ガンビア滞在記 (大人の本棚)

著者 :
  • みすず書房
3.55
  • (3)
  • (0)
  • (8)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 39
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622080626

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • よすぎる。アメリカの小さな町での一年間の生活を描いた小説。こういう本はありそうでない。
    庄野潤三のおおくの小説は〈何も起こらない〉話と言える。これはもちろん悪い意味ではない。ただ、そういう表し方をできてしまう。〈何も起こらない〉をつまらない、意味のないと解釈する人も中にはいるのではないかと思う。しかしガンビア滞在記では〈何も起こらない〉ことが話を豊かにしているとつよく感じる。買い物をする場所、隣人との関わり、近くの大学で行われるフットボールの試合。生活の細部が生き生きとして映り、彼ら夫婦のガンビア(異国)での暮らしがすうっと心に入りこむ。
    隣人のミノーとその妻・ジェーンは庄野夫妻と深く交流する。彼らとは町に住みはじめてすぐ出会い、そして庄野夫妻が日本へ帰る一週間前、コロンビアに引っ越す彼らを見送ることになった。またある章では近くの大学の教授と学生が事故で亡くなったことを取り上げる。この小説では出会いや別れ、死でさえすべて生活の中の一部として、大げさにせずに描かれている。僕が庄野の作品でもっとも好きだと思うところ、といえるかもしれない。

    作者のあとがきの一部。
     私は滞在記という名前をつけたが、考えてみると私たちはみなこの世の中に滞在しているわけである。自分の書くものも願わくばいつも滞在記のようなものでありたい。

  • ガンビアもの1。

著者プロフィール

(しょうの・じゅんぞう)
1921年(大正10)大阪府生まれ。九州大学東洋史学科卒業。1955年(昭和30)『プールサイド小景』により芥川賞受賞。61年(昭和36)『静物』により新潮社文学賞受賞。65年(昭和40)『夕べの雲』により読売文学賞受賞。日本芸術院会員。2009年歿。

「2022年 『小沼丹 小さな手袋/珈琲挽き【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

庄野潤三の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×