、賃料などの資本からの収入を、その資本の総価値で割ったもの。
    gは、その経済の成長率、つまり所得や産出の年間増加量。    p.28

    <資本主義の第一基本法則>  α=r×β

    資本/所得比率βは、国民所得の中で資本からの所得の占める割合(αで表す)と単純な関係を持っており、以下の式で表される。

    α=r×β

    ここでrは資本収益率だ。  P.56


    <資本主義の第2基本法則>

    長期的には、資本/所得比率βは、貯蓄率s、成長率gと以下の方程式で示される単純明快な関係を持つ。

    β=s/g

    たとえばs=12%、g=2% なら β=s/g=600% となる。    
    p.173

    α=r×βという式を使うと、ある国全体、さらには全世界についてさえも資本の重要性を分析できる。
    また、個別企業の財務も研究できる。

    たとえば、500万ユーロの資本を使い、年に100万ユーロの財を生産し、うち60万ユーロが労働者の賃金、利潤が40万ユーロだとする。

    この会社の資本/所得比率は β=5
    (資本が産出5年分に相当)
    資本所得のシェア αは40% 
    資本収益率 r=8%         p.59


    インフレは事実上、有閑階級に対する税、もっと正確には、投資されていない財産に対する税と言える。 p.470

    だが現代のインフレは、きわめて切れ味が悪い道具であると認識しておくことが重要だ。 ・・・・ 累進資本課税のほうが、民主的透明性と、現実の有効性の両方において、もっと適切な政策だ。 p.473

    いったん通貨が貴金属への兌換性を失うと、中央銀行がお金を作る能力は潜在的に無限になってしまうので、厳格な規制が必要だ。これが中央銀行の独立性に関する論争の核心だし、無数の誤解の源にもなっている。
    p.576

    世界の金融資産の大部分がすでにさまざまなタックス・ヘイブンに隠されていて、世界的な富の地理的分布の分析に限界をもたらしているという点だ。  p.483

    課税における20世紀の大イノベーションは累進所得税の考案と発展だ。
    この制度は、20世紀における格差低減に重要な役割を果たしたが、今では、国際税制競争により深刻に脅かされている。      p.514

    累進課税は、格差削減のかなりリベラルな手法だと言える。自由競争と私有財産は尊重されつつ、私的なインセンティヴはかなり過激にもなりかねない形で改変されるが、それでも常に民主的論争で検討されたルールにしたがって行われるのだ。    p.528

    <以上引用>----------------------------------------

    ↓ ネットで公開されてる。どのピケティ本より参考になった。

    ピケティ『21世紀の資本』
    訳者解説 (v.1.1) 2015.1.23-2.1
    山形浩生
    hiyori13@alum.mit.edu

    ↑ 山形浩生が必要最小限の図式化で明快解説。必見。

    山形は、ピケティはインフレーションに対して、この本の中では賛成とも反対ともとれる書き方をしている、と述べている。
    しかし、オレは、ピケティはインフレに対しては否定的だとしか思えない。

    「だが現代のインフレは、きわめて切れ味が悪い道具であると認識しておくことが重要だ。 ・・・・ ... 続きを読む

  • 正直途中の数値を羅列してあるような部分は速読に頼ったところもある。
    予めトマ・ピケティ解説本を数冊読んでいたので理解に役だったが、本書を最初に読んでいたら途中で飽きて飛ばしまくったろうと思う。
    要点は解説本がまとめてくれていることとほとんど同じだったが、具体的な事象については興味深いものも多々あった。
    ただ要点についてはやはり解説本を読んだほうがよくまとめられていていいと思う。
    より深い内容が学びたければ本書の数値を活用し、そして著者がいうように内容が議論の的となるように自分なりに調べていけばいい。
    ピケティの要点が知りたかったのであれば解説本を、資本主義について掘り下げたいのであれば本書を読んで色々なデータを参考にご自身の主張をされてみるのがいいと思います。
    このような学術書にもなりそうな良書を一般人が評価するのが非常に憚られるくらいの力作なのですが、経済の素人の読みやすさという意味では正直量の問題もあり星3が妥当かなと思います。
    格差の問題を世界中に広めたという意味では星なんかでは評価しきれない位の評価を得るべきでしょう。とある学者は経済学賞を受賞スべきという人もいます。

  • 本屋さんに行くと今でも何冊もの解説本が置かれているのが目につきますが、とうとう原作(翻訳本ですが)を読みました。その本の名前は、ピケティが書いた「21世紀の資本です。

    今まで何冊かの解説本を読んできたお蔭もあり、何を言いたい本なのかが分かっていたため、最後まで読み通すことができましたが、特に図表の少なくなる、第三部以降は読んでいて挫けそうになりました、解説本を書いた方々の努力に頭が下がりました。

    前半部分では、膨大なデータを処理してやっと完成した興味ある図表が出てきます。1700年以降の合計300年間以上のデータをグラフ化したものには中々出会うことができません。とても貴重な経験をすることができました。

    以下は気になったポイントです。

    ・資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出し、それが民主主義社会の基礎となる能力主義的な価値観を大幅に衰退させることになる(p2、29)

    ・第一の結論:1910-50年にかけて殆どの先進国で生じた格差の低減は、何よりも戦争の結果であり、戦争のショックに対応するため政府が採用した結果である、課税と金融に関する部分が大きい(p23)

    ・第二の結論:富の分配の力学を見ると、収斂と拡大を交互に進めるような強力なメカニズムがわかる(p23)

    ・根本的な不等式(r>g、r;資本平均年間収益率で、利潤・配当・利子・賃料などの資本からの収入を資本総価値で割ったもの、g:経済成長率、所得・産出の年間増加率)(p28)

    ・富裕国で資本の重要性が高まったのは、人口増加と生産性成長がどちらも減速したせいが大きい。この変化を理解するには、資本と労働の分配率だけでなく、資本/所得比率(資本の総ストックと年間の所得フロー比率)の変化も分析することである(p45)

    ・国民所得を計算するには、GDPからその生産を可能にした資本の減価償却分を差し引く必要あり、これが「国内純生産」となる、GDPの9割程度(p46)

    ・国民所得=国内算出+外国からの純収入=資本所得+
    労働所得、資本から人的資本を除外するのは、人的資本は他人が所有したり市場取引できないものだから(p49)

    ・所得はフロー、ある期間(通常1年)の間に生産され分配された財の量、資本はストック、ある時点で所有されている富の総額(総資産)、資本はおおむね、住宅資本と企業・政府が使う物的資本に分かれる(p54)

    ・上場企業の株式市場における総市場価値は、通常はその企業の年間利潤12-15年分、つまり年間投資収益率:6-8%(税弾き前)である。500万ユーロの資本を使い、年間100万ユーロの財を生産、60万を労働者賃金、利潤を40万とする。この会社の資本/所得比率β=5(資本が産出5年分)、資本所得のシェア:αは40%、資本収益率r=8%となる、α=r×β(p59)

    ・欧米は産業革命で実現したリードにより、世界に占める人口比率の2-3倍の世界算出シェアを実現できた。これは一人当たりの算出が世界平均より2-3倍高かったからで、こんな時代は終わりつつある(p64)

    ・資本減価償却を1割として考えると、世界では1人当たり平均月額所得@2012は760ユーロとなる、日本は2250ユーロ、EUは2040、米国は3050、中国は520である。(p66)

    ・為替レートでなく購買力平価を使うのは、各国の市民は通常は所得を外国ではなく自国で使うから(p69)

    ・外国からの純所得は日本とドイツでGDPの2-3%であるが、数十年に渡り蓄積してきたので、それに対する今日の収益は大きい(p73)

    ・貧困国が富裕国に追いつくのは、同水準の技術ノウハウや技能・教育を実現... 続きを読む

  • 簡潔かつ論理的に書かれているので面白く、一気に読み終えてしまった。

    資本を持つ者と持たない者の格差が広がっていくこと、そして格差是正への提案を、長期的データを基に論理的に展開する。

    こうしたテーマに興味がなくても、データを論理的に読み解くトレーニングとしてうってつけの一冊だと思う。

    この本を読んでから、成長率2パーセントとかいうと、ものすごく大きな努力なんだと感じるようになりましたw

    手元に置きたいが、値段が高いのがネック。

  • 話題の本、二ヶ月かけてようやく読み終えた。
    賛否両論、様々な意見が出ている本だが、読了後の感想としては、よくもこれだけ歴史上の数値を俯瞰して、大きな動きをまとめてみたなという感心が一番。
    日本には当てはまらないと言う人もいたが、基本的に著者の視線は欧州中心なのだから仕方ないでしょう。
    何はともあれ、経済学素人として幾つもの新たな気付きを得られたことが収穫だと感じた。

    ・当たり前のことだが、経済成長は多くが人口増加によるところが多く、純粋な経済成長が起きていた時期は歴史的にも各国でかなり限られているということ。
    ・日本でも戦後の高度成長のような時期は他に無く、そもそもがGDPの成長に多くを期待してはいけなく、せいぜい1-2%程度と考えておくこと。
    しかしその小さな成長率さえ、長い時間で捉えれば大きな成長に繋がる。
    ・歴史の中では、両大戦を挟む限られた期間以外の殆どで、その成長率を超える資本成長率を記録している。
    ・企業の成長に伴う労働所得の成長に留まらず、資本収益率の成長に大きくフォーカスが当たるようになったことは、本書の大きな意義。

    などなどか。

    最近の自分テーマでもある、曲がり角を迎えている資本主義と対策としての本の一環とも捉えることができ、その視点からも興味深い内容ではあった。
    最後に主張している解決策、即ち累進資本課税策は、本書の筋からは自然に合理的に導き出される解だと納得感はある。
    しかし、国際的な強調無くしては累進資本課税が成り立たないことを述べており、近々の現実性が感じられないことは本書も例外ではなく、他の本と同様だった。
    残念ではあるが、それだけ今の資本主義社会の課題解決は難しいと改めて納得した次第である。

    一つだけ分かり難かったことを上げると、頻繁に17-9世紀の欧州文学を題材にするケースが多いこと。
    ディケンズくらいなら少しは齧っているが、当時の資本優先社会を描き出す証拠に、小説中の暮らしぶりをこうもあげられては付いていけない。
    ここらも、やはり欧州人が書いた本というところなのだろう。

  • 600ページと大部だが読みやすく、わかりやすい。数式が2、3出てくるが具体例をあげて解説してあり、ゆっくり考えれば頭に入る。

    経済学というより社会学、政治学のテーマ「社会はどうあるのがよいか」について考察した内容である。

    格差について論じているが、イデオロギー的な結論ありきの展開ではなく、まず富の偏在について現状、時系列の推移、国別の比較、十分位・百分位・千分位...のデータを提示し、経済成長率(生産性向上+人口増加)のパラメータを調整したシミュレーションによる将来予測を語る。その上で、考えられる案をいくつか提示し、現実解を導く合意形成プロセスを語る...よくできた会社のプレゼン資料のようだ。

    著者の母国が右に左に揺れたフランス革命を経験したからなのか、主張は歴史的・長期的視点に立脚した経験主義にもとづいており、とても共感できる。

    提案されている資本税について「実現性が低い」との批判があるが、著者が真に提案しているのは解決案そのものではなく、解決案を民主主義的プロセスにもとづいて検討するための情報の共有、金融情報の「透明化」であり、それもいきなり世界的な情報データベースを構築するのではなく、「できるところから」始めようとしている。

    経済成長の鈍化、資本それ自体の自己増殖性、暴力的な金融グローバリズムの発展、新自由主義の隆盛等、将来について楽観できる要素はほとんどない。過去を振り返ると、格差を解消したのは二つの世界大戦だったという現実がある。
    それでも著者は民主主義への信頼を失っていない。何ももたない下位50%の人々に教育と福祉を提供することで、庇護ではなく社会に参加する道を閉ざさない方法を模索している。
    良書だと思う。

  • やっと読み終えました。とはいえ、内容はそんなに難しくないので、ベストセラーになったのでしょう。持つものはどんどん豊かになり、持たざるものはどんどん貧乏になるという、シンプルな原理を調査範囲をできるだけ多くの時代範囲とエリア範囲で取得し、分析することによって証明した画期的な著作。これに対してどうするか?この原理に対し、著者同様ネガティブな評価をする人たちにとっての解決策というのも、一応提示されてはいるが、現実性の観点から見るとハードルは高そうだ。

  • 注目を集めているトマ・ピケティ教授の経済学の本。ようやく読了。
    本文だけで約600ページあるのでかなり分厚い。
    前半は歴史経済学とでも言うべき内容で、約200年間にわたるフランスの税務データを中心にイギリス、ドイツなどのヨーロッパ諸国、アメリカ、日本などの先進国のデータを分析してr>g、つまり資本収益率は経済成長率を上回るということを示している。
    ただしこれは一般的な経済法則ではなく、歴史的事実だと言うことである。
    これが意味するところは金持ち(正確には資本を持っている者)にどんどん富が集中し貧富の格差が拡大すると言うことである。
    ところが、第1次、第2次大戦で大きく経済的な打撃があり資本収益率は低下し、復興のための経済成長で富の再配分が行われた。このため、戦後の一時期を見ての経済分析・経済理論は長期にわたっての視点には耐えないと言うことである。
    従って、ピケティ教授は15年かけて膨大な財務データを分析し議論している。
    経済学の常識があまりないこともあり所々よくわからないところもあったが概要は理解できる。
    テレビ番組「そこまで言って委員会」で、この本がブームになっていることで取り上げられ、金美麗さんが「(金持ちにどんどん金が集まることは)そんなこと昔からわかっているわよ!」といっていたが、ピケティ教授がデータを示して具体的に議論していることの意味は非常に大きいといえる。
    後半は穏やかな論調ではあるが言ってみれば「金持は民主主義の敵だ。金持ちの資本、不労所得に課税しろ。」と言っているように思える。
    また、労働所得についてもビル・ゲイツについて、彼がどうやって巨額な富を築いたのかは知らないがと断りつつ、パソコンにマウスをつけただけでどう考えても使い切れないほどの巨額の富を持つことについて疑問を呈している。
    結論としては課税による富の再配分機能が社会国家にとって必要であることを訴えているが、グローバル化した現代にとっていくつもの問題がある。それでも、累進課税は実施する必要があるだろう。
    高校の時に社会正義の面から言っても相続税は100%にするべきだと議論していたことを思い出す。
    分厚いだけに取り上げている内容は多く、面白く勉強になる。

  • 世界的に話題になっている本だが、前評判をあれこれ聞いているよりも、実際に読んでみる方がずっといい。容認し得る範囲を超える格差は民主主義の根本を破壊するという、ごく真っ当な問題意識に沿って、きわめて平明かつ説得的な議論を展開している。論旨の流れは明快で分厚さは気にならない。翻訳も読みやすく、これで6000円なら安いくらいだ。
    グローバルな累進資本課税を提唱する著者に対し、過激派だ夢想主義者だなどと批判する向きは多いが、ピケティの最大の功績は、経済の社会的側面を見失った主流のミクロ経済理論に対し、格差を正面からとりあげることによって、政治学や歴史学など他の社会科学と密接な関係にある公共哲学として、経済学をアダム・スミス以来の本道に押し戻したことにあるといえるだろう。公共哲学としての研究のアプローチはその手法や語り口にもはっきりと現れており、国際的な共同データを蓄積したり、専門注解をサイトに示すなど、たいへん刺激的だ。
    本書の議論の中核は、r>gの数式であらわされる資本収益率の長期的増大傾向にあるが、この不等式が資本主義のロジックの内部から理論的に導き出されたものではなく、歴史的データから経験的に導き出されたというのが重要なポイントである。経済学者による批判はこの点に向けられることが多いようだが、私は、これは彼の議論の弱みというより強みであると思う。結局のところ、われわれが分析する対象は歴史的システムとしての資本主義なのであるから(この前提自体を受け入れない学派もあるが)、経験にあわない理論こそが捨て去られるべきであって、理論にあわない経験が否定されるべきではないのだ。
    格差を絶対に政治問題にさせたくない人々のヒステリックな非難とは裏腹に、ピケティは少しもラディカルな理論を弄んだりはしていない。彼は成長も格差も否定しない。むしろオーソドクスな新古典派の理論から出発しながら、ラディカルなマルクス主義者たちよりもずっと明快に格差拡大の傾向を論証してみせたことの意義は強調していい。成長を言いわけに、「公平」を含むさまざまな社会的価値を犠牲にするような新自由主義は、もはや保守的な立場からさえ決定的に時代遅れになりつつあることを理解すべきだ。この意味で「日本はアメリカほど格差は大きくないのでピケティの批判はあたらない」といった反論は、議論にもならないレベルだ。アメリカの格差はこの数十年の政策の結果であり、日本はアメリカに倣う政策を急速に進めているのだから。
    本書が押し出しているような格差の問題が、これからの経済政策に関する議論のベースラインになっていくことを期待したいけれど、やはり本書の議論の立て方は、EUのような共通の社会的価値を基礎にもつ社会を背景にしたものだという感じも受ける。日本や中国などでこのような公共哲学がどれくらい受け入れられるのか、期待しつつも気になるところ。

  • 高成長なら格差は縮小、低成長のが格差は拡大(アベノミクスは成功しても低成長の範疇)。トリクルダウンはない(あったとしても微々たるもの)。経済成長と格差の関係についての現状では決定打なのだろう。あれだけの長期データについてどういった反論が出てくるか。議論が発展したら面白い。

  • 人気テレビゲームよろしく、邦訳と同時に解説本が複数出ているのを見て当初は食指が動かなかったが、結局購入。厚い、重い、高いの三拍子が見事に揃った本だが、意外に内容はシンプルで読み易い。

    本書によれば、経済成長率gは実体的に決まり低下が予想される一方、資本収益率rは時間的選考性により心理的に決まるので、不等式r>gが恒常的に成立し、資本家は常にプラスの貯蓄を蓄積できてしまう。またテクノロジーの発達により今後も資本と労働の代替性が高まるのだとすれば、資本の限界効用が増え所得の資本シェアも増大していくから、資本の所有者は労働への分配を相対的に増やす必要がないまま所得の一部を貯蓄に回せることになる。これが動学法則β=s/gを通じてさらなる資本蓄積の集中につながっていく。

    著者の主張を受け入れるとすれば、このまま行けば21世紀は益々「ネットの資本収益率が先に決まる」社会になるということになりそうだ。外的要因にさほど影響されることなく資本所有者がまず自らの取り分を決め、それから労働その他の生産要素への配分が事後的に行われる。エクイティ利回りにとってリスクフリーレートという参照点が何の意味もなさなくなるということだ。

    ただその前提である「土地や株などの安定的資本の長期的な収益率rは概ね5%」の根拠は若干曖昧に思えてならない。いくら著者が収集したデータが膨大とはいえ、そこから18・19世紀の土地の収益率がそんなに簡単に求まるのだろうか。また確かに5%という数字には直感的な納得感はあるが、時間的選好に関する効用関数が長期的に一定だとする根拠は乏しいように思える。実際、著者の集計にもあるように直近の先進国における資本収益率は4%に近づいているし、投資機会の競合でr-gがさらに減少する可能性は相当にあるような気がするのだが…。資本労働代替性が収益率低下をオフセットして、数量効果が価格効果を上回ることを示すような実証性あるデータは、少なくともここでは示されてはいない。

    なお、著者が公的債務の増大それ自体はさほどの問題でないと考えている点は興味深い。純資産に対する累進課税による税収を公的債務の償還に充てれば、資本蓄積の不平等も解消できて一石二鳥というわけだ。現実的にそういう政治的コンセンサスが得られるかどうかは別として。

    と、様々な論議を呼びそうな内容だが、兎にも角にも20世紀後半の世界が歴史的に如何に特殊な世界であったか、そして(著者の言うほどに極端かどうかは別としても)資本が支配する来るべき世界にどのように身構えるべきかを本書は教えてくれる。また何よりも、戦後の資本破壊からのキャッチアップでしかなかった高度成長のアノマリーを長期的な前提とすることの愚かしさを理解できるだけでも、十分に読む価値のある本だと思う。経済学はプラグマティックであるべしとする著者のスタンスにも共感が持てた。

  • 今後、全世界にとって、成長率が1-1.5%を超えないだろう。そして、平均資本収益率が4-5%だとすると、資本主義は構造矛盾を抱える。

    果てしない格差スパイラルを避け、蓄積の動学に対するコントロールを再確立する為の理想的な手法は資本に対する世界的な年次累進課税を行うこと。

    20世紀初頭までの各国国家は、君主的役割(警察、法廷、軍、外交等)を果たすだけであり、当時の税収は国民所得の10%未満であった。それが今日では30-55%にまで増大しているが、それは「社会国家」の構築に使われ、その内容は大別し二つに分けられた。それは、1.保健医療と教育、2.代替所得(年金)と移転支払であり、それぞれ国民所得の10-15%を消費している。つまり、財政増大は社会革命であった。

    フランス人権宣言は、第1条に
    「人は自由に生まれ、自由のまま権利にいて平等な存在であり続ける。」
    とあるが、その次の宣言に、
    「社会的差別は共同の利益に基づくものでなければ設けられない」
    と追加されている。つまり、絶対的な平等の原理を主張していながら、本物の格差の存在も言及している。

    ハーバード大学の学生達の両親の平均所得は45万ドル。これは米国のトップ2%層である。

    理想的な税制は、インセンティブの論理(資本ストックへの課税を重視)と、保険の論理(資本から生じる収益ストリームへの課税を重視)との妥協である。

    今日のヨーロッパでは、民間財産がGDPの6年分近くある。

    ヨーロッパや世界で最大級の富に対する実質収益率は6-7%以上である。

    新興国の公的債務は平均でGDPの30%程度。

    1992年にマーストリヒト条約がユーロを創設した時、加盟国は財政赤字をGDPの3%以下、公的債務総額はGDPの60%以下にとどめる事と定めた。

    あらゆる市民は、お金やその計測、それを取り巻く事実とその歴史に真剣な興味を抱くべき。数字との取り組みを拒絶したところで、それが最も恵まれない人の利益にかなうことなどあり得ない。

  • 延べ20時間ほどかかり、トマ・ピケティの『21世紀の資本』を読了した。話題になっているだけあり、確かに素晴らしい仕事。この本の卓越した点は、様々な国の資産・所得・税等に関する定量的なデータを200年間もの長期間にわたって集計したところから、貴族や宗教家が富を独占しており不平等な社会であった18世紀のレベルにまで、現在の経済格差は実は拡大し続けているという点を明らかにした点であろう。

    そして、
    ・資本主義社会の序盤、工業化が始まる段階では確かに格差は拡大するが、資本主義社会の成熟化に伴い格差は低減する
    ・公的債務を用いた公共支出やインフレーションは、所得の再分配という効果をもたらすため、格差を低減させる効果がある
    という世間一般で考えられている言説は、どちらも誤りだということが示される。

    では20世紀の後半に拡大し続けている格差が21世紀においてどうなるのか?著者によれば、何も手を打たなければ格差は拡大し続けるだろうと警鐘を鳴らす。ここでポイントになるのは、「r>g」という不等式であり、この不等式が成立し続ける限り、資本主義は格差を益々拡大し続けるだろうと予測する。

    この式において、
    ・rは資本を投下することにより得られる収益率
    ・gは経済成長率
    をそれぞれ意味し、第二次大戦の復興時期にあたる1945~1970年くらいまでの経済成長率gが極めて高かった時期を例外として、歴史的に見れば「r>g」という関係性は常に世界各国で見られた事象であるとされている。

    さて、gは分解すると、人口増加による自然成長分と技術革新等による生産性向上分となる。現代の先進国では人口増加率は極めて低いこともあり、gは今後も低迷することが容易に予想されるし、高いgを誇る中国やインドのような国々においても人口増加率はどこかで低減し、先進国レベルの生産性に追いつけば生産性も限界を迎えることから、21世紀のどこかでgが低減するのはほぼ間違いがない。
    とすると、21世紀においてほぼ間違いがなく「r>g」の不等式は成立することとなり、格差の拡大は進行し続けるであろう。

    では、こうした格差を是正するための手段は何か。著者が示すのは、公的債務を用いた公的支出でもインフレーションでもなく、資産に対する累進的な課税である。現在取られている所得に対する課税(所得税・法人税など)では、その所得が自己申告に基づく性質を持つ以上、正しい所得の把握が困難となる。一方で資産を評価することは、現在も固定資産税における資産価値の評価等で実績があるように、まだ実現性が高い。
    ただし、この際、資産(ここには当然、現預金や有価証券等の流動性が高い資産も含まれる)をどこか別の国やタックスヘイブンが移転してしまえば、正確な把握は不可能となる。そこで対応すべきはまずヨーロッパのような地域レベルで、各国の金融システムを統合し、ヨーロッパ全体でどれだけの資産が蓄積されているのかをトレースできるようにする仕組みである。

    つまり、経済がグローバル化し企業や個人は自由に資産を扱うことができるのに対して、現在の課税システムは国民国家の枠内に閉じられたものとなっており、もはやこれが整合していないのは当然であるのだから、課税システム自体をグローバル化させるべき、という主張である。この際、既にEUという形で地域連合が進んでいるヨーロッパが最もその実現に適しているのは言うまでもない。

    600ページを超える大著ではあるが、論理は極めて明晰だし、ところどころ出てくる恒等式や不等式もシンプルでありわかりやすい。何よりも、経済格差の問題を極めて実証的に示した上で、その解決策まで踏み込んだ本書の議論は、その正当性に関する経済学者・歴史学者・政治学者等の議論を踏まえて、更に洗練されていくべき問... 続きを読む

  • 20170519読了!r>g.資本収益率が成長率を上回る時、資本主義は格差を生み出す。この命題を証明するための長い物語。

  • ようやく読了。
    格差問題を「r>g」で可視化した大著かつベストセラー?
    好著かどうかは自分の手に余るが、過去の経済統計を挙げた丁寧な説明は説得力があり、じっくり読めば理解できる。
    所々挙げられている富豪の例等は面白かった(不愉快でもあるが)。
    格差解消には資本税が必要、との説は分かるが、実現はなかなか難しそうだ。
    さて我が国。公的債務削減のためには、資本課税、インフレ、緊縮財政の3手法があるとのこと。そのどれもやる気のない現政権に(まぁ先送りつづきの2%目標はあるが)不安
    一杯の今日この頃…

  • 足掛け2年、正味2ヶ月もかかってしまった。データを用いた歴史的な経済格差の動学は、目の先のレベルを超えてしまうが、実感として納得できるものだと、思いました。

  • 世界的なベストセラーで分厚く読むのに苦労した。1~7章は経済学のおさらいと統計の結果を示し、8~12章でそれを分析し、13~16章で政策提言を行っている。内容はフランスの風俗や歴史や文学を引合いにだし十分な背景を示しながら進める、という構成になっている。特に多く引用されているのがバルザックの「ゴリオ爺さん」で、フランスの貴族社会も垣間見ることができるし経済政策が文学を作っているということも意外な発見だった。
    所得には労働所得(給与などと)資本所得(株の配当、不動産収入など)に分かれ、それぞれに格差が生じる。百分位上位10%、中位40%、下位50%に分けて各国の時系列的な変化を追う。そして格差についての分析と考察を行い、政治提言を行っていく。
    r (資本収益率)> g(成長率)の不等式が強調されている。しかし資本主義の定義が「投下資本の自己増殖運動」なのだからr>gは必然であり、資本主義である限り格差は拡大する。1900年以降格差が少なかった時代は1914~1945年の2度の世界大戦により資本が破壊されたことによるもので、現在は1945年からの回復期に過ぎず、このままいったら格差は無限に拡大する、という指摘に納得する。
    「格差は公正かつ有益でなければならない」と格差そのものを否定しているわけではない。だが行き過ぎた格差には警鐘を鳴らしている。全世界での格差は、この本が出されたあとに起きたシャルリー・エブド紙事件やパリの同時多発テロなどの出来事と、それに関係する英国のEU離脱、トランプ大統領などにつながっていると思う。また、タックスヘイブン(スイスやケイマン諸島)の国が納税回避の金持ちの情報を開示しないで、自分たちの利益を得ることを窃盗であると言い切っているが、これもパナマ文 書から明らかにされた各資本家たちの税金隠しの現状などから著者の主張の正しさがわかる。
    何度も立ち止まってじっくりと考え、それは自分の周りで起きていることだったり他の知識との照合だったり、時間が掛かる上に理解に苦しんだが、知性の細胞域が広がったような気がする。読んでよかったと思う。

  • 12.10.2016 読了
    r(資本収益率)>g(経済成長率)なのだから格差はなくならないよ。トップ1%の資本シェアはだいたい国民総所得の15〜25%あるんだよ。だから格差は広がる一方だよ。累進(資本)課税していこうよ。ねぇ。
    って感じ。読むのに2ヶ月かかった。

  • 飛ばし読みで70%を読んだ感じ。ただ頑張って読んだにも関わらず内容を理解できたのは半分もないのかな?とにかくタックスヘイブンが著しい昨今の世界情勢の中、格差社会を解決するためには年次累進税の導入が有効だということがわかった。

  • この本で述べられている内容自体は、経済学の専門的な教育を受けていなくても理解できるはずだ。(中学レベルの知識は難しいであろうが、高校レベルあれば十分)そして、筆者の主張を裏打ちするように、数式・データが提示される。この数式とデータの科学的側面の理解には、やや専門的な教育が必要かもしれない。

    筆者は、社会科学者としての立場を強調する。数式に固執せず、データより現実を認識し、未来志向の意見・方策の提示がなされている。そのためには、社会科学者の間の協力が必要と考えているようである。

    述べられている内容に目新しいものはない。巷で聞いたことがあるような内容ばかりだ。しかし本書では、これらはデータという客観的な指標とともに提示される。そのため、内容が事実として頭に刻み込まれる。そして、筆者の主張に沿うように事実が組み立てられおり、その思考回路が本書のエッセンスであろう。この思考回路が自然と吸収されるということが、本書が「教養本」と言える所以である。繰り返すが述べられる個々の内容自体は、それほど価値があるとは思えない。流れを掴み思考回路を吸収するためには、通読することが必要である。

    個人的には、こういった著書で社会に訴えるという方法で、ノーベル賞を獲得できるのかに興味がある。

    以下に、引用を掲載しました。
    http://matome.naver.jp/odai/2142000296905353901

  • 21世紀の資本の感想

    r:資本の収益率
    g:労働収益の成長率

    歴史的にr>gが成り立っていることが著者の研究によって明らかになった。
    格差はr-gの増加関数となる。
    ヨーロッパは戦前に格差のピークを迎え、現在は米国が格差大国なのに比較してヨーロッパはそれほどではない。
    しかしヨーロッパ諸国もいずれ米国並みの格差社会にならない保証はない。
    現在の日本は(米国と比較すれば)ヨーロッパと同様にそれほど格差はない。

    資本課税は格差縮小の非常に有望な手段だ。(資本課税はrを直接引き下げる)
    資本所得や労働所得のシェアをみれば格差の推移がよくわかる。
    資本所得トップ十分位や百分位は自身の富をタックスヘイブンに移動させ、課税を逃れる。
    国際的な枠組みが必要だ。

    ピケティはリーズナブルな格差を否定しているわけではない。ただ、r>gという状況が続けば論理的に富は一部の集団に集中してしまい、いずれ非合理的な水準に達するというのだ。
    この本には書かれていないが、「格差社会の衝撃(リチャード・ウィルキンソン著)」には格差は人々の健康に直接害を与えることが指摘されている。
    人間に対する格差の影響は研究途上であり、ピケティの研究はその土台となるものだ。

  • 難しい…たぶん3〜4回読まなきゃ理解できないんだろうなぁ(´-ω-`)
    お仕事の糧にと手を出してみたけれど…
    目標は、年内完読だぁ!!!

  • 統計的に分析することで見えてくるものが確実にあって、経済学的に見て、自分の職業領域を分析することはできないか考えている

  • 読破に1年以上経過。途中他の本に何度と浮気しましたが、何とかあきらめず。歴史的な視点で経済の歴史を語っているので、別途読んでいた歴史関係の本との接点が見えてよかった。次はタックスヘイブン関係の理解を深めたくなる。

  • 一年くらいかけて読み終えました。(苦笑)
    そこまて興味のないヨーロッパ各国の状況とデータの多さに何度もツンドクになりかけましたが、時々読み直してみると面白い。基本は、
    r>g 民間資本収益率(r)が所得と産出の成長率(g)を長期的に見れば上回る。すなわち富の格差は広がっていく。
    →解決には累進資本税が効果的ではないかというベース。
    そこまでに、アメリカのスーパーエリートの貰ってる高額の給与には各国比較で効果はでていないとか。戦争によって格差は一時的に縮まって勘違いしているとか。長年の莫大なデータから俯瞰的に述べてるのは興味深かった。経済学知らない人間的には様々勉強なりました。 でも長すぎてお勧めは出来ません。(苦笑)

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21世紀の資本の作品紹介

「21世紀の資本」はトマス・ピケティが執筆した経済書。
経済書としては異例の売り上げを記録したとしてテレビや雑誌などでも大々的に取り上げられています。日本経済の先行きやアベノミクスの今後と予言する書物として、サラリーマンや主婦、学生などにも広く読まれています。世の先行きへの不安を反映しての人気ということができます。

21世紀の資本のKindle版

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