- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622078906
作品紹介・あらすじ
18世紀末以降、正義をめぐる議論は功利主義と義務論の二つの立場へと収斂されてきた。しかし、正義をこの二つの立場にのみ基づいて語るならば、それ以前の4000年にわたる正義をめぐる思想を無視することになる。本書は、古代の法や思想に見られる正義の源流に遡り、「相互性」という概念に着眼し、今日の正義をめぐる議論を功利主義・義務論の二項対立から解き放つ。正義論の最良の見取り図。
感想・レビュー・書評
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170114 中央図書館
歴史を通じた長大な「正義」についての議論を、ハムラビ法典・・旧約聖書・・プラトン『国家』・・アリストテレス・・ホッブズ・・ヒューム、スミス等・・カント・・マルクス等・・ロールズ・・に圧縮して簡潔な見取り図を提示する。原題『A Brief Story of Justice』にふさわしい。
ただ、上述の正義論の系譜が、カント主義と帰結主義の対立構造の解説や、社会主義の些末な議論や「公正としての正義」の分析に傾きすぎているというのが、本書の主張であって、歴史の提示にあるわけではない。
著者ジョンストンは、正義は「相互性」というキーワードを踏まえ「能力の不平等」を前提とするものという立場である。人間の感覚や本能を織り込んだ非対称な交換を含む「正義」であるべきとする。
ロールズやサンデルとは異なる立場のようだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『正義はどう論じられてきたか――相互性の歴史的展開』
原題:A BRIEF HISTORY OF JUSTICE
著者:David Johnston(1951-)
訳者:押村高
訳者:谷澤正嗣
訳者:近藤和貴
訳者:宮崎文典
A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/288頁
定価 4,950円(本体4,500円)
ISBN 978-4-622-07890-6 C1031
2015年1月9日発行
18世紀末以降、正義をめぐる議論は、功利主義と義務論の二つの立場へと収斂されてきた。しかし、正義論の勢力地図をこのような分類法に基づいて描くならば、それ以前の四千年にわたる正義をめぐる思想を存在しなかったことにしてしまう。
本書は古代バビロニア、古代イスラエル、また古代ギリシアの法や思想にみられる「正義の源流」に遡り、「相互性」という古来から用いられてきた正義の概念をふたたび机上に載せることで、今日の正義をめぐる議論を功利主義・義務論の二項対立から解き放つものである。
かつて、正義は人々への生産物の公正な分配よりも、人々のあいだの相互尊重に基づくものと考えられていた。プラトン、アリストテレスらの古代哲学、ヒューム、ベンサムら近代の功利主義思想、カントの義務論的道徳理論、そしてロールズによる「公正としての正義」という思想へ――。その壮大な歴史において、「相互性」の概念がまぎれもなく正義論の土台の一部となっていることが、本書を通して鮮やかに理解されるであろう。
近代以降の西洋思想の中で置き去りにされてきた第三の視点によって捉え直す、正義論の新たな見取り図である。
〈https://www.msz.co.jp/book/detail/07890.html〉
【簡易目次】
日本語版への序文
序文
プロローグ――標準モデルから正義の感覚へ
第一章 正義の地勢図
第二章 プラトン『国家』における目的論と教育
第三章 アリストテレスの正義の理論
第四章 自然から人為へ――アリストテレスからホッブズへ
第五章 効用の登場
第六章 カントの正義の理論
第七章 社会正義という考え
第八章 公正としての正義の理論
エピローグ――社会正義からグローバル正義へ?
訳者解説
注
索引 -
哲学
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311.23||Jo
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新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:311.23//J65
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20150412朝日新聞、書評